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はじめての事業計画書作成!事業計画書応用編!従業員を動かすための計画書

はじめての事業計画書作成!事業計画書応用編!従業員を動かすための計画書

前回までの事業計画書解説は、事業計画の成功確率を上げるためのブラッシュアップや、取引先や銀行などといった外部関係者に向けた提出を、主な目的とすることとして解説してきました。

しかし、それらの用途で作成した事業計画書を自社の従業員に対して示すことで、従業員のさらなる活躍を促進するために使用するといった応用も可能です。

今回は、モチベーション向上など、従業員を動かすことを目的にした事業計画書の活用方法について、解説していきます。


この記事の著者
  中小企業診断士 

1.自社と従業員の理念・ビジョンを合致させ、モチベーション向上を図るために活用する

事業計画書で策定した「経営理念や経営ビジョン」を従業員と共有することで、モチベーション向上を見込むことができます。

近年(特に若年層)では「なんのために働いているのか」といった意義を重んじる傾向が強くなっています。そのため、自社がどういったビジョンや理念を持っているのかを適切に伝え、従業員に自身のビジョンや理念と重なることを確認してもらいます。それによって、自社で働くことへの強い原動力が生まれることが期待できます。

「従業員自身が明確なビジョンや理念を持っていない場合には、効果が無いのでは?」と思われるかもしれませんが、むしろ従業員のビジョンや理念が白紙の状態の方が、取り組みやすくなります。なぜなら自社の考え方に共感をさせることが容易になり、自社に適した人材に育てることができるからです。

また、自社と従業員の理念・ビジョンを合致させるための留意点が2つあります。

1点目として、経営理念や経営ビジョンを従業員向けに落とし込むときは、従業員から共感を得られるかが大切です。経営者自身の目線をそのまま伝えるのではなく、従業員目線へ落とし込み、共感を得られるように意識しましょう。

2点目として、自社の経営理念・ビジョンを明確に伝えると、それに合わない従業員は自社を去ってしまう可能性があります。ですが、目指すべきゴールが異なると全体の足並みもそろわなくなるので、仕方ないと割り切ってしまうことも大切でしょう。しかし、そういった可能性を少しでも低減するために、採用段階から経営理念やビジョンをしっかりと伝えることが大切です。そうして、同じゴールに向かって団結した組織は強い組織と言えるでしょう。


2.自社の事業全体を見渡せるので視野の広がりが期待できる

事業計画書を見ることで、自社の事業全体の状況・流れを俯瞰することができます。

一般の従業員は現場の視点に偏りやすいため、知らず知らずのうちに、全体の流れを考えず従業員自身の日々の業務だけをこなすといった単純作業になりがちです。それが悪化すると、自身や所属する部門の業務効率化だけを考えて、事業全体の流れに悪影響を与えてしまう恐れすらあります。

そういった事態に陥らないようにするためにも、事業計画書によって自社の事業全体の流れを伝えることで他の部門との連携を意識し、日々の業務にも全体の流れを良くするための工夫が生まれやすくなります。

ここでの留意点は、経営者目線で作った事業計画をそのまま押し付けるのだけではなく、現場からの意見を吸い上げて改善するための余地を残すことです。経営者目線では、どうしても自分の思う通りに従業員を動かしたいと思う部分があるでしょうが、従業員自身が自発的に動くといった意識改革は極めて重要です。また、部署が複数ある場合は、部署間でもすり合わせを行っていきましょう。


3.人事評価基準に根拠が生まれ納得を得られる

従業員の立場で考えると、「自分自身が適切な評価を受けているのか」を知りたいというニーズは大きいのではないでしょうか。そのため、従業員を公正に評価するための明確な評価基準が必要です。しかし、その評価基準も従業員からすれば、なぜそのような評価基準になっているのか納得がいかないこともあるでしょう。また、評価をする上司もその評価基準がなぜ設定されているのか、その意味を理解しきれておらず曖昧な評価をしてしまうことも少なくありません。

ここでも人事評価の根拠として事業計画書が活用可能です。上述した理念やビジョンといった自社の目指すべきゴールを共有できれば、それに対してどれだけ寄与したかも明確に説明することができるようになります。これによって、従業員にも納得が生まれるのです。

例えば、自社の理念では「挑戦」することについて明文化されていたとしても、評価基準が「低リスク、失敗をしない」といった堅実的な内容であれば、従業員は混乱してしまいます。そのため、事業計画に沿った評価基準を設け、事業計画を変更する際には合わせて評価基準も変更することを忘れないでおきましょう。


4.従業員の自発的なスキルアップにつなげることができる

自社の全体を把握することで、どういったスキルを身に付ければ貢献できるか、また、自分が今後どういったポジションや役割を担いたいかといった将来設計を立てることができます。

どういったスキルを身に付ければ自社の役に立つことができるかが判るので、出世などのためにそのスキルを身に付けるといった動機付けにもつながるのです。

ただし、事業計画を見ただけでは、従業員がどういったスキルを身に付ければ役に立てるのかがピンとこない可能性もあります。そうしたことが無いように、補足説明などで自社に不足している「人材や求める人材(スキル)を記載することも良いでしょう。


5.企業の業績見通しが判るので不安の払しょくや将来への期待を持たせることができる

ベンチャーや業績が悪化しているような企業では、従業員の不安もある程度高いことが予想されます。事業計画書を通して自社の経営計画(数値)の見通しを伝えることで、現状は苦しいが今後はここまで回復するといった見通しを伝え、先行きの不透明感を解消しましょう。

嘘をつくことは良くありませんが、経営数値は右肩上がりを目指すことが重要です。

会社が倒産するといった危機が訪れた際には、優秀な人材から去っていくことが多くあるからです。従業員には常に前向きな事業計画を示していきましょう。


〈まとめ〉

事業計画書を社内の従業員に向けて共有することで、自社のビジョン・理念を共有してモチベーション向上や事業全体を見据えることができ、従業員のスキル向上や視野の広がりが期待できます。

また、従業員の視点から事業計画書に対して改善案が生まれるなどの好影響も期待できます。事業計画書を従業員と共有してみてください。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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