このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

はじめての事業計画書作成! 人と組織(書店編)

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

はじめての事業計画書作成! 人と組織(書店編)

書店ビジネスにおいて、お客さまが感じる提供価値を考えた場合、一番に思い浮かぶのは、「欲しい本を手に取ってみてから購入できる」「興味関心を引く商品がたくさんあり、選ぶ楽しみや新しい知識に出会う機会を得られる」などでしょうか?

しかし、これは大型書店にとっては当たり前のことですが、私たちのような限られた資本で展開する小規模書店にとっては、簡単に提供できる価値ではありません。

では、顧客に選ばれ続けるためには、どのように価値を創出すればよいのでしょうか?

私たちが置かれている環境下でも取り組める“人や組織による差別化”について、一緒に考えてみましょう。


1.顧客のために価値を提供できるチーム作り

一般の方にとって、書店ビジネスの業務と言えば、レジ係や書棚の整理くらいしか思いつかないかも知れませんが、実は街の小さな書店にもたくさんのタスクがあり、意外と重労働なのです。店頭側では、書棚の整理以外にも定期的なポスターの差し替えやポップのメンテナンスに加えて万引き防止活動などがあり、バックヤード側では、返品や顧客からの注文処理、経理や人事などが代表的なタスクです。

このような書店ビジネスを組織の力で差別化するためには、それらのタスクが有機的に結び付き、それぞれの持ち味をつぶさず、相乗効果が生まれるようなチーム運営が必要になります。そのために重要なコツは、大きく分けて3つあります。これらを常に意識してPDCAを回し続けることが、チームの成長にはとても有効です。一方で、これらが1つでも欠けることによって、何年もかけて育てた組織ですら、いとも簡単に崩壊してしまいます。


(1)目的を明確にする

1つは、チームの目的(お客さまに満足していただき喜んでもらう)を明確にして共有すること。書店ビジネスは典型的な店舗型ビジネスですので、最も重要なミッションは、いかにして来店客を増やすか?となります。そして、そのためにチームとして何を優先して取り組むべきなのか?が目的となります。

スタッフは、それぞれの目的を果たすために面接に来て、採用されています。中には、書店ビジネスとは関係のない目的のスタッフもいることでしょう。そんな中でも、リーダーの最も大切な仕事は、スタッフの個人的な目的も尊重しつつ、チームとしての目的を明確に示し、共感してもらうことにあります。なぜなら共感は、自主的な行動を促す原動力となるからです。

具体的な施策には、スタッフと一緒になって組織としてのビジョンやミッションを策定することがあります。

書店としてチームとして、来店客にどんな価値を提供するのか?そして、その価値提供の機会を増やすために来店客をどのようにして集めるのか?新規客を集め続けるのか?それとも常連さんを作って再来店者を増やすのか?などをスタッフと一緒に具体化します。

このようにメンバーとともに明文化することによって組織内で共有されやすくなり、個人の行動のベクトル(方向性)が揃ってきます。つまり価値判断が揃ってくるということです。それによってリーダーが細かな指示をしなくとも、スタッフが自主的に適切な判断をしてくれるようになります。

その際、「お客さまのお役に立つ」「お客さまに感謝される」「お客さまの喜びの声を集める」など、お客さまが中心になるキーワードを設定していただきたいと思います。モノを売るだけのビジネスでは、人を介さないECとの差別化ができないからです。


(2)コミュニケーションを活性化する

目的の共有ができたら、その実現に近づくためにスタッフとのコミュニケーションを密に取りましょう。コミュニケーションを密接に行うことによる効果は計り知れません。

たとえば、スタッフの成長にもミスにも気付くことができますし、チームで設定した価値観を常に意識し共感してもらうことも、コミュニケーションなしでは実現できないからです。単にコミュニケーションと言ってもたくさん話せばよいわけではありません。また、書店ビジネスはシフト勤務となりやすく、集合型のコミュニケーションが難しいモデルです。そのため対面でのコミュニケーションだけではなく、いろいろなビジネス向けのツールの中から、タイムリーなコミュニケーションに役立つものを選んで活用することを検討すべきです。中には無償で使えるものもありますので、自社に合うものを検討してください。

(3)モチベーションを高め続ける

モチベーションを高めるための方策で重要なことは、給与や職場環境といった衛生要因を充足させることは言うまでもありませんが、それらに加えて“動機付け要因を満たすこと”が必要です。

動機付け要因とは、たとえば、「自分の頑張りが認められた」「ほかの人から尊敬される」「出世した」とスタッフが感じる状況を作ることです。つまり自己効力感をアップしてもらう仕掛けを行うのです。具体的には、スタッフ全員を売り場ごとや活動テーマによってチーム編成し、それぞれの目標を設定します。その目標達成に向けて研究や分析、改善活動に取り組んでもらい、半期ごとに成果の報告会を行ったり、成果に応じて報奨をしたりすることなどが一例です。

たとえ他社よりよい労働条件を提供しているからと言って、優秀なスタッフが集まり高いパフォーマンスを出すとは限らないのです。このような衛生要因と動機付け要因を組み合わせた働き掛けが必要です。当たり前のことにも学問的な裏付けがあることを知っておいて損はないでしょう。


2.まとめ

今回は、事業計画における4本柱の1つ「人と組織」について、書店ビジネスに応用したケースについて一緒に考えてきました。

書店ビジネスでは、本が好きなスタッフが集まりやすく採用には困らないことが多いのですが、一方で個人の趣味嗜好が仕事に反映してしまう一面もあります。しかし、「好きこそものの上手なれ」ということわざがあるくらいですので、仕事を通じた楽しみや、やりがいを持って取り組んでもらうことで個々の能力を最大限に引き出し、チーム力を高めたいものです。地元顧客にかわいがってもらえるお店になるためには、商品力の向上だけでは不足しています。お店(チーム)として顧客に尽くし、自分の店と思ってもらうことを目指す必要があります。そのためのリーダーの役割は人の成長を助けることと捉え、本記事を参考に、自分に何ができるか、何をすべきかについて考える機会としていただければ幸いです。

次回はぜひあなたのお仕事にご一緒させてください。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

この著者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ