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創業塾で学べること

創業塾で学べること

我が国では諸外国と比べて開業率が低いことが、国内経済活性化の長年の課題となっています。その解決策として、公的機関が“創業塾”などのセミナーを主催し、新規開業者の支援を行っています。

しかし、参加することでいったいどんなことが学べるのかが、起業準備をしている方々に伝わっていません。それが原因なのか「創業塾とは、誰が何を教えてくれるセミナーなのか?」「本当に役立つのか?」、また「起業準備で忙しい中でも参加するほどのメリットがあるのか?」など起業準備中の方々から多くの質問をいただきます。

そこで今回は、創業塾に参加するメリットやデメリット、そのコンテンツなどを簡単にまとめてみました。最後までお読みいただき、参加を検討する材料にしていただければと思います。


この記事の著者
  中小企業診断士 

1.参加するメリットにはどのようなことがあるか?

実は、私もずいぶん昔の話ですが、地元の公的機関が主催する創業塾的なセミナーに参加したことがあります。半年間で合計6回のセミナーだったのですが、参加する前はみなさんと同じように「いったいどんな講師が、何を教えてくれるのだろう。役に立つのかな?どんな人が参加しているんだろう?場違いだったらどうしよう?」となかなか申し込めずにいました。

いま思い返してみると、その原因は私にもあったように思います。

当時、「いつかは起業したいな」とうっすら考えていましたが、半年後なのか3年後なのか、おおまかな時期すらも決めていませんでしたし、人に見てもらうようなビジネスプランらしいものも持ち合わせていませんでした。

しかし、そんな私でも参加することによって感じたメリットについて、私自身の経験を踏まえてお伝えしたいと思います。

(1)同じ時期に起業しようとしている仲間に出会える

第一に、あなたと同様にこれから起業しようとしている仲間に出会える点にメリットがあります。あなたが、どのようなキャリアを持って起業しようとしているのか、またどのようなビジネスを展開しようとしているのかによっても、仲間の存在意義は様々です。

例えばあなたが内勤型の会社員の場合、学生時代の友人や会社の同僚以外にリアルな友人が100人もいる人は少ないのではないでしょうか?特に、自分とは違う職種や違う業界、年齢の離れた友人などは、よほど社交的な方や積極的に社外での交友関係を作るようにしている方でないと、あり得ないことだと思います。このような目的が明確なセミナーに参加することによって、比較的同じ方向性を持つ地元の知人が一気に増えることになります。

同じ方向性の人間同士なので、気の合う経営者仲間となれる確率も高まります。また、自分と似た境遇の人と出会うことで、ベンチマークすることができます。仲間の悩みやプレゼンを聞いて、「自分だったらどうするかな?自分との違いは?」などと、仲間を通じて自分を分析することができます。

少し嫌な言い方になりますが、たいていの起業家の計画は、根拠があいまいだったり、ロジックに違和感があったりするものです。講師から正解を学ぶのではなく、仲間の計画と自分の計画を比較することで、自分では見えなくなっているリスクを発見することもできるのです。

たいていの計画は、やるべきことではなくやりたいことや希望的な観測に満ち溢れていますから、そこから勇気やモチベーションを得ることもできますが、一方でリスクを学ぶこともできるのです。

(2)自分のビジネスプランを第三者に見てもらえる

逆に、自分のビジネスプランを他業界や他職種の仲間に見てもらうことができ、ブラッシュアップすることが期待できます。

彼らは先生ではありませんしビジネスの専門家でもないでしょうから、アドバイスが的を射ているとは限りませんが、いろいろなキャリアを持っている大人の意見ですので、参考にできるところがたくさんあるはずです。どんなに成功しているベテラン経営者でも、事業の方針を一人きりで決断している人はいません。自分の考えを他人に話すことによって、仮説の根拠があいまいではないか?ロジックが破綻していないか?などいろいろな気づきを得ることができます。

また、あなたのビジネスがBtoCモデルだったとしたら、将来のお客さまが目の前にいることになります。インタビューに協力してもらったり、プロトタイプに対する率直な意見をもらったりすることができます。

これは新規事業を進める上で非常に重要なフェーズなのですが、普通はそう簡単にできることではありません。それだけでもとてもお得な話です。また運が良ければ、起業前からあなたの商品・サービスのファンを獲得することも可能です。

(3)自分にフィットする専門家と出会える

多くのセミナーでは、プログラムごとにいろいろな講師が登壇します。そのため、自分に合う専門家との出会いの機会にもなります。

学生時代にはお金を払って自分の知らないことを学校や塾の先生から学ぶ習慣があるのに、なぜか社会人になると先輩からのOJTが大半で、せいぜい書籍やネット検索でしか新しい情報に触れる機会がありません。

これから経営者という未知の仕事に取り組もうとしているのですから、外部の経営資源として士業やITの専門家を活用したり、専門家から必要な知見を学んだりする手法を試してみてください。きっと多くの時間やリスクを削減することができ、自分の得意分野に注力できるはずです。

彼らは横のつながりもたくさん持っているので、外部の支援が必要な場面になれば、その方から紹介してもらうことができるはずです。

また、地元で活躍している講師でしょうから、あなたのビジネスに期待が持てそうであれば、引き続き支援をお願いしたり、ビジネスをドライブさせるために必要な人脈を紹介してくれたりといったことも期待できるはずです。

(4)公的支援を受けることができる

これは公的機関が主催している創業塾に限った話にはなりますが、多くの自治体が起業にかかわる様々な支援を準備しています。

例えば、主な支援策として以下のようなものがあります。

  • 会社設立時の登記の際に必要な登録免許税の軽減
  • 無担保、第三者保証人なしの創業関連保証
  • 新創業融資制度の自己資金要件の充足(日本政策金融公庫)
  • 空き店舗家賃補助事業の優遇措置
  • インキュベーション施設利用に関する優遇措置
  • ビジネスコンテストでの賞金  

などです。開業率の低い地方部ではさらに支援が期待できますので、地元市町村へ一度問い合わせてみると良いでしょう。


2.参加することによるデメリットは何か?

一方で、参加することによって以下のようなデメリットもあります。

  • セミナーは、多くが1対多のため自分の知りたいことが効率良く学べない
  • それとは逆に、内容の多くが自分の知っていることばかりだった
  • 開講日が決まっているため参加できない日程がある、自分の起業準備と時間軸が合わない
  • グループワークで自分のビジネスと無関係の人たちと同じグループになり、お付き合いの時間が多くなる
  • 他の参加者から商材購入の勧誘をされる

など、私が実際に体験したデメリットを中心に、他の参加者から聞いたことを列挙してみました。

しかし、このようなことが起きてしまう原因について、その多くは自分の行動次第で回避が可能だということに後で気がつきました。当時の私は、まだ会社員時代のメンタルそのもので参加の仕方が受け身だったのです。

そのことに気づいたのは、そのセミナーで仲良くなった若手起業家の影響でした。彼は、自分に役立つ情報を得るために、物おじせず前に出て行って積極的に吸収していました。また、先述の勧誘や役に立ちそうにない情報に対しても、反面教師とするなど自分にメリットのある吸収の仕方を工夫していました。


3.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、私の体験談を交えて、創業塾セミナーに参加することによるメリットとデメリットについてお伝えしました。もしあなたが起業に前向きな気持ちをお持ちで、時間のやりくりができるのであれば、一度参加してみることをお勧めします。

なぜなら、準備段階で様々な情報に触れることは、将来の経営上のリスクを減少する効果があり、地元での異業種の経営者とのつながりを簡単に作ることができる良い機会だからです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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