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中小企業が知っておきたい再生可能エネルギー利用

著者: 中小企業診断士  吉川 和明

中小企業が知っておきたい再生可能エネルギー利用

1.カーボンニュートラルとは

温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることであり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて均衡させることを意味しています。

地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標を合意しました。

  • ① 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
  • ② 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること等

この実現に向けて120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げており、日本においても、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを、2020年10月に宣言しました。

(参考:環境省ホームページ)

・脱炭素ポータル

https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/


2.再生可能エネルギーについて

再生可能エネルギー源について、エネルギー供給構造高度化法では

「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」

と定義されています。資源に乏しい日本においては、エネルギーの供給のうち、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が8割以上を占めており、そのほとんどを海外に依存しています。

太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーは国内で生産できることから、エネルギー自給率の改善にも寄与することができます。

①太陽光発電

太陽の光エネルギーを太陽電池で直接電気に換えるシステム。家庭用から大規模発電用まで導入が広がっている。

②風力発電

風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こすシステム。陸上に設置されるものから洋上に設置されるものまである。

③水力発電

河川などの高低差を活用して水を落下させ、その際のエネルギーで水車を回して発電するシステム。現在では農業用水路や上水道施設などでも発電できる中小規模のタイプが利用されている。

④地熱発電

地下に蓄えられた地熱エネルギーを蒸気や熱水などで取り出し、タービンを回して発電するシステム。日本は火山国で、世界第3位の豊富な資源がある。

⑤バイオマス発電

動植物などの生物資源(バイオマス)をエネルギー源にして発電するシステム。木質バイオマス、農作物残さ、食品廃棄物など、様々な資源をエネルギーに変換する。

(参考:経済産業省ホームページ)

・資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/index.html


3.企業での取り組みと再生可能エネルギー調達方法

(1)脱炭素に向けた取り組み

パリ協定を契機に、企業は脱炭素経営に取り組んでいます。脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)を通じて取り組みを進めることにより、他者との差別化を図ることができ、新たなビジネスチャンスの獲得が期待できます。また、世界に広がるESG投資の流れを踏まえて、脱炭素経営の取り組みが企業価値の向上につながることも期待できます。

①SBT

「Science Based Targets」の頭文字を取ったもので、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標を指す。

②RE100

「Renewable Energy 100%」の略称で、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブを指す。

(2)再生可能エネルギーの調達方法について

温室効果ガス排出削減のためにも、再生可能エネルギーを企業で導入することが求められます。企業における再生可能エネルギーの調達方法、利用方法を紹介します。

①再エネ電気プラン

小売電気事業者が提供する「再エネ電気プラン」を選ぶことで、再生可能エネルギー由来の電気に切り替えることが可能。多くの小売り電気事業者が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを電源としたプランを用意しており、再生可能エネルギー割合が100%のプランであれば、CO2排出量実質ゼロの電気となる。

②リバースオークション

競り下げ方式により、「再エネ電気」の最低価格を提示する小売電気事業者を選定できる方法。販売者である小売電気事業者は低い電力単価を入札することで落札できるため、企業や自治体は「再エネ電気」をより低廉な価格で購入することが可能となる。

③再エネの共同購入

自治体等が希望者を募って共同で電力を購入する方法。太陽光や風力などの「再エネ電気」を利用したいと考える個人事業者が多く集まることで購買力が高まり、低い電気代で「再エネ電気」が簡単に利用できる。

④自家消費型太陽光発電

工場や店舗などの屋根に太陽光パネルを設置して発電した電気を使うことで、再エネを利用しながら電気代の削減が可能。休業日が少なく日中の電気使用量が多い施設は、発電した電気を最大限活用できるため、このシステムの導入に向いている。

⑤PPAモデル

企業や自治体が保有する施設の屋根や遊休地を事業者が借り、無償で発電設備を設置して発電した電気を企業や自治体が使うことで、電気料⾦とCO2排出の削減が可能。設備は第三者(事業者または別の出資者)が所有する形となるため、資産保有をすることなく再エネ利用が実現できる。

(参考:環境省ホームページ)

・再エネスタート

https://ondankataisaku.env.go.jp/re-start/


4.脱炭素化事業に関する補助金について

企業において脱炭素の取り組みを進めるためには、設備投資などのコストが必要となります。脱炭素化事業を支援するために、さまざまな補助金が用意されていますので、その一部を紹介します。

①浄化槽システムの脱炭素化推進事業

支援概要

浄化槽システムの脱炭素化に向けて、エネルギー効率の低い既設中大型浄化槽への先進的省エネ型浄化槽や再エネ設備の導入を支援。

補助内容

令和4年度予算:1,800百万円

事業形態:間接補助事業(補助率1/2)

補助対象:民間事業者・団体、地方公共団体等

実施期間:令和4年度~令和8年度

②脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業

支援概要

業務用冷凍空調機器の冷媒には、特定フロン(HCFC)や代替フロン(HFC)が使用されており、地球温暖化対策計画の目標達成のためには大幅な排出削減が必要。冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品小売店舗における、先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器の導入を支援。

補助内容

令和4年度予算:7,300百万円

事業形態:間接補助事業(補助率1/3)

補助対象:民間事業者・団体、地方公共団体等

実施期間:平成29年度~令和4年度

(参考:環境省ホームページ)

・令和4年度予算および令和3年度補正予算 脱炭素化事業一覧

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/2022/


5.まとめ

脱炭素に向けた再生可能エネルギーの取り組みについて紹介しました。地球温暖化対策は、企業だけでなく一般消費者にとっても重要な取り組みとなります。本記事を参考に、脱炭素への関心が深まれば幸いです。

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著者プロフィール

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吉川 和明

中小企業診断士

1965年生まれ,京都府京都市出身。
2021年中小企業診断士登録

大手電機メーカー系列のソフトウェア会社にて、流通業向けPOSシステム開発に長年携わり、現在は大手流通業向け法人営業を担当。得意分野は流通系ITシステム、業務改革、プロジェクトマネジメント、ファシリテーション。


お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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