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銀行融資のポイント 「銀行員が決算書を見る際に着目するポイント②」

銀行融資のポイント 「銀行員が決算書を見る際に着目するポイント②」

銀行に融資申込をした際に、銀行員が決算書のどこに注目するかについて、「銀行員が決算書を見る際に着目するポイント①」にて解説しました。

今回は、銀行員が決算書を見る際に着目するポイントの後半部分について説明していきます。


この記事の著者
  中小企業診断士 

1.貸付金

貸付金については、「どこに資金を貸付けているか」に着目します。

(1)貸付先が関連会社である場合

貸付先が融資申込先の関連会社である場合は、銀行は次のようなことを考えます。

①関連会社の業況が悪く、融資申込先から資金が流出している

通常は決算書を3期程度確認することにより、関連会社への貸付金が固定化されていないか確認します。固定化されている場合は、「貸付金の返済は可能か?」「関連会社の業績はどうなのか?」などのヒアリングを銀行から受ける可能性が高いです。

②融資が承諾されないため、親会社が代わりに融資申込をしている

関連会社の業績が悪く、銀行から融資を受けられない場合に多いケースです。

親会社が銀行から融資を受けて、その資金を関連会社に貸付けます。

銀行としては親会社の運転資金として融資しているため、本来とは違う資金使途に融資金が使われていることになります。このような事態は銀行との信頼関係が崩れることになり、融資金の一括返済などの対応を迫られる可能性が高いです。

(2)貸付先が代表者である場合

会社貸付金の相手先が代表者である場合、銀行は次のようなことを考えます。

①代表者に会社の資金が流出している

中小企業の場合は、法人・個人それぞれの収支が明確に分かれていない会社が多いです。

会社貸付金の相手先が代表者の場合は、会社の資金を流用している可能性が高いです。

「代表者個人に多額の借入がある」「代表者の家族が進学などで大きな資金が必要になる」などの場合に、会社の資金を流用しているケースが多いです。

②使途不明金があるケース

これは、「領収書をもらい忘れた交際費」や「使途が分からない経費」など通常の経費処理ができないものを、代表者への貸付金として処理しているケースです。

銀行からは経理体制が杜撰な会社として見られてしまうので、融資審査においてはマイナスポイントになってしまいます。


2.有価証券

有価証券においては、「投資有価証券」に着目します。

投資有価証券とは、ゴルフ会員権やリゾート施設などの会員権に対する投資です。

融資審査においては、ゴルフ会員権などの評価が決算書において適正であるかをチェックします。なぜなら、ゴルフ会員権は相場の変動が激しいため、決算書に記載されている簿価よりも時価が著しく下落していることが多いからです。

銀行においては、決算書の投資有価証券を時価評価した上で、融資審査を行うことが通常です。決算書において資産超過である会社も、投資有価証券を時価評価した結果、債務超過に陥る可能性があります。


3.買掛金

買掛金については、会社のキャッシュフローにはプラスの影響を与えます。ただし、会社の商取引とは関係なく買掛金だけが不自然に増えているときは要注意です。

この場合は、取引先への支払いが滞っている可能性が高いからです。

企業ごとに支払サイトが決まっていますので、通常は買掛金の額は仕入高の2~3ヶ月程度であることが一般的です。


4.借入金

借入金については、短期借入金と長期借入金について検証します。

(1)短期借入金

短期借入金は、期日到来時に一括返済することが原則です。銀行員が決算書を確認する際は、短期借入金を一括返済する能力があるかどうか検証します。

この場合は、次のポイントを確認します。

①流動比率

流動比率は次の式で求められます。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

流動比率は、1年以内に現金化される流動資産と1年以内に支払期限が到来する流動負債を用いて計算します。

流動比率が100%を下回っている場合は要注意です。

この場合は、1年以内に現金化される流動資産よりも1年以内に支払期限が到来する流動負債が上回っており、資金繰りは厳しい状態といえます。

②現預金の残高推移

流動比率が100%を超えていても、実際の現預金残高が少ない状態では短期借入金の返済は困難です。

融資審査においては、決算書を3期分程度揃えて、現預金の残高推移を確認します。また、月次試算表などを作成している企業であれば、月次で現預金残高の推移を検証します。

現預金残高が常時少ない企業の場合は、短期借入金の返済を含めた資金繰りに懸念があるといえます。

③短期借入金の調達先

短期借入金を見る際には、借入金の調達先に着目します。

銀行などからの借入の場合は、借入期日が到来した際に一括返済しなければなりません。

しかし代表者などからの借入の場合は、期日が到来しても返済しなくても良いケースが多いです。短期借入金の資金調達先によって、会社の資金繰りに対する見方が変わってきます。

(2)長期借入金

長期借入金については、次のような点を確認します。

①約定返済額

長期借入金は毎月返済することが原則です。

毎月の返済額が過剰であれば、返済が滞る可能性が高くなります。

銀行審査においては「当期利益+減価償却費>年間の約定返済額合計」になっているか確認します。会社のキャッシュフロー(当期利益+減価償却費)よりも年間の約定返済額合計が多ければ、返済が滞る可能性が高いと判断されます。

②資金使途

長期借入金がどのような資金使途で借りているか確認します。

資金使途は、運転資金と設備資金の大きく二つに分けられます。

運転資金は返済期間が短く、設備資金は返済期間を長く設定することが通常です。

また設備資金については、借入にてどのような設備を導入したか固定資産台帳と併せて確認します。


5.純資産

純資産については「資産超過の状態であるか?」「債務超過に陥っているのか?」ということがポイントになります。

債務超過に陥っている状態では、追加融資が承認される可能性は低くなってしまいます。

融資審査においては、資産超過が大きければ企業体力があり、安全性が高い会社と判断されます。

ただし、債務超過に陥っていても、経営改善計画を作成して「今後の経営をどのように改善していくのか」をきちんと銀行員に話せるようにすることで融資承認の可能性を引き上げることが出来ます。


6.融資担当者との交渉ポイント

ここでは、融資担当者に対する対応の仕方について解説します。

(1)融資担当者に対する情報提供

融資申込の際、融資担当者に決算書を渡すときは「決算内容について十分に説明すること」「決算書に表されない数値以外の情報を話すこと」がポイントです。

融資担当者は決算書を預かり、財務内容の分析をおこないます。そして、融資の際は稟議書と共に融資担当者の意見書を添付するのが一般的です。

例えば、「今期、人件費が増加して利益が減少したけれども、これは営業スタッフを増強したからであり、来期から営業力アップにより売上増加につながる」という情報を融資担当者に提供したとします。これは決算書の数値情報だけでは分からない情報です。

融資担当者に会社の現状を十分に説明することにより、融資担当者が作成する意見書の内容も充実します。これにより、融資が承認される可能性を高めることが出来ます。

(2)融資担当者からの問い合わせ対応

融資審査の際に、融資担当者は上席から様々な質問を受けます。しかし「社長に教えてもらいたいことがあるが、連絡が取れない」というケースはよくあることであり、融資が承認されるスピードが遅くなってしまいます。

融資担当者には、社長が不在の際にも随時連絡が取れるように、経理責任者や営業責任者を紹介することをおすすめします。

各セクションのキーマンに直接連絡を取ることが出来れば、スムーズに融資審査が進み融資承認までのスピードが格段に上がります。また、社長から得られる情報だけでなく、それぞれのセクションにて活動しているキーマンからの情報は非常に有益な情報となります。

融資担当者に会社の情報を提供しやすい体制を作ることで、融資が承認されるまでのスピードを早めることが出来ます。


7.最後に

今回は、「銀行員が決算書を見る際に着目するポイント」を2回に分けて説明しましたが、いかがだったでしょうか。

銀行員が決算書を見るポイントを把握しておくことにより、融資交渉を円滑に進めることが出来ます。

この記事を読んでいただき、融資が承認される可能性を上げることが出来れば幸いです。


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著者プロフィール

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髙岡 健司

中小企業診断士

PROFILE

ライター,コンサルタント

1975年生まれ,栃木県足利市出身。埼玉大学経済学部卒

2020年中小企業診断士登録

地方銀行を24年勤務後、コンサルタント事務所に転職。

得意分野は財務支援、資金繰り支援。

お問い合わせ先

株式会社プロデューサー・ハウス

Web:http://producer-house.co.jp/

Mail:info@producer-house.co.jp

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