金融におけるDDSとは? 効果やデメリット、手順を解説
会社の業績を回復させて再建を図る経営者の選択肢として、DDSという方法があります。
DDSには、業績不振による債務の膨らみが原因となる経営破綻を防ぐために、債務者の負担を軽減する効果があります。
ここからはDDSの概要やメリット・デメリットについて確認していきます。
DDSとは? DESとの違い
DDS(Debt Debt Swap=デット・デット・スワップ)は債権の種類を交換し、すでにある借入金を劣後ローン(他の債務より弁済順位が低い借入金)にする方法です。
借入金を劣後ローンとすることで、企業が破産した際における債務弁済の優先順位を最後にできます。資金繰りが改善されることから、劣後ローンは負債ではなく資本である資本性借入金とみなされます。
似た言葉にDES(Debt Equity Swap=デット・エクイティ・スワップ)がありますが、こちらは借入金を株式などの資本として債権者へ付与する方法です。
DDSとは違い、借入金を資本金に切り替えるため、返済義務がなくなります。
DDSを行うことの効果
DDSを行うことで得られる効果には、次の3つが挙げられます。
- 金利が安くなる
- 約定弁済(アモチベーション)がなくなる
- 金融機関からの融資が受けやすくなる
資本性借入金とみなされることで毎月の返済の必要がなくなり、企業の負担が軽減されるほか、負債の減少と資本の増加によって金融機関からの信用回復にもつながるため、経営再建がしやすくなる効果が期待できます。
金利が安くなる
DDSを行うと金利が1%以下に下がるため、返済額を低く抑えることが可能となります。手元に残る利益を少しでも多くすることができるため、キャッシュフローの改善が見込めるのです。
ただし、貸付期間中に業績の向上により利益が発生した場合には、通常の金利よりも高くなるので、注意が必要です。
約定弁済(アモチベーション)がなくなる
資本性借入金の返済方法は5年から15年後の期日一括返済のため、約定弁済による毎月の負担がなくなります。
資本性借入金部分については返済を猶予できることになり、DDSによって債務超過が実質的に解消された状態になります。
金融機関からの融資が受けやすくなる
DDSを行うことで企業の信用が回復し、金融機関からの融資を受けやすくなります。借入金が資本性借入金へ変更することで返済猶予が生まれるため、金融機関からは部分的に債務超過が解消していると見なされます。
また、借入金を資本として再計算し、企業の債務者区分を金融機関に決め直してもらうことも可能です。債務者区分が見直しによって上位へ移ると、新規の融資を受けられる可能性もあります。
DDSを行うことのデメリット
このように、DDSには経営者の負担を大きく減らせるメリットがあります。
しかし、DDSによる資本性借入金への変更は債権者にとって不利な条件となるため、そのことで発生するデメリットもあります。
経営者責任が問われる
DDSにより債権の一部が資本性借入金となってしまえば、債権者は返済が後回しにされてしまうため、不利な条件を押し付けられることになります。
その場合は債権者の負担を軽減すべく、経営者の個人保証・個人資産の提供を求められる可能性があります。最終的には経営者の退任を求められるケースもあるため、充分に留意しなければなりません。
経営状況の定期的な報告が義務付けられる
資本性借入金における融資契約の条件として、四半期ごとに試算表などによって経営状況を報告することが盛り込まれます。
定期的に金融機関への報告義務が生じるため、手続きを行う事務負担が増えることがデメリットです。報告を怠ると、借入金の全額一括返済を求められるなど厳しい措置が取られるため、注意が必要です。
DDSを行う手順
DDSを行うにあたって、はじめに公認会計士や顧問税理士といった専門家へ相談を行い、妥当性や方法について確認します。次に、必要書類を準備の上、金融機関にて申し込みを行い審査を受けます。
審査では企業の財務諸表によって、定められた基準を満たしているかなどの確認が行われます。審査を無事に通過できれば、DDSにより借入金が劣後ローンへ変換され、手続きは完了です。
まとめ
DDSは、負債として扱われる借入金を劣後ローンへと変換することで、資本とみなされる資本性借入金へと借り換えができる方法です。
DDSを行うことによって、金利が1%以下に抑えられ、5年から15年後までの期日一括返済による返済猶予が受けられます。また、資本性借入金となることで、金融機関からの債務者区分が上位へ移ると、新規の融資を受けることも可能です。
一方、デメリットとして、退任や資産の提供など経営者責任を問われる可能性のあることや、金融機関への定期的な経営状況の報告義務が生じることが挙げられるため、DDSは公認会計士・税理士に充分に相談した上で行うことをおすすめします。