アカウンタビリティとは? 意味や果たすことで企業が得られるメリットを解説
企業の経営に携わっていると、「アカウンタビリティ」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
コーポレートガバナンスが厳しく評価されるようになったことで、アカウンタビリティを重視する企業が増えましたが、アカウンタビリティを果たすことにより、企業にはさまざまなメリットがあります。
本記事では、アカウンタビリティの意味と、企業がアカウンタビリティを重視するメリットや、アカウンタビリティを果たさない企業が注意すべき点などをわかりやすく解説します。
アカウンタビリティとは
アカウンタビリティとは、株主や投資家などのステークホルダー(利害関係者)に対して、企業が経営状況や財務内容を報告する説明責任のことを指します。
元々は、経営者が株主に財務状況を説明する義務を指す言葉でしたが、現在は「企業の説明責任・説明義務」といった形で広義で捉えられています。
「アカウンタビリティ」の言葉の使い方
アカウンタビリティは、説明責任・義務が派生して、企業の状況や財務内容の明瞭さという意味合いで使われることもあります。この場合、「アカウンタビリティを重視する」といいます。
例:弊社はアカウンタビリティを重視しており、CSR報告書にも力を入れています。 |
また、アカウンタビリティを「説明責任」という意味で使うこともあります。
経営者は、ステークホルダーに対して説明責任を持つため、このような使われ方が一般的です。
例:経営者はアカウンタビリティを果たすべきだ。 |
ビジネスにおいて、アカウンタビリティが重視される背景
アカウンタビリティが重視されるようになった背景の1つに、コーポレートガバナンスが厳しく評価されるようになったことが挙げられます。
大企業の不祥事が多数発生したこともあり、コーポレートガバナンスが厳しく評価されるようになり、アカウンタビリティの重要性が向上しました。
また、会社法による情報開示義務の範囲が拡大していることも背景にあるといえます。
例えば、「大量保有報告制度」は、村上ファンドの株式取得事件などで問題点がクローズアップしたことが、改正のきっかけとなりました。
大量保有報告制度は、平成18年に証券取引法で改正が行われ、株式等の5%を超える保有者のなかで、特例が認められていた機関投資家の特例報告の提出・開示期間が大幅に短縮されました。
さらに、平成20年度の金融商品取引法改正により、違反した場合に課徴金の対象となりました。
このように、情報開示を義務として行う側面がある一方で、アカウンタビリティを果たすことで投資家の理解を得られやすくなる点も、アカウンタビリティが重視される理由の1つです。
アカウンタビリティとレスポンシビリティとの違い
レスポンシビリティとは、企業(上司)から指示を受けた業務を遂行する義務のことをいいます。
一方、アカウンタビリティとは、企業の説明責任・説明義務のことをいいます。
共通点は、どちらも業務上の責任についての言葉ということです。
そのため、アカウンタビリティとレスポンシビリティが混同されることもあります。
しかし、レスポンシビリティは「業務遂行責任」、アカウンタビリティは「説明責任」を主に意味することが多く、全く別の意味になりますので注意しましょう。
アカウンタビリティを果たすことで企業が得られるメリット
アカウンタビリティを果たすことで企業が得られるメリットは、主に次の3つです。
企業の信頼度が向上する
CSRに力を入れている企業はサステナブルな企業と判断されるため、CSR報告書などのアカウンタビリティを果たすことで、企業の信頼度が向上します。
採用活動で優位に動く
就職先を探す際は、周囲の人からの企業への印象が就職活動に影響することもあり、新卒採用では特にその傾向が強くなります。
アカウンタビリティを果たしている企業は信頼性が向上し、採用活動上もメリットがあります。
融資を受けやすくなる
IR報告などをしっかりと行うことで、投資判断の際に好影響を与えます。
投資する側は公開されている情報を収集し、それをもとに投資の判断をすることになります。
アカウンタビリティを果たしており、開示されている情報を信頼できると思われない場合には、投資を行うという判断を下すことは困難です。
そのため、法律上の義務によらず、投資家や顧客が求めている情報をIR報告などで公開することで、投資を受ける際にも重要になります。
アカウンタビリティを果たさない場合に企業が注意すべきこと
アカウンタビリティを果たさないと、企業にとって次のような状況になる可能性があります。
会社法の開示義務の違反となる
株式会社は、定時株主総会の承認後に、貸借対照表またはその要旨を公告しなければなりません。
(※)公告を怠る、または不正の公告をした場合には、「100万円以下の過料に処す」と会社法で定められています。
※大会社(資本金5億円または負債合計200億円以上の会社)は損益計算書の公告も義務づけられています。
会社法第440条
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
引用元:会社法 | e-Gov法令検索
資金調達が困難になる
アカウンタビリティを果たしているかどうかは、投資家が投資先を選ぶ際の重要な判断材料です。
アカウンタビリティに取り組まないと、資金調達が困難になる可能性があります。
リスク発見・責任追及の可能性が高くなる
アカウンタビリティを果たさないことで、一方的に情報が発信され、不利な状況になってしまうことも考えられます。
アカウンタビリティの具体例
アカウンタビリティを果たす具体的な方法には、どのようなものがあるのでしょうか。例を見ていきましょう。
IR専用ページの制作
投資の判断に必要な情報の提供できるIR専用ページの制作は、投資家向けへのアカウンタビリティを果たしている例の1つです。
環境報告書
環境報告書とは、環境保全に関する方針、目標、計画、環境マネジメントに関する状況などについて取りまとめて、社内外に公表するものです。
環境報告書は、企業が環境に対する責任を果たしていることを表明する意味があり、アカウンタビリティを果たすために重要なものです。
また、環境配慮促進法第2条の特定事業者は、第9条により環境報告書を作成し、毎年度公表しなければなりません。
CSR報告
CSRとは企業の社会的責任のことで、環境・社会問題などに対して倫理的な責任を果たすべきという考え方です。
倫理的な責任を果たしていることについてのアカウンタビリティを果たすために、CSR報告を行う企業が増えています。
アカウンタビリティについてのまとめ
アカウンタビリティの意味や、企業がアカウンタビリティを重視するメリットや、アカウンタビリティを果たさない企業が注意すべき点などをわかりやすく解説しました。
アカウンタビリティは情報開示の義務という側面以外にも、投資家へのアピールという点で重要な意味を持ちます。
ビジネスの透明性が求められている現代において、アカウンタビリティを果たしている企業へ投資したいと考えるステークホルダーは、増えていると考えられます。
IR専用ページの制作や環境報告書の作成といった具体的なアクションを通じて、アカウンタビリティをしっかりと果たしていきましょう。
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