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内部留保とは? その役割や分析方法・高める方法を解説

内部留保とは? その役割や分析方法・高める方法を解説

内部留保とは、企業で蓄えているお金のことを指します。

内部留保を適切に高めることで、コロナ禍やリーマンショックのような不測の事態による企業の倒産を防ぎ、金融機関や投資家に対する信頼度を高めることができます。

本記事では、内部留保の果たす役割や、内部留保の高め方、注意点などについて解説していきます。


この記事の監修者
  公認会計士 

内部留保とは

内部留保とは、企業の利益から税金や株主への配当などを支払った後、会社に残るお金のことです。

内部留保の計算式は以下のとおりです。

当期純利益-配当金=内部留保

たとえば、当期の利益から法人税などを差し引いて残った純利益が1,000万円で、そこから株主への配当金として600万円を支払った場合、手元に残る400万円が内部留保になります。

貸借対照表における内部留保の位置付け

借貸対照表(バランスシート)における内部留保は、累計の金額を、純資産の「利益剰余金」として記載します。

利益剰余金として記載する金額は、その期間だけで得たものではなく、これまでに積み重ねた金額の累計です。

よって、黒字の経営を続ける限り利益剰余金は毎年増え続け、逆に赤字になれば利益剰余金は減少します。

内部留保と日本企業

日本企業における内部留保は年々増加の傾向にあります。2021年度末の内部留保は516兆4,750億円となり、過去最高額を10年連続で更新しました。

参考:​​財政総論 スライド8ページ


内部留保の役割

続いて、内部留保が企業にとってどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。

不測の事態への備え

内部留保は企業にとって、不測の事態に対する備えとしての役割があります。

たとえ経営が上手くいっている会社でも、不測の事態による経営危機は、いつ何時、どのような形でやってくるか分かりません。記憶に新しいものだけを挙げても、新型コロナウイルス感染症や、東日本大震災、リーマンショックなどの出来事は、多くの企業を経営難や倒産に追いやりました。

しかし、ある程度の内部留保を確保しておけば、不測の事態によって一時的に利益を出せない状況に陥ったとしても、ある程度の期間は倒産することなくやり過ごすことができます

企業の信用度を高める

内部留保には企業の信用度を高める効果もあります。ここでいう信用度とは、「融資したお金を返済する能力」や「倒産リスクの低さ」などと言い換えることもできるでしょう。

倒産した企業は、融資されたお金を返済したり、投資家に利益を還元したりすることができなくなります。

そのため、金融機関や投資家はできるだけ倒産しにくく、経営状態の良い企業に融資・投資をしたいと考えます。

内部留保を多く持つ企業は、不測の事態が起きても倒産しにくいため、金融機関や投資家も安心して融資や投資をすることができます


内部留保を分析する方法

内部留保を分析する方法として、次の3つの項目を紹介します。

  • 利益余剰金の内訳
  • 内部留保率
  • 内部留保と自己資本比率の関係

利益余剰金の内訳

内部留保とは、その期間の純利益から配当に回されないものを指しますが、この内部留保は会計上、特に積立て等を行わない限りは繰越利益剰余金として蓄積されていくことになります。

繰越利益剰余金は利益剰余金の内訳項目の一つと位置付けられます。繰越利益剰余金を含めた利益剰余金の内訳は以下の通りです。

  • 利益準備金:会社法上、会社が積み立てることを義務付けられている準備金。会社法445条第4項に基づき、剰余金の配当を行うに際しては、配当原資の1/10を準備金に積み立てる必要がある。
  • 任意積立金:株主総会決議等に基づき、会社が任意に積み立てるもの。
  • 繰越利益剰余金:利益剰余金のうち、利益準備金と任意積立金以外のもの。

内部留保率

内部留保率とは、その期間の純利益のうち配当に回されない割合のことを指します。内部留保率を求めるための算式は以下の通りです。

内部留保率=内部留保(当期純利益-配当金支払額)÷当期純利益×100%

内部留保率の割合が高いということは、将来の投資や不測の状況に備えるための原資が確保できていると評価することができます。

また、この指標は当期純利益のうち配当へ回される割合を示す配当性向と表裏一体の関係にあります。配当性向を求めるための算式は以下の通りです。

配当性向=配当金支払額÷当期純利益×100%

内部留保と自己資本比率の関係

内部留保は会計上は利益剰余金として計上されているものですが、利益剰余金は純資産(自己資本)の内訳の一つと位置付けられます。

自己資本比率は以下の算式により求められますが、内部留保(利益剰余金)を蓄積していくことで自己資本比率の強化につながります。

自己資産率を求めるための算式は以下の通りです。

自己資本比率=自己資本(新株予約権、非支配株主持分を除いた純資産の額)÷総資産×100%


内部留保を高める方法

内部留保とは、企業が獲得した利益のうち、配当金に回されない部分です。

内部留保を高める方法としては、獲得する利益そのものを増やすか、配当に回す割合を減らす(配当をしない)か、この2通りしかありません。

利益を上げる

利益を上げるためには、売上高を上げるか、費用を削減するかという2通りの方法があります。

売上高を上げるには、販売単価を上げる等の方法があり、費用を削減するためには人件費・賃料等の固定費の見直しや売上原価等の変動費をコントロールする等の方法があります。

配当を下げる(配当をしない)

配当を下げる、もしくは配当を行わないことで内部留保を高めることができます。

企業の業績悪化に伴い、配当金を下げることで内部留保の割合を高めるケースや、成長段階にある企業が、将来の投資へ備えて配当を行わないず内部留保を行っていくというケースが考えられます。


内部留保を高める際の注意点

内部留保は、高まることで倒産のリスクが軽減し、会社の安全性が高まり、将来の投資のための資金を確保する役割があります。

しかし反面、以下のよう側面もあり、批判の対象となることもあります。

  • 景気回復の阻害要因
  • 投資機会の逸失等

メリットとデメリットを理解した上で、双方のバランスを意識した高め方をしましょう。

景気回復の阻害要因

日本の企業のうち、特に大企業がお金を使わず内部留保として溜め込んでいると言われることがあります。これは、企業が内部留保として溜め込み、お金を使わないことが景気回復の阻害要因になっているという大きな視点です。

投資機会の逸失等

内部留保を過剰に高めることで、成長のための投資機会を逸している・従業員への給料に還元されていない等の批判を受ける可能性があります。


内部留保のまとめ

内部留保とは企業が蓄えたお金の累計です。内部留保を適切に保つことで、不測の事態による経営危機を防ぎ、同時に企業の信頼性を高めることができます。

長期的に健全な経営を行うには、内部留保について理解し、必要に応じてコントロールすることが重要です。


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監修者プロフィール

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前田 昂平

公認会計士

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。

2018年より会計事務所で文化芸術を事業として行う法人・個人への税務顧問業務を行う傍ら、非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。

2022年9月に独立開業し現在に至る。

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