就業促進定着手当とは? 受取条件や申請期限、支給額をわかりやすく解説
転職を検討してはいるものの、希望する業界・業種・会社の賃金が今より低く、迷っている方もいるでしょう。そうした方にぜひ知っていただきたいのが、「就業促進定着手当」です。
転職・再就職後の生を支えるために支給される手当で、再就職先の賃金が離職前の賃金より低い場合に受け取れます。しかし、受け取れる条件を満たしたうえで書類をそろえ、期間内に自分で申請しなくてはなりません。
どんな手当で、どういった受取条件をクリアする必要があるのかを解説します。
就業促進定着手当とは?
就業促進定着手当とは、再就職をしていて、かつ受取条件を満たす方に支給されます。
新しい会社へ就職した後であっても、賃金の水準が下がった状態ではその会社を退職するリスクがあります。就業促進定着手当は、そうしたリスクを減らして再就職後の賃金水準を保証する目的で支給されるものです。
就業促進定着手当を受け取れる条件
就業促進定着手当を受け取るためには、3つの条件を満たす必要があります。
再就職後の賃金が離職前の賃金を下回っている
就業促進定着手当は、再就職後の賃金が離職前の賃金を下回っている場合にときに支給されます。再就職前の賃金との差額分を支給することで、再就職先への定着をサポートするのです。
そのため、再就職後の賃金水準が離職前の賃金水準を下回っていることが前提条件となります。
賃金が下回っているかどうかの判断は、賃金日額の金額を基準に行われます。ただし、直近のいずれかの月が以前の水準を下回っていることが要件ではありません。再就職後6か月間(180日分)の平均が下回っているかで判断されます。
再就職手当の支給を受けている
「再就職手当」が支給されていることも必要です。
再就職手当とは、基本手当(就職先の倒産や雇用期間満了などで離職した被保険者に支給される手当)の受給権者が受け取れる手当です。「基本手当の支給残日数が3分の1以上あること」といった条件をクリアした際に支給されます。
そして就業促進定着手当は、再就職手当を受け取った方に支給されるものです。新しく就職した会社の賃金水準が、再就職手当を受け取る際の基準となった以前の会社の賃金水準を下回っていることが要件です。
そのため就業促進定着手当を受け取るためには、まず再就職手当の受給経験がなくてはなりません。
ただし、再就職手当の支給要件は「1年を超えて引き続き雇用される見込みが確実であると認められる職業に就いていること」です。つまり、最低1年は再就職先で雇用される見込みも必要です。
以前の会社と再就職先で各6か月以上雇用されている
以前の会社と再就職先で、各6か月以上の継続した勤務期間も必要とされています。
就業促進定着手当の支給額の計算では、「賃金日額」が基準となります。賃金日額は、それぞれの会社で雇用開始後6か月間に支払われた金額を、180で割って算出した金額です。
就業促進定着手当の支給額
就業促進定着手当の支給額の計算式は、以下の通りです。
就業促進定着手当の支給額
=(以前の会社の賃金日額-再就職先の賃金日額)×再就職後6か月間の賃金支払いの基礎となった日数
また、就業促進定着手当には上限額が定められており、以下の計算式で求めます。
就業促進定着手当の上限額
=基本手当日額×支給残日数に相当する日数×4/10(早期再就職者は3/10)
上限額が定められているのは、就業促進定着手当が再就職手当を支給された方を対象とするためです。
再就職手当ですでに支給された基本手当があり、その部分(総支給日数×賃金日額の6/10又は7/10)を控除した残りを上限として支給すべきと考えるためです。
就業促進定着手当の申請方法・受け取り方・申請期間
就業促進定着手当を受け取りたい場合は、以下の書類を管轄の公共職業安定所長に提出しなければなりません。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 基本手当の受給資格者証
- 終業日後6か月分の出勤簿の写し
- 終業後6か月分の賃金台帳
申請期限は、再就職後6か月を経過した日の翌日から起算して2か月以内です。期限に間に合うよう、申請開始日の1か月ほど前から、会社の人事・総務の担当者に必要な書類の用意を依頼しておく必要があります。
例えば、令和4年5月1日に再就職した場合であれば、令和4年11月1日の翌日の11月2日から起算して2か月以内に支給申請書を提出しなければなりません。
就業促進定着手当の支給額の計算方法
就業促進定着手当の計算方法を、2つの例を挙げて解説します。
具体的な支給額の計算方法
就業促進定着手当の支給額の計算式は「(以前の会社の賃金日額-再就職先の賃金日額)×再就職後6か月間で賃金の支払いの基礎となった日数」で計算できます。
就業促進定着手当の支給額には上限額が設けられており、その金額を上回る額は受け取れません。
なお、上限額は「基本手当日額×支給残日数に相当する日数×4/10」とされています。ただし、早期再就職者(基本手当の支給残日数を全体の2/3以上残して再就職した方)の場合は、×3/10で計算します。
計算例
では就業促進定着手当をどのように計算するか、2つの例で考えてみましょう。
例1) 年齢:34歳 離職前の月給:20万円、日額:1万円 基本手当の日額:5,000円 支給残日数:60日(基本手当の支給日数:90日) 再就職後6か月間の賃金支払いの基礎となった日数:120日 |
この場合の支給額・上限額は、以下の通りです。
- 支給額
(10,000円-8,500円)×120日=180,000円 - 上限額
5,000円×60日×3/10(※)=120,000円
(※)再就職時点における基本手当の支給残日数が2/3以上のため
計算上の支給額は18万円ですが、この場合の上限額は12万円です。そのため、支給額は12万円となります。
例2) 年齢:46歳 離職前の月給:45万円、日額:1万5,000円 現職月給:30万円、日額:1万円 基本手当の日額:1万円 支給残日数:50日(基本手当の支給日数:90日) 再就職後6か月間の賃金支払いの基礎となった日数:120日 |
こちらの場合は、以下のように計算します。
- 支給額
(15,000円-10,000円)×120日=600,000円 - 上限額
10,000円×50日×4/10=200,000円
支給額は60万円ですが上限額は20万円であるため、支給額は20万円となります。
就業促進定着手当のまとめ
再就職した企業での賃金が以前の会社の賃金より低い場合は、就業促進定着手当を受け取れないか確認しましょう。適切に手続きをして受け取れば、再就職後の生活も安定しやすくなるはずです。
ただし受け取るためには、いくつかの条件をクリアしておかなければなりません。また、必要書類の準備をしたうえで、期限内に管轄の公共職業安定所長へ申請する必要もあります。自分が条件に該当しているかも参考に、転職活動を進めてください。
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