組織再編とは? メリットや手法、注意点を解説
業界における競争力を強化したい、経営を効率化したいと感じている場合、組織再編が有効な手段となるケースがあります。
具体的な方法はいくつかありますが、それぞれ特徴が異なるため、自社の状況や解決したい課題と照らし合わせて検討することが重要です。
組織再編で選択されることの多い方法の概要やメリット、組織再編時の注意点を解説します。
組織再編とは
「組織再編」とは、企業の構造や運営体形などを大きく変更し、従来とは異なる組織に再構築することです。
具体的な手法は数種類ありますが、目的はどれも同じです。
組織再編の種類
組織再編の方法は、「会社法」で以下の5つと定められています。
- 合併
- 会社分割
- 株式交換
- 株式移転
- 株式交付
このうち、特に選ばれることが多いのは「株式交付」以外の4つです。
どの方法を選んでも構いませんが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、慎重に検討することをおすすめします。
組織再編の目的
組織再編を行う目的は、「自社の事業拡大・縮小をして競争力を強化する」もしくは「自社の体制を変更して、業務や経営の効率化を図る」のいずれかであることがほとんどです。
自社が保有していないノウハウや技術のある企業と統合すれば、これまで挑戦したくてもできていなかった分野への進出もできるでしょう。
また、自社で特に好調な事業にのみリソースを集中させることで、既存事業のさらなる成長も見込めるかもしれません。
ある程度成長し、規模の大きくなっている企業の場合は、複数の企業間で重複している部署や機能を、統合する目的も考えられます。
適切な組織再編によって、今まで以上にスピーディーな意思決定ができるようになるでしょう。
組織再編で使われる4つの手法とメリット
組織再編で選ばれることの多い4つの手法の概要とメリットは、以下のとおりです。
手法 |
メリット |
---|---|
合併 |
|
会社分割 |
|
株式交換 |
|
株式移転 |
|
合併
合併は、2つ以上の企業を1つの企業にまとめる方法です。
経営の効率化やシナジー創出を目的とする組織再編の際に、よく選択されます。
概要
合併は、複数の会社を統合し、1つの企業にすることです。ある企業を既存の企業に吸収する「吸収合併」と、新会社を設立する「新設合併」の2種類があります。
なお、いずれの方法を採るにせよ、吸収される側の企業は消滅することになります。法人格を残したまま組織再編をしたい場合には、合併は不向きかもしれません。
メリット
合併のメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 現金がなくても実施できる
- 経営の効率化につながる
- 節税効果に期待できる
合併の対価は現金以外に、株式や社債とすることも可能です。そのため、十分な現金がない場合でも、実施できます。
また、複数の企業で共通している部署や部門を統一することでコスト削減が可能となり、より効率的な経営を行うこともできるでしょう。
顧客ネットワークや技術力の強化もでき、不足していたノウハウも補完できて事業展開がしやすくなるかもしれません。
加えて、一定の条件を満たした場合に限り、税制の優遇措置も受けられます。
会社分割
会社分割は、自社の複数の事業を行っている場合に、主軸となる事業に集中するために選択される手法です。
概要
会社分割は、その名のとおり会社を分割し、片方をほかの会社に吸収させる方法です。自社に「採算が取れている事業とそうでない事業がある」「独立させたい事業がある」「業績は順調だが社内に後継者がいない」といった場合に選択されます。
会社分割の方法は、さらに「新設分割」と「吸収分割」の2つに分けられます。
メリット
会社分割には、以下のようなメリットがあります。
- 倒産のリスクが減らせる
- 資金がなくても実施できる
- 取引先・従業員との契約や取得した許認可を引き継げる
好調な事業だけを残すことで、不採算事業にかかるコストの削減が可能です。
そのため、自社を存続させやすくなるでしょう。さらに必要な費用も比較的低額で済むため、自社の資金に余裕がなくても実施できる可能性があります。
また、取引先や従業員との契約、取得した許認可も引き継がれます。従業員から個別に契約継続について同意を得る必要もないため、会社分割を行ってからすぐ事業を始められるでしょう。
株式交換
株式交換は、買い手側企業が売り手側企業の株式を全て買収し、親子関係を築く方法です。現金がなくても実施できる点が大きなメリットです。
概要
株式交換は、売り手側の全株式を買い手側の株式と交換し、親会社と子会社の関係になる方法です。ある会社を100%子会社にすることで、経営の効率化や節税を図ります。
株式交換の方法は、さらに以下の3つに分けられます。
- 三角株式交換
- 簡易株式交換
- 略式株式交換
ただしどの方法も非上場企業では使いづらい点がデメリットです。
メリット
株式交換のメリットは、次の3つが挙げられます。
- 対価として現金を支払わなくてよい
- 株主総会の決議によって手続きを進められる
- 売り手会社の法人格が消滅しない
株式交換で対価となるのは株式である場合がほとんどのため、買い手側に十分な現金がなくても買収できます。
また、簡易株式交換または略式株式交換を選んで条件を満たした場合、株主総会の同意を得る必要がありません。
さらに、売り手側の会社は消滅せず、法人格もそのまま残せます。そのため、親子関係ができた後でも、子会社が親会社の経営に介入できるのです。
ただし、売り手側(子会社)の株式は全て買い手側(親会社)が取得するため、ほかの株主が存在しなくなります。
株式移転
株式移転とは、新たに親会社を設立し、既存の企業がその子会社となる方法です。
各企業の法人格を残したまま経営の効率化を図りたい時や、複数の子会社を取りまとめたい時に選択されます。
概要
株式移転とは、既存の企業が発行した株式を、新たに設立した別の企業(親会社)に移転する方法です。
株式交換とよく似た方法ですが、株式交換は既存の企業を子会社化する一方、株式移転では新たに完全親会社を設立する点が大きな違いです。
メリット
株式移転のメリットとしては、以下が挙げられます。
- 新設した企業の経営をコントロールできる
- 既存の企業の法人格が消滅しない
- 現金がなくても実施できるうえ、税制優遇も受けられる
新たに立ち上げた親会社と元の企業の間には、完全な支配関係が構築されます。
そのため、「新設したC社が、子会社となったA社とB社の経営をコントロールする」といったことも可能です。
株式移転では子会社の法人格も消滅しないため、独自の社風や運営体制は維持しつつ、効率のよい経営をするといったこともできるでしょう。
また、株式を対価とできるため、十分な現金がなくても実施可能です。さらに、一定の条件を満たせば税制優遇も受けられます。
組織再編をするうえでの注意点
いずれの方法で組織再編を行う場合でも、以下の点には注意が必要です。
これらの点も考慮したうえで、どういった方法で実施するか検討するとよいでしょう。
コストがかかる
組織再編には、一定のコストがかかります。
なかには比較的コストが抑えられる方法や、現金がなくても実施できる方法もありますが、既存のシステムや各企業の規定の統合、コンサルティングや登記を依頼する費用など、さまざまな出費があるものです。
たとえ組織再編によってシナジー創出や経営の効率化ができたとしても、それによって生み出される費用以上にコストがかかってしまっては本末転倒です。
費用対効果を考慮したうえで、本当に組織再編が必要かを慎重に検討しましょう。
社内風土や統合時のストレス
雇用している従業員のケアも忘れずに行ってください。組織再編によって、既存の社内風土や人事制度などに大きな変化をもたらす可能性があるためです。
特に既存の企業の法人格が残らない方法での組織再編の場合、消滅する側の企業に受け継がれてきた伝統や文化が失われる可能性があります。
従業員のモチベーションが低下することもあるでしょう。再編後に「新しい組織になじめない」と感じる従業員もいるかもしれません。
「なぜ組織再編をするのか」「従業員にはどういった対応をするのか」などを明確にメッセージとして伝え、誰もが納得のいく進行を意識するべきです。
組織再編のまとめ
組織再編の方法には、特徴の異なるさまざまなものがあります。自社の状況や組織再編の目的を踏まえて、どの方法を選択するか考えてください。
ただし各企業のみで組織再編を実施して成功に導くことは、一般的に難易度が高いと言われています。
確実に成果につなげるためには、アドバイザーや専門家にアドバイスを求めることが重要です。