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第7回 海外版社内報の導入のポイント その2

効果のある社内広報メディアの構築

第7回 海外版社内報の導入のポイント その2

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

翻訳版と海外版

特に注意してほしいことは、社内広報メディアの翻訳版と海外版の違いです。

社内報を例に取ると、翻訳版というのは、日本人向けの日本語版社内報を単純に翻訳したものです。和英併記の社内報、もしくは内容とデザインが全く同様の翻訳された社内報です。日本人を対象にしたものですから、同等の情報理解力がないと読み切れない可能性があります。

もう一つが、本稿では便宜的に「海外版社内報」と呼びますが、日本人向けの社内報とは内容が異なる社内報です。 先に記したように、グローバル社内報のメインターゲットである海外現地従業員は、日本人従業員の情報理解力に及ばない可能性が高いので、海外現地従業員には情報レベルに応じた社内報が既存の社内報とは別に存在してしかるべきなのです。

また、海外の現地従業員に関心のあることは、第一に企業のトップメッセージ。次に関心があるのは、現地のトップメッセージということが多いようです。大きな枠組みでの企業の動きには関心があるものの、実際に働いている現地の企業の動きに関心が向くのは当然のことでしょう。


経営理念とビジョンの浸透

世界の各拠点の人材に経営理念、ビジョンを共有・浸透させることは、グローバル経営の最初のステップであるといえます。日本企業にとって当然といえるような経営理念であっても、海外の現地従業員にとってはすぐに理解できないものも存在し、そのことがひいては円滑な事業・業務運営に支障をきたす可能性があります。

そのような事態を防ぐためには、社内広報メディア、研修、ワークショップの実施、また事情に精通した日本人従業員を現地に派遣して、経営理念・ビジョンの背景、趣旨、重要性、必要性等を徹底的に理解・浸透させることが重要となります。このような取り組みにより、グローバルにグループ全体の一体感が高まり、経営のあるべき方向性が明確になり、事業・業務運営が円滑に行われるようになります。


海外版の重要なコンテンツ

先述のような観点から、具体的な社内広報メディアの設計を考えてみます。

コンテンツについては、一般的にどのようなものがグローバル社内報(海外版)には掲載されているのでしょうか。具体例を示します。

〈日本語版社内報からの抜粋企画〉

  • 経営理念に関する特集
  • 経営計画に関する特集
  • 全社にわたる活動
  • トップインタビュー
  • 役員の就任、退任、挨拶
  • 技術、製品紹介
  • 海外関連のニュース
  • 全社のトピックス

〈海外版社内報での独自企画〉

  • トップメッセージ
  • 海外グループ会社のニュース、展示会
  • 海外グループ会社の業績報告
  • 海外グループ会社の人物紹介
  • 海外グループ会社の拠点情報
  • 海外グループ会社のCSR活動
  • グローバルアワード
  • 新製品情報
  • グループの基礎知識

グローバル社内報に必要なコンテンツは大きく分けて三つあります。

❶ガバナンス統一のためのコンテンツ

経営理念やビジョンの共有、浸透を目的としたものです。具体的にはトップメッセージであり、経営理念を取り扱った企画がこれに該当します。海外現地従業員の情報理解力や関心を考慮し、日本語版社内報からそのまま翻訳するだけではなく、海外現地の事例を取り上げるなど、親近感を持ってもらうように加工すると良いでしょう。

❷会社を知るコンテンツ

国内外すべてのニュースを掲載するのではなく、新製品・新サービス情報、展示会など、海外拠点にも影響のあるニュースを抜粋して掲載します。CSR活動は自社への誇りとなり、ロイヤリティーを高める効果もあります。

ニュース記事の並びも重要です。ある会社には日本語版社内報と全く異なる体裁の英語版と中国版の社内報があり、ともに表2にはトップメッセージ。三ページ目から、英語版は欧米のニュースを先に大きく掲載し、中国版はアジアのニュースを先に大きく掲載しています。関心が高いものから順に掲載されています。

❸現地を知ってもらうコンテンツ

海外現地従業員に登場してもらう企画です。外国人は日本人以上に登場することに協力的ですし、掲載されると大変喜びます。海外での二ユースのほかに、海外グループ会社をお国柄も含めて紹介すると良いでしょう。翻訳して日本語版社内報にも掲載することができます。

予算に余裕があれば海外版印刷社内報の発行も考えられますが、印刷費用と発送費を考えて、イントラネットで対応しているところが多いです。あるいは現地で印刷するか、PDFで送信して現場で出力して回覧しているところもあります。

イントラネットで対応する場合は、既に海外現地会社にイントラネットが存在する場合が多く、すべてを一新するには費用がかかるので、海外現地会社のイントラネットに組み込む形でトップメッセージとニュースを読めるようにしているところもあります。さらに日本本社のイントラネットの英語版にリンクを張っておけば、そこから閲覧してもらえる可能性もあるでしょう。


まとめ

どのような形態を取るかは別としてグローバル社内広報は必須ですが、海外現地従業員の状況と関心事をしっかりと把握してから設計しないと、消化不良を起こしてしまうので注意しましょう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

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