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BtoC企業の事例:キャラクターを活用して、DXの利用を促進

他社はどうしてる? 成功事例で学ぶDX(デジタル・トランスフォーメーション)

BtoC企業の事例:キャラクターを活用して、DXの利用を促進

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

管理部門のDXは誰のためなのか?

管理部門で進めるDX(デジタル・トランスフォーメーション)。目の前の仕事の効率化のために導入するケースも多いだろう。一方で、総務や人事、管理部門で進めるDXは、現場従業員が使う業務フローの改善に繋がることもあるはず。

むしろ、現場従業員が困っていることについてDXを進めるほうが、現場に貢献するという、そもそも管理部門の存在意義に繋がるものだ。さらに、その方がビジネスにはインパクトがある。現場従業員と関係する業務プロセスにDXを導入する。これを目指したいものだ。

となると、管理部門のみならず現場従業員が関係することになる。つまり、どれだけ現場従業員に活用してもらうかが重要となってくる。今回の事例は、現場の仕事を楽にするAIチャットボットの話である。その中でも、いかに利用率を上げるかについて説明していこう。


AIチャットボット、リリース前の課題

今回はBtoCの商材を扱っている2000人規模の会社。全国に300弱の店舗を構えている。その店舗から、365日、管理部門に問い合わせが集中する。この課題について、AIチャットボットで対処した事例である。

BtoC企業であり、事業の好調により店舗数が拡大している。その結果、各店舗からのさまざまな問い合わせが急増。さらに、一日の中で同じ質問が何度も寄せられ、管理部門では業務がひっ迫していた。さらに、それに伴い、現場への問い合わせ対応が遅れ、現場業務への遅れも生じていた。

その当時、働き方改革も進んでおり、その中で、AIをはじめとする新しいテクノロジーを積極的に導入する、そのようなトップの発言もあり、特に、先述した管理部門への問い合わせ対応、ここが最も負荷がかかっていたこともあり、この問い合わせ対応について真っ先に対処が始められた。

まずは、よくある質問を管理部門でリストアップしてもらい、現場の声とすり合わせて100くらいに絞った。次に、AIチャットボットを導入する際の課題である、表現が異なる同じ目的のものの対応である。言い方が違っていても同じ質問だと判断できるようAIに学習させた。

「出張申請について教えて」も、「出張の申請方法を聞きたい」も知りたいことは同じ。そこで、一つの答えに対して、それぞれ10くらいの質問パターンを想定したという。それを繰り返し、正答率の精度を上げて、本番リリースに辿りついた。


AIチャットボットは成長させるもの

公開後も担当者は毎日、その日の回答データに目を通して、新たな質問パターンを教え込んだ。精度が上がることで、利用者も増加。それに従い質問内容にすみ分けが出てきた。例えば、福利厚生に関する質問。規定にかかわるような一般的な質問はAIチャットボットに聞き、さらに個人的なことに関しては、直接、管理部門に問い合わせが入るようになった。

これについても、個人的な質問であっても、汎用的な質問に変換して、新たにAIチャットボットに搭載していった。これを繰り返すことで、直接の問い合わせを減らすことにも繋がる。実際、管理部門への問い合わせは徐々に減っていったのだ。

土日も動いている現場には大変喜ばれた。本社の管理部門は土日は休みであり、平日の就業時間内にしか対応できない。しかし、AIチャットボットは、24時間365日無休で対応できるからだ。現場の生産性に大きく貢献したのだ。


AIチャットボット、リリース後の課題

AIチャットボットを導入している企業は多い。ほとんどの企業が苦労しているのは、AIチャットボットに学習させることではなく、AIチャットボットの認知度向上と利用定着率の向上である。知ってもらって、利用してもらわないことには、存在自体が無意味となってしまう。

そこでこの会社がとった戦略は、AIチャットボットのキャラクターを作ったことだ。ゆるキャラのように親しみやすいものとして、名前もつけ社内認知度の先導役として「活躍してもらった」。このキャラクターが認知されるにしたがって、「〇〇君の好きな食べ物は何?」といった、想定外の質問も入るようになり、キャラクターの細かな設定も施していった。

その他、社内で最も閲覧される社内ポータルサイトに、そのキャラクターのバナーを貼り付け、すぐにAIチャットボットに接続できるようにした。また、さまざまな会議にも参加し、AIチャットボットのプロモーション動画を持ち込みプレゼン。さまざまな機会を通じて認知度の向上を図っていった。極めつけは、そのキャラクターを入社させ、組織図にも掲載したことだ。身近な社員として認知してもらっていった。

一度目で正答を得られないと二度と使われなくなるので、「新しくこれを覚えました」という報告を定期的にキャラクターから発信。キャラクターの成長を従業員全員に応援してもらう仕掛けをしていった。さらに、キャラクターの連絡先も学習させ、内線番号やアドレスだけでなく、キャラクターの個人的なプロフィールも回答できるようにしていった。

結果、AIチャットボットのキャラクターは、本社と現場、現場同士を繋ぐ、コミュニケーションツールとしての役割も担うようになったのだ。まさに仕掛けの勝利である。


AIチャットボット、体制の必要性

この会社も自社の社員が対応した。というのも、作業を外注すると、社内の共通言語や文化の共有から始めなければならないが、社内の人間であればすぐにとりかかれる。また、AIチャットボットの学習は非常に煩雑。片手間ではなく、きちんとしたミッションとして組み込むことが重要である。

そして、AIチャットボットをフル回転で稼働させ、本来その人がやるべき仕事にフォーカスすることで、根本的な生産性が向上していく。AIチャットボットはあくまでもツール、その先の目的はあくまでも生産性の向上であるとの認識は重要である。

今回の重要なポイントは、管理部門が行った施策の認知度の向上と利用率の向上である。認知度向上、それには、自社の社員構成、風土や文化をしっかりと把握し、それと親和性のあるやり方を考えることである。また、利用率の向上は継続的な取り組みが必要だ。

利用者の感想や意見、アドバイスと真摯に向き合い、できるものは対応し、現場従業員の生産性を向上するために改善しているのだという姿勢を見せていくことだ。あなたのために、ホスピタリティ・マインドが問われる、利用率の向上である。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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