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メーカー系企業の事例:Zoomなどのリモート会議ツールの特徴を十分に活用したイベントを開催

他社はどうしてる? 成功事例で学ぶDX(デジタル・トランスフォーメーション)

メーカー系企業の事例:Zoomなどのリモート会議ツールの特徴を十分に活用したイベントを開催

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

コロナ禍、イベントの対応は?

新型コロナウイルス感染症がもたらした大きな変化の一つが、イベント開催の変化である。そもそも、人を一堂に集めることが目的であった社内外のイベントが、軒並み開催断念に追い込まれた。集まることでの感染リスク防止のためである。特に、室内イベントが最も打撃を受けた。

エンターテインメントやスポーツイベント、スポーツ競技も、しばらくは開催ができなかった。人数制限をすることで、さらには、三密防止、感染リスク対策を施すことで、少人数による開催で対応している。これ以外にも、時期としては、卒業式や入学式、式典も軒並み開催断念に追い込まれた。

企業では、春の入社式やキックオフ、さらには株主総会。重要イベントが目白押しの時期に、管理部門は頭を抱えたことだろう。一方で、会議については、Zoomなりを活用したリモート会議、Web会議に上手に移行できた。同様に、社内イベントも移行できないか。今回は、入社式をリモートで開催した事例である。リモートならではの特徴を十分発揮しての好事例の紹介である。


走りながら検証

1000人規模のとあるメーカー系企業。緊急事態宣言後、トップより原則在宅勤務の号令がかかり、急遽在宅勤務へ突入した。システム環境などは未整備であったが、社員、家族、取引先の安全を第一に、そのように決定。社員とのコミュニケーション、マネージメント、取引先とのやり取りなど、とにかく走りながら対応を考えつつ、テレワークへの対応を進化させていった。

その対応に感謝の想いを伝えるべく、経営トップから社員とその家族へ、ビデオメッセージが配信された。また、管理部門には、在宅勤務での困りごとを一手に引き受ける窓口を開設し、社員のみならず家族からの問い合わせも可能とした専用ダイヤルを告知し、さまざまな問い合わせに対処した。働き方の相談が特に多く、またその声から、特別休暇制度も構築していった。

その他、新たな制度として、全社員へ一時金を支給。在宅勤務の課題の一つである、社内コミュニケーションに対しては、コミュニケーション支援策として、リモート飲み会への補助金を一人2000円まで支給。矢継ぎ早にいろいろな制度を導入。まずはやってみて、それから検証しながら進化させていった。


大成功の分散型リモート入社式

そして、四月の入社式。新卒での入社式。新人にとっては一生の思い出となるビッグイベントだ。コロナ禍により、今年の代の入社式は開催しないとなると、大変寂しい思いをさせてしまう。管理部門としても、開催にあたり、中止を含め、いろいろと考えたが、やはり、一生に一度、ということを重要と考え、開催することにした。

また、毎年の入社式では、自社のDNAを継承する、社長登場のイベントがあり、その社内文化、伝統を守る意味でも開催は必要であった。結果、分散型のリモート形式で開催することになった。新入社員を配属先、十数か所の拠点に配置し、リモートでつなぐ形式での開催である。拠点にも協力してもらいながらの、まさに全社一丸となっての入社式である。

それぞれの拠点では、会場の除菌、参加者の検温、マスク着用、手洗い消毒等の衛生面での徹底した対策、また三密を避けるため、席の感覚を十分確保するなど、安全確保を徹底した。辞令についてもロボットを使い、非接触で渡すなどの徹底ぶりである。

一方で、リアルではできなかった、リモートならではの入社式の良さも実現できた。ユーチューブで同時配信することにより、社員はもちろんのこと、新入社員の家族にも視聴してもらえたことである。なかなか入社式に家族が参加することはないだろう。

多くの家族が視聴され、この会社に子どもが入社できたことに非常に安心したとの声が寄せられた。また、新入社員も、このような配慮の行き届いた入社式を経験することで、この会社に対するロイヤリティーが高まったようだ。結果、入社式は大成功であった。入社式以降は、通常であれば集合しての合同研修だが、今回はWebを通じてのリモート研修。いきなり一人での対応となるので、先輩社員とのランチミーティングを週一回開催してフォローをしている。


リモートの良さを生かし切れるか

今回のように、リアルでは実現できないことが、リモートで実現できることは案外多いものだ。今回は、普段は参加できない家族にも視聴してもらえた、そのようなリモートならではの活用方法が成功の要因でもある。今後、リアルの集合形式の入社式であっても、動画配信することで家族も視聴できるハイブリッド型の入社式に移行するのではないだろうか。

その他、リモートでの利点は、なんといってもチャット機能だろう。例えば、表彰式。今までの表彰式であると、お祝いメッセージは、表彰式終了後、本人に個別にメールするか、声を掛けることになる。しかし、これがリモートだと、表彰されるタイミングにチャット機能で、お祝いメッセージを、同時に誰でも投稿できる。そして、そのメッセージを誰でも見ることができる。掲載されたメッセージを見て、さらにいろいろとメッセージを繰り出すことができる。そして、そのメッセージを保存できる。これはリアルではできない。

当然ながら、先の入社式と同様に家族にも晴れの姿を見てもらえれば、いい親孝行ともなるのではないだろうか。そして、親からお祝いのメッセージをその場でもらったりしたら、本人は感激の涙にくれる・・・。それを見て、視聴者も感動の渦に巻き込まれる。上手にリモートを混ぜてのハイブリッド型は、今後、さらに進化していき、イベント自体の進化につながる予感がする。

このように、コロナ禍が終息したら、従来通りのリアルの集合イベント開催では、いささかもったいないような気がしなくはないだろうか。一時しのぎでのWeb会議やリモートイベント、そのような捉え方ではなく、リモート含めてのハイブリッド形式を、この際、徹底的に工夫して実践してみることが重要なのだ。

やっぱりリアルがいいよね、そのように短絡的に以前の世界に戻るのではなく、一度川を超えたのだから、超えた世界をベースに、リアルも取り込むハイブリッド型進化が、これからの管理部門の思考方法ではなかろうか。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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