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IT系企業の事例:会社でしかできない仕事を一つ一つ減らす

他社はどうしてる? 成功事例で学ぶDX(デジタル・トランスフォーメーション)

IT系企業の事例:会社でしかできない仕事を一つ一つ減らす

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

コロナ禍、管理部門はどちらを選ぶのか?

コロナ禍、緊急事態宣言が出されてから、日本の働き方が大きく変わった。

今までなかなか進展しなかったテレワーク、在宅勤務が強制的に実行され、多くのビジネスパーソンがそのメリットに気づいた。そして、当初は、なんとかこの危機、パンデミックを乗り越えようと必死に対応していった。

この時期は、過剰適応、気持ちがハイとなるハネムーン期とも言われる。まずは危機を乗り越えるべく、アドレナリンが過剰に放出されるのである。会社に行かなくて良い、付き合い残業をしなくて良いなど、環境変化の良い所ばかり目についたはずである。

そして、緊急事態宣言が解除になり、三か月、半年経過して、従来との違いに対する疲れが出てくる時期となる。 コミュニケーションがうまくいかない、メンバーとの仕事がスムーズに進まないなど、テレワークの不便なところばかり目につく、そして、ストレスがたまる。

特に、新入社員や異動した従業員は、変化に適応することの難しさを感じているはずである。

そして第三波、第四波…と波がきて、もう一度在宅シフトにもどりつつある。

今後ワクチンの接種が完了すると、どうなるのだろうか。緊急事態宣言が解除された際は、原則出社とした企業もあったように、コロナ禍が終息すると、元に戻る雰囲気があるような気がする。

ワクチンを接種し、抗体が長く続く、つまりはワクチンが成功したあかつきには、コロナ禍前の世界に戻る予感がする。

とするならば、管理部門は大きな岐路に立つことになるのだ。

二つの選択肢が目の前に現れる。

コロナ禍を経験してリモートありきのニューノーマルな働き方を継続していくのか、コロナ禍以前の旧来の働き方に戻るのか。

働き方、働く場を司る管理部門としては、どちらも推進できる立場に立たされる。

果たして、あなたはどちらを選ぶのか?

ニューノーマルな働き方を推進していきたい方にとって参考になるのが、コロナ禍以前より、「時間も場所も働き方は自分で選ぶ」という企業の事例だろう。

今回は50名以下のIT系企業の事例を紹介する。強制的に在宅勤務でなくともリモートワークを定着させた、そのポイントとは?


会社に行かなくてはいけない理由を減らす

この企業では、全社員が全勤務日、その日の業務内容に合わせて、自由な場所で働ける。自宅でもコワーキングスペースでも、カフェでもかまわない。

もちろん会社でも働くことはできるが、全席フリーアドレスであり、しかも全員分の席はない。実際、オフィスにいるのは常時10名くらいとのこと。

コンセプトは、普段はテレワーク、必要なときのみ出社という考え方だ。

ただ、その実行のためには、給与明細書の受け取りや経費精算はどうするかなど、いくつか課題があった。しかし、これはクラウド型の労務管理ソフトや経費精算システムを導入することで解決した。立替経費の支払いも銀行振り込みか、アマゾンギフト券での精算が選べる。手数料が掛かる銀行振り込みに対して、アマゾンギフト券は少額の精算でも手数料不要でぴったりの金額を送ることができる。

このように、小さな工夫で、会社に行かなくてはいけない理由を一つ一つ減らしていったのだ。

一方、社内のミーテイングなどは、意思疎通を図る分には、チャットツールなどを使って問題なく対応。それでも、全社員が月に一回か二回はオフィスに来ている。社員総会をはじめ、週一回のチームミーティングも、月初めのみオフィスで行っている。

三分の一に縮小されたオフィスではあるが、会議室はしっかりと用意されている。コミュニケーションの六割は非言語コミュニケーションで成り立っている。なのでたまに会って六割の部分のアップデートをするのだ。逆に二人きりで相談したい場合はチャットを活用する。

オンラインとオフラインを使い分けることで、今まで以上に繊細なコミュニケーションが実現されている。

制度としてあるのはテレワーク手当。一か月15000円を支給する。

この範囲内で、自宅で働いた場合の光熱費やプロバイダー費用、コワーキングスペースの利用代金などを、各自の中でやりくりする。パソコンなど仕事で使う機器は会社から支給されるが、個人的にこだわりたいものは、それぞれが購入する。先に手当として支給することで、承認フローや購買などの業務を軽減した。また、上限ある手当をどう使うかと考える力を身に付けることで、社員の自律性を促すことにも繋がっている。

労務管理については、勤怠管理システム上で上司がチェックし、労働時間オーバー気味のメンバーには声を掛ける。会社に来なくても良いというだけで、ほかは以前と何も変わらない。変えたことは、勤務規程にあった出勤、退勤という用語を業務開始、業務終了と変えたくらいである。



事例のように、テレワークを実現するには、まずは出社しなければならない仕事を洗い出すことが重要だ。可視化しなければ対応しようがない。そして考え方としては、その仕事の存在理由までさかのぼる。どうしたら良いかではなく、そもそもなぜそれをやらないといけないのか。そこまで考えるのだ。

業務改善の王道、「やめる、減らす、変える」というものがある。

これと同様に、まずは会社に来て行わなければならない仕事をやめられないか。どうしてもやめられないのであれば、その数を減らせないか。

それもだめなら、代替手段はないのか、つまりやり方を変えていくのだ。テレワークにおいては、対応できる方法や人の代替である。テクノロジー、ITツールに置き換えられないか、あるいは、アウトソーシング、外に任せられないかを考えるのだ。

そのようにして、地道に一つ一つ、出社しなければできない仕事を減らしていく。

とは言いつつも、出社した方がパフォーマンスが上がる仕事は出社して行う。会社がどこで働きなさい、そのような指示をするのではなく、各自が自由に、その日の業務に合わせて、時間と場所を選ぶことができる、その選択肢を増やす意味でも、出社しなければならない仕事を減らしていくのだ。

冒頭に記した管理部門が立たされる重要岐路。選択肢の拡充が重要なポイントとなるのだ。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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