コンセプチュアルスキルとは? 構成する14の要素とスキルの高め方を解説
コンセプチュアルスキルは、米国・ハーバード大学の経営学者、ロバート・カッツ氏が提唱したものです。
知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象を概念化することで物事の本質を理解するためのスキルを意味し、マネージャーに求められる能力のひとつと考えられています。
コンセプチュアルスキルを高めると、物事を論理的・創造的に考えられるようになるため、正解のない課題に直面したときに役立ちます。
この記事では、コンセプチュアルスキルの概要やコンセプチュアルスキルを構成する14の要素、スキルの高め方を解説します。
コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキルは「概念化能力」ともいわれており、知識や情報などを体系的に組み合わせることで複雑な事象を概念化し、物事の本質を理解するためのものです。論理的思考力や水平思考力など、複数の要素で構成されます。
コンセプチュアルスキルは、米国・ハーバード大学の経営学者、ロバート・カッツ氏が提唱しました。目の前の仕事を滞りなく進めていくテクニカルスキル(業務遂行能力)や、組織内あるいは外部と良好な人間関係を築くヒューマンスキル(人間関係能力)とともに、マネージャーに求められる能力のひとつと考えられています。
正解のない問題に直面した場合でも、物事を論理的・創造的に考えられるので、マネージャー層以外にも幅広く活用できます。
コンセプチュアルスキルを構成する14の要素
コンセプチュアルスキルは、ここで紹介する14の要素で構成されています。
1. ロジカルシンキング(論理的思考)
「論理的思考」を意味するロジカルシンキングは、物事の結果と原因を明確にとらえ、物事の道筋を体系的に整理する思考法で、本質を見極めるのに役立ちます。
2. クリティカルシンキング(批判的思考)
「批判的思考」を意味するクリティカルシンキングは、物事の本質を見極め、改善やリスク改善につなげる考え方です。現状に満足せず、「本当にこれでよいのか」「より効果的な方法があるのではないか」と物事の前提を疑い、批判的に分析して解決策を見つけます。
3. ラテラルシンキング(水平思考)
経験・常識・固定観念に縛られず、自由な発想で物事を多角的にとらえる考え方を指します。前提を設けず水平方向に発想を広げて新たな発想につなげることから、「水平思考」とも呼ばれます。
4. 多面的視野
目の前の物事にとらわれすぎることなく、あらゆる角度から見つめることができる能力を指します。問題の本質への気付きや行き詰まった場合の打開策、新たな可能性の発見などにつながります。
5. 受容性
自分の考えとは異なる意見や価値観に直面したときに、否定や無視をせず受け入れる能力のことです。ビジネスのグローバル化やダイバーシティの考え方が進み、多様な意見を受け入れられる力量が、これまで以上に求められています。
6. 柔軟性
イレギュラーな事態に対して臨機応変に対応できる能力です。ビジネスの場面では、想定外の出来事が起こる可能性があり、その場合でも冷静な状況把握と判断が求められます。どのような場面でも的確に対処するためにも必要な要素です。
7. 知的好奇心
自分が知らないものに対して興味や関心を持ち、楽しみながら知識を得ていこうとする能力です。知的好奇心の高い人は新しい価値観や未知の物事に対しても積極的に情報収集していくので、知識量も増えて新たな提案につながる可能性が高まります。
8. 洞察力
物事の本質を見極めるために突き詰めて考え、粘り強く掘り下げる姿勢を指します。物事に対して自分が納得するまで情報収集し、背景や社会的意義まで深く考えます。
9. チャレンジ精神
未経験の分野でも失敗を恐れずに挑戦する能力です。「よく知らない」「前例がない」という理由であきらめるのではなく、「どうしたら実現できるか」と前向きに行動する姿勢を指します。
10. 俯瞰力要素
広い視野で物事の全体像を把握する力です。自分や自社、または周囲が置かれている現状、今後の見通しなどをとらえ、理解するのに必要です。
11. 探求心
物事をより深く理解するために、「どうしてこの結果になるのか」を常に考えながら、調査や分析を行う力を指します。物事の成り立ちや背景などに深く触れることで本質が見えやすくなります。
12. 応用力
これまでに得た知識や経験を工夫し、他の事象でも活用する能力です。過去の経験を活かすことで、未知の課題に対処できるようになります。
13. 直感力
物事を感覚的にとらえ、瞬時に反応する能力です。ロジカルに物事をとらえるだけでなく、直感や「ひらめき」がブレイクスルーを起こすきっかけになることもあります。
14. 先見性
目の前のことだけでなく、少し先の未来まで予測しながら考える能力です。俯瞰力と同様、プロジェクトや組織運営に欠かせない要素です。
コンセプチュアルスキルで得られる効果
ここでは、コンセプチュアルスキルで得られる効果を解説します。
1. 課題の本質を見抜き根本的な解決
コンセプチュアルスキルを磨くことで、表面的ではなく本質的な課題解決につながるため、同じような課題の再発を防げます。また、課題解決に使っていた時間をほかの業務にあてられるようになるため、生産性も向上します。
2. 従業員のパフォーマンス向上
各従業員がコンセプチュアルスキルを伸ばし、それぞれの持ち場で課題の本質を見抜くことができれば、効果的な課題解決や業務改善につながります。
3. 大胆なアイデアやイノベーション創出
固定観念にとらわれず、あえて批判的(クリティカル)な視点で物事を検討すると、新しい発想が生まれやすくなります。また、物事を構造化して考えられるようになれば、大胆な課題解決策や斬新なアイデアを生み出すことも可能になるでしょう。
4. 組織の方向性や業務の全体像の共有化
コンセプチュアルスキルによって物事の構造をシンプルにとらえられるようになり、業務の全体像や方向性、目的・目標、優先順位などの相互理解が深まります。その結果、組織の方向性や業務の全体像をメンバーが共有しやすくなるでしょう。
コンセプチュアルスキルを高める方法
コンセプチュアルスキルを高めるには、「理解」と「実践」の両方が必要です。
1. コンセプチュアルスキルの各能力を理解する
コンセプチュアルスキルを構成する要素や重要性、階層ごとに求められるスキルやバランスの違いを理解することで、自分の得意や苦手とする要素が把握できます。
また、コンセプチュアルスキルの高い人がどのような傾向にあるのかも、理解しておく必要があるでしょう。
2. 仕事の中でスキルを習慣化する
コンセプチュアルスキルを習慣化するため、日常的に3つのステップを意識して繰り返しましょう。
ステップ① 物事を抽象化する
検討する課題や起こる事象について、「構造」や「主要な要素」を抜き出し、物事の本質を見出しやすくします。具体的な行動としては、検討している課題を図に書いて整理する、ポイントを要約するなどが考えられます。
ステップ② 物事を定義する
抽出した「構造」や「要素」を、自分の言葉で定義します。課題や事象のポイントになる言葉について、自分で説明してみると良いでしょう。
ステップ③ 物事を具体化する
抽象化し、定義づけした物事に対し、相手がイメージできるように具体的な内容にまとめ、行動につなげます。相手に対して、例え話や事例なども活用して解説できると良いでしょう。
3. コンセプチュアルスキルと人事評価制度を連動させる
人事評価制度とは、各社員の業績や能力、勤務態度、意欲などを客観的な指標で評価する制度です。
コンセプチュアルスキルに関する項目を人事評価制度に設けると、日々の業務を通じてそのスキルの習得や発揮につながると考えられます。
階層別による研修を実施するほか、職位や階級で求められるスキルなどを定義しておく必要があるでしょう。
コンセプチュアルスキルのまとめ
コンセプチュアルスキルの概要やコンセプチュアルスキルを構成する14の要素、スキルの高め方を解説しました。
コンセプチュアルスキルは、不確定要素が多く、正解のない問題に直面する現代のビジネスパーソンには欠かせないものといえるでしょう。あらゆる角度から物事をとらえ、本質を見極めることで、本当の意味での問題解決が可能になります。
本記事で紹介した14の要素を意識し、自分にできることから始めていきましょう。
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