「ご承知おきください」は失礼? 正しい使い方や意味・言い換え表現を解説!
ビジネスのやり取りで、相手に事前確認や連絡をする際、どんな言葉を使えばいいのか迷ったことはありませんか?
「ご承知おきください」という言葉を知っていても、意味や使い方が正しくわからないと、誤用したり相手に失礼な印象を与えたりすることがあります。
「ご承知おきください」は、注意や念押しの際に使われる言葉です。社内外の人と円滑にコミュニケーションを取るためには、意味や使い方を正しく理解することが大切です。
この記事では、「ご承知おきください」の意味や使用例、類似表現をわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
「ご承知おきください」の意味
承知は「知っている」という意味があり、ご承知おきくださいは「知っておいてください」「理解してください」といった意味を有します。
この表現には、「心にとどめる」という意味を持つ動詞「おく」の連用形である「おき」が使用され、相手を敬う表現として「ください」が加えられています。
要するに、「あらかじめ知っておいてください」といったニュアンスが込められており、相手に注意や理解を求める際に用いられるのが一般的です。
「ご承知おきください」は失礼にあたるのか?
目上の人にも使用可能ですが、相手や状況によっては失礼と受け取られることがあるため、注意が必要です。
「承知」の語感には、謙譲語のような印象があり、目上の人に勘違いされると、不快感を与えてしまう恐れがあります。
さらに、「承」という字は強制的なイメージを持つため、目上の人に対して使うと、上から目線に映る可能性が生じてしまいます。
相手との良好な関係が構築されていない場合は使用を避け、同僚や部下に対する丁寧語として用いるのが適切でしょう。
「ご承知おきください」を目上の人に使うときは?
目上の人に「ご承知おきください」と伝える際は、語尾に「ませ」や「お願いいたします」などの言葉を添えて使うと、丁寧な印象になります。
「ご承知おきくださいませ」や「どうぞご承知おきください」といった、やわらかい表現に変えることにより、相手に対する尊重の気持ちを表すことができます。
また、後述する類語「お含みおきください」や「ご了承ください」など、他の表現に言い換えるのも有効な方法です。
いずれにせよ、状況や相手との関係性に合わせ、謙譲語を適切に使うことが重要です。
「ご承知おきください」を使うシーンと例文
ビジネスシーンで「ご承知おきください」を使う場合の具体例を、以下の4つのケースを挙げて紹介します。
- 注意すべき事柄であることを強調する表現で使う場合
- 念押ししたいときに使う場合
- 理解を求めるときに使う場合
- 自分のことを知ってもらいたいときに使う場合
それぞれの例文では、前後の文章も添えられていますので、ご自身の状況や立場に合わせて活用しましょう。
注意すべき事柄であることを強調する表現で使う場合
相手に対して、事前に留意を促したい場合や注意喚起を行いたいときは、次のように使います。
- こちらの商品は返品交換不可であることをご承知おきください。
- あすは、施設内で防音工事が終日行われますことをご承知おきください。
- 提出期限は「本日午後6時まで」です。お忙しいところ大変恐縮ですが、ご承知おきくださいますようお願い申し上げます。
念押ししたいときに使う場合
「すでにご承知おきのことと存じますが」も同様の表現で、念押ししたい内容を伝える際に使用します。
相手に何度も同じことを伝えるのは失礼とされるため、丁寧かつやんわりと念押しする場合に有効です。この表現を用いることで、相手に対して過度な圧力をかけずに、重要な事柄を再確認させることができます。
- 納期は〇月〇日です。ご承知おきくださいますよう、改めてお願い申し上げます。
- ご承知おきのことと存じますが、あすは館内で耐震工事が行われます。ある程度の騒音が発生しますので、ご了承ください。
- 年末調整の提出期限は25日までです。すでにご承知おきのことと存じますが、期限内の提出を厳守するよう、よろしくお願いいたします。
理解を求めるときに使う場合
承知には、「相手の事情を理解して許すこと」や「事情を知ること」といった意味があります。従って「ご承知おきください」は、特に相手に対して「こうなったことを理解してほしい」というニュアンスが込められているのです。
置かれている状況や事実を充分に理解してもらいたいときに効果的であり、丁寧な表現として用いられます。
- 着工前にお支払いの完了が必要になりますので、ご承知おきください。
- 11:00にお客様が来社されます。エレベーターや入口で迷われる可能性がありますので、そうした場面に鉢合わせた方はご案内のほど、ご承知おきくださいませ。
- すでにご承知おきのことかとは存じますが、ご利用料金の未納が3ヶ月以上続いているため、当方の規定により「退会処分」とさせていただきました。
自分のことを知ってもらいたいときに使う場合
自己紹介や初対面の挨拶などで、相手に自分のことを覚えてもらいたいときに使用します。
「お見知りおきを」と同様の意味合いで使うことが可能です。
ただし、「ご承知おきください」は一般的ではないため、相手とのコミュニケーションや状況によっては、意味が充分に伝わらない可能性があります。
相手に理解してもらいたい場面や、関係性に配慮した上で用いると良いでしょう。
- 6月から総務部でお世話になります、〇〇〇〇と申します。ご承知おきください。
- 本日から営業部に配属されました、〇〇〇〇です。未経験者ですが、一日でも早く現場に出られるよう精進いたしますので、ご承知おきください。
- 私は〇〇〇〇と申します。△△さんのご紹介により、御社で採用していただくことになりました。若輩者ではありますが、最善を尽くして参りますので、ご承知おきください。
「ご承知おきください」の類語表現
「ご承知おきください」を他の言葉に言い換える際は、次のような表現を使います。
- お含みおきください
- ご容赦ください
- ご了承ください
- ご了知ください
- ご認識ください
- お見知りおきください
- 何卒
それぞれ、具体例も合わせて紹介しますので、ご参照ください。
お含みおきください
「含む」には、心の中におさめておくという意味があり、「お含みおきください」は、何らかの情報を、相手に把握しておいてほしいというニュアンスを持ちます。
この表現は目上の人にも使用できるため、主にメールや文章で使われる事が多いです。相手に注意や重要な情報を伝える際、やさしくて丁寧な表現として活用されることがあります。
- 弊社の休業日の関係により、営業開始は週明けの月曜日になりますこと、お含みおきください。
- 雨天や強風等の場合でも開催いたしますこと、あらかじめ、お含みおきください。
- 10日に予定していた会議については、来週15日に変更となりましたので、お含みおきください。
ご容赦ください
「容赦」とは許すことを指し、「ご容赦ください」は、相手に対するお詫びの気持ちが込められています。
このフレーズは「知っておいてください」という代わりに用いられ、自身の不手際をやんわりと伝えつつ、相手に対して申し訳なく思う気持ちを表現します。
適度な謙虚さや謝罪の意を示すため、丁寧なコミュニケーションに適している点が特徴的です。
- 1日に予定しておりました「〇〇社様とのランチミーティング」は、先方の都合でキャンセルとなりました。何卒ご容赦ください。
- 当店の利用は完全予約制のため、ご予約なしでのご来店はご容赦ください。
- 本メールは一斉送信されているため、行き違いが発生するケースがあります。すでに対応済みの場合は内容が重複しますが、何卒ご容赦ください。
ご了承ください
「了承」とは、よく理解し、聞き入れることを指します。
「ご承知おきください」と同様、場合によっては失礼になることがあるため、使い方に注意が必要です。
相手に理解してもらいたいときに用いられるケースが多く、注意深くコミュニケーションをとる際に役立ちます。
相手が了承することで、双方の合意や理解を確認しやすくなりますが、状況や相手の立場に応じて使い方を考慮することが重要です。
- 当店の営業時間は「平日9:00〜19:00」です。あらかじめご了承ください。
- ただいま回線が大変混み合っております。処理完了までにお時間を要しますこと、ご了承ください。
- あすのイベントは雨天決行です。早朝のお問い合わせには対応しかねますので、ご了承ください。
ご了知ください
「ご了知ください」は、内容や事情について明確に理解することを表します。
この表現は、「ご承知おきください」よりもさらに強く、相手に対して事情や情報をしっかりと把握してほしいときに使用します。
使い手の伝えたい意図や感情を強調し、相手に理解の深さを求める際に効果的です。
複雑な状況や重要な事柄に対して、断りなく伝えたいときにも適しています。
- 先方の要求は添付資料をご参照の上、事前にご了知ください。
- 取引条件をご了知の上、下記サイトよりご注文いただければと思います。
- 次回の取引内容や前提事項を送付しましたので、ご了知願います。
ご認識ください
「認識」とは、物事をよく知り、見分けることをいいます。従って「ご認識ください」は、「知っておいてください」と同様の意味を持つ表現です。
ただし、あまり丁寧ではないため、社外の人に対しては使用を避ける方が良いでしょう。相手への適切な敬意を示すためには、他の表現よりも丁寧な言い回しを検討することが重要です。
- 定例会議の日程は、〇日に変更になりました。ご認識ください。
- 契約完了後は日程変更の調整が難しいことを、あらかじめご認識おきください。
- プランへの変更はできかねますことを、ご認識ください。
お見知りおきください
「お見知りおきください」は、「知っておいてもらいたい」「記憶しておいてもらいたい」という意味を含みます。
この表現は、上司や取引先など、目上の方にも使用できる丁寧な言い回しです。
相手に対して自分自身や所属などを覚えてもらいたいときに効果的であり、社会的な場でのコミュニケーションにおいて、一般的に使われる表現の一つです。
- 来月より担当いたします、第二営業部の〇〇〇〇です。お見知りおきのほど、よろしくお願い申し上げます。
- お初にお目にかかります。△△社の〇〇〇〇と申します。以後、お見知りおきください。
- エレベーターのメンテナンスは、明日12:00〜13:00に行われます。その間は使用不可となりますので、お見知りおきください。
何卒
「何卒(なにとぞ)」は、相手に何かお願いする場合や、手段を尽くそうという意思を示す際に使われる言葉です。
「ご承知おきください」よりも遠回しであり、丁寧にお願いしたいときに好まれる表現となります。
相手に対して遠慮や謙虚な態度を持ちつつ、協力を仰ぎたい場面で使われることがあります。
しばしば、依頼やお願いの際に用いられ、一層の配慮を表す言葉として重宝されます。
- 明日までにこちらから請求書をお送りしますので、何卒よろしくお願いいたします。
- ご支援を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
- 連休中は20:00までの営業となりますこと、何卒お願いいたします。
まとめ
「ご承知おきください」は、注意や念押しに使われる言葉です。
「あらかじめ知っておいてください」といったニュアンスが込められており、相手に留意や理解を求める際に用いられます。
目上の人にも使用可能ですが、相手や状況によっては失礼と受け取られることがあるため、注意が必要です。
目上の人に「ご承知おきください」と伝える際は、語尾に「ませ」や「お願いいたします」などの言葉を添えると、尊重の気持ちを表すことができます。
また、「お含みおきください」や「ご了承ください」など、他の表現に言い換えるのも有効な方法です。「ご承知おきください」の正しい使い方を理解し、失礼のない対応を心がけましょう。