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バイアスとは? 企業に与える影響や、バイアスを改善する方法を解説

バイアスとは? 企業に与える影響や、バイアスを改善する方法を解説

バイアス(bias)とは、心理学では「偏見、先入観」、統計学では「統計結果の偶然ではないズレ」を意味する言葉です。

ビジネスシーンのバイアスは心理学上の意味で使われます。本記事では、バイアスの意味や起きる理由、企業に与える影響について解説します。

企業がバイアスを改善する方法についても紹介するため、「バイアスが企業にもたらす影響を知りたい」「バイアスを減らしたいが方法が分からない」という方は、ぜひお読みください。


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バイアスとは?

バイアスとは、人が意思決定や判断を行うときに、個人的な感情や経験、偏見、先入観などの客観的ではない要因に影響を受ける心理現象です。

バイアスは誰にでも生じる現象で、個人が持つ心理的な特性や行動パターンが影響するため、個人の経験や文化的・社会的背景などによって異なります。

ビジネスシーンでは、バイアスは先入観や偏見、思い込みを指すことが多く、非合理的な判断の原因となるネガティブな意味で使われます。

経営者が適切な判断をするためには、バイアスを取り払った客観的な視点が必要です。

バイアスが起きる原因

バイアスが起きる原因は、素早く意思決定を行う際に、思い込みや先入観に影響を受けるためと言われます。

人間が意思決定を行う際に「直感ですばやく行う」「ゆっくり論理的に行う」という2種類の方法がありますが、「直感ですばやく行う方法」では、人間は考えている感覚がなく、無意識のうちに意思決定を行います。

そのため、自分で気づいていない思い込みや偏見、先入観に影響を受けてしまう、というのがバイアスが起きるメカニズムです。

ステレオタイプとの違い

バイアスと似た意味を持つ言葉に、ステレオタイプがあります。

ステレオタイプは、多くの人に浸透している固定観念や思い込みを指します。例えば「O型の人はおおらかだ」はステレオタイプの典型例です。

一方、バイアスは、ステレオタイプに感情や評価を加えたものです。例えば「O型の人はおおらかだから、A型の人よりも仲良くなりやすい」と言うと、バイアスの入った言い方になります。


認知バイアスとは?

ビジネスシーンで使われる「バイアス」は、「認知バイアス」の意味で使われることが多いです。認知バイアスの概要と、その種類について詳しく解説します。

認知バイアスの概要

認知バイアスとは、物事を判断するときに、直感や経験に基づいた先入観で非合理な判断をしてしまう心理現象のことです。

「アンコンシャス・バイアス」ともいい、脳の負担を軽減するために必要な機能といわれています。

認知バイアスが強く働くと、公平な判断が難しく、誤った意思決定をするリスクが高まります。

生活習慣から生じる固定観念や不安から生まれた認知バイアスは、取り除くのが難しいとされるものの、客観的に物事を見る意識をしてバイアスの影響を減らすことは可能です。

認知バイアスの種類

認知バイアスには、主に以下の4つの種類があります。

  • 正常性バイアス
  • 生存バイアス
  • 確証バイアス
  • ジェンダーバイアス

一つずつ具体的に解説します。

正常性バイアス

正常性バイアスは、異常事態が起こったときに、自分に都合の悪い情報は無視して「自分は大丈夫」と思い込み、心を平静に保とうとする心理現象です。

ビジネスシーンにおいて正常性バイアスが働くと、問題が起きたときに判断が遅れ、信用や資金を失うなど取り返しのつかない事態になる可能性があります。

異常事態が発生した場合に正常性バイアスが働くことを念頭におき、客観的かつ冷静に判断することが重要です。

生存バイアス

生存バイアスは、失敗に目を向けずに成功だけを見て判断する心理現象です。

成功の裏には数多くの失敗が隠れており、失敗事例から学べることも少なくありません。成功だけに目を向けると、物事を一義的にしか捉えられず、重大なポイントを見過ごすリスクが高まります。

ビジネスシーンで判断を行うときには、「成功と失敗が占める割合」「成功事例に共通点は見られるか」「成功事例の数や内容は十分か」などを考慮することが重要です。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の思い込みや願望を正当化する情報ばかりを集め、それ以外の情報を軽視してしまう心理現象のことを指します。

例えば事業投資を検討している場合に、「投資が成功する」という情報だけを探して集め、それを根拠に事業投資を行うのが確証バイアスです。

ビジネスシーンで確証バイアスが強く働くと、正しい判断ができず、事業の方向性を誤ってしまう可能性が高まります。メリットとデメリットの両方の情報をもとにした、冷静な判断が必要です。

ジェンダーバイアス

ジェンダーバイアスとは、男女の役割についての固定観念を意味します。

例えば「男性は外で働き家事や育児はしなくて良い」「女性は家事と育児をしていれば良い」という根拠のない男女の役割分担の考え方は、典型的なジェンダーバイアスです。

ジェンダーバイアスは女性の賃金を低く抑えるなどの社会的差別を生みます。

企業にジェンダーバイアスがまん延すると、適材適所の人材配置が難しくなります。
性別ではなく、個人の適性や能力に目を向ける意識が重要です。


バイアスが企業にもたらす影響

バイアスが企業にもたらす影響は、主に以下の4点です。

  • ハラスメントの危険性が高まる
  • 公平な人事評価ができなくなる
  • 多様な人材を採用できなくなる
  • 組織のモチベーションが低下する

一つずつ詳しく解説します。

ハラスメントの危険性が高まる

バイアスが企業にもたらす影響として、ハラスメントの危険性が高まる点があります。

社員の持つバイアスがハラスメントとして現れやすいためです。例えば、以下のようなバイアスはハラスメントにつながりやすいといえます。

  • 残業しない社員は頼りにならない。
  • 育休明けの女性社員には大事な商談を任せないほうが良い。
  • 飲み会に来ない若手社員は、上司や同僚とコミュニケーションを取りたくないのだろう。

社員の偏見や思い込みに目をつぶっていると、若手社員や女性社員、残業せずに帰る社員など、特定の社員へのハラスメントが当たり前の組織になってしまいます。

ハラスメントが横行する組織は、社員のモチベーションや企業イメージも低下するでしょう。

公平な人事評価ができなくなる

公平な人事評価ができなくなることも、バイアスが企業にもたらす影響の一つです。例えば、以下のようなバイアスは公平な人事評価を妨げます。

  • 体育会系の部活出身者は営業職に向いている。
  • 子供がいる女性は子供の予定で休むことが多いため、管理職に向いていない。
  • 残業時間が少ない社員よりも残業時間の多い社員を評価すべきだ。

適材適所の人材配置をすると組織の生産性が高まり、社員のモチベーションも向上するため、公平な人事評価が重要です。

バイアスを持ったまま都合の良い解釈で人事評価を行うと、他の評価すべき点を見過ごし、社員の成長機会を奪うことにもつながります。

多様な人材を採用できなくなる

バイアスは、多様な人材を採用できなくなるという影響も企業にもたらします。
例えば、以下のようなバイアスが多様な人材採用を妨げます。

  • 偏差値の高い大学の出身者は優秀だ。
  • 弊社に多いA大学の出身者だから、弊社の社風に合うだろう。
  • 髪を明るく染めているから、不真面目そうだ。

人材採用においてバイアスが働くと、似たタイプの人材を多く採用してしまい、多様な人材の採用は困難です。

ミスマッチも起こりやすく、やる気のない社員や辞めてしまう社員が増えれば、組織全体の士気も下がってしまうでしょう。

組織のモチベーションが低下する

組織のモチベーションが低下することも、バイアスが企業にもたらす影響といえます。
バイアスによって組織のモチベーションが低下する例は、以下のとおりです。

  • 自分が昇進すると思っていたのに、同期が先に昇進した。
  • Aさんがプロジェクトリーダーに立候補したが、業務の経験が長いBさんを選出した。
  • Cさんは時短勤務のため、出張がある業務から外された。

バイアスによって社員のモチベーションが下がると、人間関係の悪化や離職率の増加につながり、組織全体のモチベーションが低下します。

社員の自己成長や新しいアイデアを生む機会が失われ、組織の生産性も下がってしまうでしょう。


企業がバイアスを改善するには?

企業がバイアスを改善する方法は、以下の4つです。

  • 直感や前提を疑う
  • 第三者の意見を聞く
  • 公平な評価基準を作る
  • バイアスに関する研修を行う

一つずつ具体的に解説します。

直感や前提を疑う

企業がバイアスを改善するには、直感や前提を疑う必要があります。

バイアスは無意識の思い込みのため、意識して直感や前提を疑うとバイアスを自覚できます。
直感や前提を疑うためには、自問自答する方法が良いでしょう。

例えば、「今の考え方以外の視点はないか」「この判断の根拠は何か」など、自問自答すると冷静かつ客観的な判断が可能になります。

第三者の意見を聞く

第三者の意見を聞くことも、企業がバイアスを改善するときに効果的です。

第三者の意見と自分の意見を比較すると、自分がバイアスにかかっていないかの判断がしやすくなります。

第三者の意見を聞くときには、反対意見や視点が異なる意見にも耳を傾けることが重要です。
自分と異なる意見は客観的に物事を見るきっかけになり、企業としての正しい判断にもつながるでしょう。

公平な評価基準を作る

企業がバイアスを改善するためには、公平な評価基準を作る必要があります。

定量評価と定性評価の評価基準を明確にすると、主観が入りにくく公平な評価が可能です。なお、評価基準を定めるときには職位や職種ごとに基準を明確にしておくことが重要です。

職位や職種ごとの基準が曖昧だと、「入社年次が上だから評価を良くする」「営業職は売上に直結するので評価を良くする」などのバイアスが働きやすくなります。

バイアスに関する研修を行う

バイアスに関する研修を行うことも、企業がバイアスを改善する方法です。

社内研修でバイアスの知識を周知して社員がバイアスの存在を意識すると、業務におけるバイアスの影響を減らせます。

特に正常性バイアスは、災害発生時に避難を遅らせ、甚大な被害につながる可能性があるため、全社員で共有することが重要です。

研修ではバイアス診断ゲームを行うのがおすすめです。バイアス診断ゲームでは、自分のバイアスを客観視し、バイアスが働かないように意識する練習ができます。

NASAゲーム

NASAゲームは、グループで合意形成を行うゲームです。
「宇宙」をテーマにした設問に対する自分なりの解答を導き出した後に、グループで話し合って一つの結論を導きます。

例えば、以下のような問題が出されます。

あなたは宇宙飛行士です。宇宙船が故障して、月面で待つ母船から100km離れた場所に不時着しました。宇宙船には以下の15のアイテムが残りました。母船に戻るため、生存に最も必要なものから順に1から15まで優先順位をつけてください。また、それぞれのアイテムをどのように使うのかと、順位の理由も説明してください。

15のアイテムは、パラシュートや宇宙食、救命ボートなどです。グループで話し合って最終的な順位を決定後、NASAが科学的に導いた模範解答をもとに採点し、模範解答との誤差を算出します。

合計の誤差が小さいグループが勝ちです。

グループで一丸となって結論を出すことで、質の高い合意形成を行う経験ができます。

クロスロード・ダイバーシティゲーム

クロスロード・ダイバーシティゲームは、対話型のカードゲームです。

最少5人から、100人以上でも実施できます。参加者はカードに書かれた事例を自らの問題として考え、「Yes」か「No」かで自分の考えを示します。それをもとに参加者同士で対話や意見交換を行うゲームです。

ゲームの進め方の例は以下のとおりです。

  1. カードに以下のような設問が書かれているので、答えを決める。

    あなたは20代男性社員。ノー残業デーの今日は、娘の保育園のお迎え担当の日。帰り支度をしていると、上司から「緊急トラブルが起こったので残業してほしい」と言われた。妻は大事な会議の真っ最中。
    上司の依頼を Yes(引き受ける)No(引き受けない)

  2. カードを伏せたまま出し、合図で一斉にカードをめくる。
  3. 多数派になった人は青座布団を一枚もらえる。ただし、オンリーワンの人がいた場合はその人が金座布団をもらえ、多数派は青座布団をもらえない。
  4. 座布団を最も多く持っていた人が勝ち。

カードの問題は、多様な人がいる場所で起こりやすいジレンマが取り上げられており、他者と意見交換を行うことで自分のジレンマに気づけます。

バーンガ

バーンガは、トランプを使って異文化コミュニケーションを疑似体験するゲームです。
UNOに似たトランプゲームを行いながら進めていきます。
バーンガには以下のルールがあります。

  • ゲームは無言で行う。ただし、ジェスチャーは可能
  • 実は、トランプゲームのルールがグループごとに少しずつ異なる
  • 1ゲーム終わる度に、グループの1位と最下位がグループを移動する
  • 3ゲーム以上実施する

ポイントは以下の点です。

  • グループ間でメンバーが移動する
  • グループごとにゲームのルールが少しだけ異なる
  • グループごとにルールが違うことを受講者は知らない
  • ゲームのルールを言葉で伝えられない

新しいグループに移動した受講者は、全員が同じルールでゲームをしている前提のため、ルールの違いに戸惑います。

これが「異文化では前提やルールが違う」という疑似体験です。
自分が少数派になってバイアスを受ける体験をすることで、バイアスの影響を知り、バイアスを減らすよう意識できます。


ビジネスシーン以外でのバイアス

バイアスはビジネスシーン以外でも使われます。以下のバイアスについて説明します。

  • 心理学でのバイアス
  • 統計学でのバイアス
  • 医療でのバイアス
  • 服飾でのバイアス

心理学でのバイアス

心理学でのバイアスは、「認知バイアス」と呼ばれ、これまでの経験や先入観で合理的でない判断をする心理現象を指します。

ビジネスシーンでのバイアスとほぼ同義です。「アンコンシャス・バイアス」や「偏見」と言うこともあります。

統計学でのバイアス

統計学でのバイアスは、母集団から抽出した標本分布が、母集団の分布と比べて偶然ではないズレを起こしているときに「バイアスがある」と言います。

統計学のバイアスは、標本を抽出する方法や測定の方法によって起こることが多く、前者は選択バイアス、後者は情報バイアスと呼ばれます。

参考URL:https://bellcurve.jp/statistics/glossary/1382.html

医療でのバイアス

医療でのバイアスは、診断や治療で起こる偏りを指します。

例えば「最初の診断が正しいと思い込み、診断を改めない」「自分の仮説に合うデータは受け入れ、合わないデータは無視して診断する」などが医療現場で見られるバイアスです。

服飾でのバイアス

服飾でのバイアスは「斜め」の意味で、生地を斜め45度に裁断することを「バイアスカット」「バイアス断ち」といいます。

斜めに切ると布目の伸縮性が増すため、やわらかな着心地にしたい場合などに使用されます。


まとめ

バイアスとは、人が意思決定や判断を行うときに、偏見や先入観などの客観的ではない要因に影響を受ける心理現象です。

ビジネスシーンにおけるバイアスは、ハラスメントの危険性や組織のモチベーション低下、公平な人事評価の阻害などの影響をもたらします。

バイアスを改善する方法として、直感や前提を疑ったり第三者の意見を聞いたりする意識や、バイアスについて知る研修などが効果的です。

企業はバイアスを放置せず、バイアスを改善する体制や意識を組織全体で持てるよう、従業員に働きかけましょう。


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bizocean事務局

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