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変更されたキャリアアップ助成金

変更されたキャリアアップ助成金

非正規雇用労働者を正社員にするなどの取組を支援するキャリアアップ助成金が令和3年4月に一部変更されました。例えば、有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合等の「正社員化コース」では支給要件が見直されています。また、令和3年2月には、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者に関し、紹介予定派遣を通じて正社員化に取組む場合の助成対象が拡充されました。今回は、変更されたキャリアアップ助成金をご説明します。

●キャリアアップ助成金の変更点

キャリアアップ助成金とは、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度」です。7つのコースが設けられていますが、いくつかの制度において内容が見直されました。

1.「正社員化コース」では、要件と加算措置が見直されています。

従来の要件 新しい要件
正規雇用等へ転換等した際、転換等前の6か月と転換等後の6か月の賃金を比較して、以下の①または②のいずれかが5%以上増額していること

① 基本給および定額で支給されている諸手当(賞与を除く)を含む賃金の総額
② 基本給、定額で支給されている諸手当および賞与を含む賃金の総額(転換後の基本給および定額で支給されている諸手当の合計額を、転換前と比較して低下させていないこと)
正規雇用等へ転換等した際、転換等前の6か月と転換等後の6か月の賃金(※)を比較して3%以上増額していること

※ 基本給および定額で支給されている諸手当を含む賃金の総額であり、賞与は含めない

賃金UP要件が5%から3%となり、賃金総額に「賞与」を含めることができなくなりました。見直し後は基本給と諸手当で賃金がUPしたかどうかを判断しますので注意してください。その他、「若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換等した場合」の加算措置が廃止され、「勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換または直接雇用した場合」の加算措置対象に「短時間正社員制度」が追加されました。

2.「障害者正社員化コース」が新設されました。これは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換した事業主を助成するものです。

【概要】

障害者の雇用促進と職場定着を図るために、次の①または②のいずれかの措置を講じた場合に助成されます

  • ① 有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換すること
  • ② 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること

【支給額】(中小企業で重度身体障害者等の場合)

支給対象者 措置内容 支給額
重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者 有期雇用から正規雇用への転換 120万円
有期雇用から無期雇用への転換 60万円
無期雇用から正規雇用への転換 60万円

※ 支給額が、各々の支給対象期における労働に対する賃金の額を超える場合には、当該賃金の総額が上限

3.「健康診断制度コース」が廃止され、「諸手当制度等共通化コース」に統合されました。

当コースでは、有期雇用労働者等と正規雇用労働者共通の諸手当制度を新たに設けて適用した場合、または有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成が受けられます。なお、今回の統合とともに、対象となる手当が変更されました。

従来の対象手当 新たな対象手当等
  • ① 賞与
  • ② 役職手当
  • ③ 特殊作業手当・特殊勤務手当
  • ④ 精皆勤手当
  • ⑤ 食事手当
  • ⑥ 単身赴任手当
  • ⑦ 地域手当
  • ⑧ 家族手当
  • ⑨ 住宅手当
  • ⑩ 時間外労働手当
  • ⑪ 深夜・休日労働手当
  • ① 賞与(6か月分相当として50,000円以上の支給)
  • ② 家族手当(1か月分相当として3,000円以上の支給)
  • ③ 住宅手当(②と同様)
  • ④ 退職金(月3,000円以上の積み立て)
  • ⑤ 健康診断制度

健康診断制度につきましては、受診日の前日から起算して3か月以上前の日から受診後6か月以上の期間継続して雇用されている有期雇用労働者等であることが求められます。

4.「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」が令和4年9月末まで延長されました(従業員が100人を超える事業主は、一部の加算措置を除き令和3年9月末まで)。

5.「短時間労働者労働時間延長コース」が令和4年9月末まで延長されました。

●派遣労働者のキャリアアップ支援を拡充

「正社員化コース」では、派遣労働者のキャリアアップを促進する観点から、派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合も助成が行われます。

【主な要件】

  • ① 派遣労働者を正規雇用労働者または多様な正社員として直接雇用する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定している事業主であること
  • ② 派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位において、6か月以上の期間継続して労働者派遣を受け入れていた事業主であること(6か月以上の期間継続して派遣就業していた同一の派遣労働者を直接雇用した場合に限ります)
  • ③ 直接雇用された労働者に対して直接雇用後6か月分の賃金を支給した事業主であること

令和3年2月、新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた方の早期再就職支援を図るため、「正社員化コース」において助成対象を拡充する制度改正が行われています。具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者が紹介予定派遣の後、派遣先の事業所に正社員として直接雇用された場合、支給要件として直接雇用前に当該事業所に従事していた期間が6か月以上必要なところ、2か月以上6か月未満でもよいとされました。

【令和3年2月の改正】

対象者 令和2年1月24日以降に新型コロナウイルス感染症の影響により離職し、就労経験のない職業に就くことを希望する方
必要な取組 令和3年2月5日から令和4年3月31日の間に、紹介予定派遣に係る派遣労働者を正社員として直接雇用すること

自己都合による離職であっても、例えば、職場で感染者が発生したので離職した場合や、新型コロナウイルスに感染したことなどによって家族の介護が必要になり離職した場合など、離職が新型コロナウイルス感染症の影響によるものであれば支給対象となり得ます。ただし、就労経験のない職業に就くことが要件ですから、雇用形態がパートやアルバイトであっても、過去に就労経験があれば本助成の対象外となりますので注意してください(学校在学中のパートやアルバイトは除きます)。

なお、紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、派遣期間終了後に派遣労働者と派遣先企業が合意のもとで派遣先企業の正社員となることを予定している派遣をいいます。

助成金は役所の事業ですから、基本的に年度で運営されています。そのため、年度替わりには制度が見直されることが多くなります。今回は新型コロナウイルス感染症対策とも相まって、様々な変更がなされました。今後、新型コロナウイルス感染症の状況に応じて、変更される部分や新たな特例などが設けられるかもしれません。ぜひ最新情報にご留意いただき、有効に助成金制度を活用していただければと思います。

※ 本内容は、令和3年5月14日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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