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【新設】高年齢労働者処遇改善促進助成金

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

【新設】高年齢労働者処遇改善促進助成金

現行の制度では、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以降の各月に支払われる賃金が、原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者に対し、65歳に達するまでの期間、60歳以降の各月の賃金の最大15%が「高年齢雇用継続基本給付金」としてハローワークから支給されています。

しかし、令和7年度から新たに60歳になる労働者へのこの給付率が、10%に縮小されることがすでに決まっています。

高年齢者への給与額が現状と同様であるとすると、この15%から10%に縮小される5%分だけ、高年齢労働者の収入減少となってしまうおそれがあります。そのため、令和7年度に向けて、企業における高年齢労働者の処遇の改善に向けた取り組みを支援することを目的として、令和3年4月1日より新設された助成金が、当該「高年齢労働者処遇改善促進助成金」です。

この助成金は、現在高年齢雇用継続基本給付金を受給している従業員を抱える事業主であって、これから60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則や労働協約の定めるところにより、当該労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブル(以下「賃金規定等」という)の増額改定に取り組む、事業主に対して支給されるものです。

概要を見ていきましょう。


【1】支給要件

この助成金を受給するためには、次の要件を満たしている事業主であることが必要です。

(1)次の①と②を算出して比較した減少率が95%以上であることが確認できること
(算定対象労働者※1が20人に満たない事業所は、任意指定除外者※2を除いて減少率を算出する)

≪表1≫

賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間に算定対象労働者が受給した増額改定前の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額
賃金規定等を増額改定後、各支給対象期において当該算定対象労働者が受給した増額改定後の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額

※1 算定対象労働者とは、事業所において高年齢雇用継続基本給付金を受給しているすべての労働者をいいます。

※2 任意指定除外者とは、算定対象労働者が20人未満の事業所であって、算定対象労働者の希望により雇用形態を変更し(フルタイムからパートなど)、賃金規定等改定日後も高年齢雇用継続基本給付金を受給する者の中から、事業主が各支給対象期の支給申請時に任意に指定した1人のみをいいます。

(2)就業規則や労働協約で定めるところにより、賃金規定等を増額改定し、増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用していること

(3)増額改定前の賃金規定等を6か月以上運用していたこと(新たに賃金規定を整備する場合は、賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間の算定対象労働者の賃金支払い状況が確認できること)

(4)支給申請日において増額改定後の賃金規定等を継続して運用していること

(5)支給対象となる事業主の要件
「各雇用関係助成金に共通の要件」のAの要件に該当するとともに、Bの要件に該当していないこと。この共通の要件は複数あるため、「令和3年度 雇用・労働分野の助成金のご案内 詳細版」をご参照ください。

当該助成金のみの要件はもとより雇用関係助成金の共通要件を満たす必要もあります。必ず併せて確認するようにしてください。

【2】支給対象労働者

支給対象となる労働者は、次の要件を満たしていることが必要です。

  • (1)賃金規定等改定計画書に算定対象労働者として記載されていること。ただし、支給申請日に既に離職している者や、支給対象期の末月の前月までに高年齢雇用継続基本給付金の支給が終了した者など一部は除かれます。
  • (2)支給申請日において、継続して支給対象事業主に雇用されていること
  • (3)増額改定した賃金規定等を適用されていること

【3】支給申請回数

支給対象期の第1期から、第4期まで(6か月ごと)の最大4回(2年間)。

支給対象期とは、賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月から最初の6か月間を支給対象期の第1期とし、以後6か月ごとに第2期、第3期、第4期といいます。

【4】支給額

増額改定した賃金規定等を適用した年度により、先の≪表1≫の①から②を引いた額に次の助成率を乗じた額が支給されます(100円未満切り捨て)。

令和3年度又は令和4年度 4/5(中小企業以外は2/3)
令和5年度又は令和6年度 2/3(中小企業以外は1/2)

【5】助成金申請の流れ

助成金申請には大きく分けて3段階あります。

助成金申請の流れ

  • ア-1.賃金規定等改定計画書は適用事業所ごとに作成し、賃金規定等改定予定年月日や算定対象労働者を記載します。
  • ア-2.計画書の認定後計画書に記載された内容に変更が生じた場合には、変更届の提出が必要です。
    賃金規定等改定予定日の変更は、変更後の賃金規程等改定予定日の前日までに、それ以外の変更は6か月ごとの支給対象期の第1期支給申請日までに変更届及び計画書の写しを労働局に提出します。
  • イ.当該助成金の対象となる賃金規定等の改定の取り組みは、就業規則等の定めるところにより、60歳から64歳までの高年齢労働者に適用される賃金規定等を増額改定し、当該措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間に当該高年齢労働者が受給した増額改定前の賃金額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額から、賃金規定等を増額改定後、各支給対象期に当該高年齢労働者が受給した増額改定後の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額の減少率が95%以上となるように取り組むことが必要です。
  • ウ.アで提出した賃金規定等改定計画の認定により認定された計画に基づき賃金規定等の増額改定を行った場合、各支給対象期末月分にかかる管轄ハローワークから指定された高年齢雇用継続基本給付金の支給申請月の翌月の初日から起算して2か月以内に、高年齢労働者処遇改善促進助成金支給申請書(様式第3号)、高年齢労働者処遇改善促進助成金支給申請書(別紙)(様式第3-1号)及び添付書類を管轄労働局に提出します。
    様式第3-1号は各労働者の60歳到達時賃金月額、増額前6か月間に受給した高年齢雇用継続基本給付金の総額、増額後に受給した総額等を記載することで減少率などが算出される様式になっています。

新設されて間もない助成金のため、記載例などの情報がほぼありません。添付書類等については労働局やハローワークに問い合わせるようにと指示されています。実際に取り組む場合には支給要領を読み、詳細は労働局等に問い合わせをして確認してください。余裕をもって取り組んでいきましょう。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
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