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ものづくり補助金 事業計画書の記載内容について解説

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

ものづくり補助金 事業計画書の記載内容について解説

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下ものづくり補助金)の申請で、一番採択に影響する部分が事業計画書となります。

ものづくり補助金の事業計画書様式は、「その1:補助事業の具体的取組内容」「その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果」「その3:会社全体の事業計画」の3つのパートに分かれており、A4サイズで合計10ページ以内に作成する必要があります。

しかし、上記の漠然とした内容だけで申請書の作成を進めることは難しいと思います。そのため、審査項目に沿って、ものづくり補助金の一般型申請ではどのような内容を記述すれば良いかを解説していきます。

※本記事の内容は2021年2月末時点の「ものづくり補助金公募要領」に基づき作成しております。必ず最新の公募要領を確認し、ご自身の判断で申請書類をご作成ください。


1.ものづくり補助金の審査項目について確認する

ものづくり補助金の審査方法については、公募要領に審査項目が記載されています。この審査項目に沿って審査がされていくわけです。
審査項目は「技術面」「事業化面」「政策面」の3つに分かれており、さらにその中でも項目が細分化されています。

しかし、審査項目ごとにどういった内容を記載すれば良いかがわかりにくいですよね。
これから審査項目に沿って具体的な記載内容を解説していきます。

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2.審査項目【技術面】を満たす内容とは

はじめに審査項目【技術面】について確認していきましょう。

①新製品・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか。「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取り組みであるか(グローバル展開型では、地域内での革新性だけではなく、国際競争力を有しているか)。

解説

事業計画書の内容が革新的であるかが求められます。そのため、業界標準に自社が適合するために行うような取り組みではダメです。他社が取り組んでいないような内容にしましょう。ただし、「特許を取得する」といったハードルの高さではありません。最低限、自社の強みを生かし他社との差別化がしっかりと示せる事業計画にしましょう。

コツとしては、「異なる業界のビジネスモデルを参考にする」ことや、「自社の周辺地域の特色を理解しそれに合った事業を展開する」こと、「既存のビジネスアイデアを2つ以上組み合わせること」で革新的な事業計画が生み出しやすくなるはずです。


② 試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

解説

まず、現状の技術面での課題を見極めることが必要です。補助事業をなぜ実施する必要があるのか(現状のままではダメなのか)を明確に記載しましょう。例えば「新製品を開発するために既存の加工装置では特殊な形状に対応できない。」などが考えられます。そのできない理由を、専門家でなくてもわかる内容に落とし込んで記載しましょう。
達成度が確認できるように、具体的な数値を使うと効果的です。


③ 課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。

解説

課題が補助事業で導入する設備等により解決できるかを示します。
注意点として、課題を解決できたとしても優位性(他社との差別化)が望めないような内容ではNGです。前述したように、「業界標準に自社が追いつく」といった内容だと優位性は見込めないですよね。

また、課題解決の難易度と導入する設備等の性能が釣り合っている必要があります。
課題の解決方法が、比較的容易なのに設備等の性能が過剰だと、本当に必要なのか疑問視されてしまいます。


④ 補助事業実施のための技術的能力が備わっているか。

解説

導入する設備の能力や、それを使いこなせるだけの社内体制が備わっているかを記載する必要があります。例えば、装置を使用するために資格が必要であれば資格の記載を、技術力が求められる内容であれば、技術力を示すことができる経歴を記載しましょう。


3.審査項目【事業化面】を満たす内容とは

次に審査項目【事業化面】についてです。

① 補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか(グローバル展開型では、海外展開に必要な実施体制や計画が明記されているか)。

解説

社内・社外の取り組み事業に対する実施体制を、図などを用いて明示しましょう。
社内の体制であれば、「統括責任者」「発注・仕様決定者」「経理・事務処理」など補助事業全体の工程を把握し、誰が何をするのかを具体的に定めましょう。
社外の体制は、「取引先(メーカー・商社など)」や「資金調達先(銀行・公庫など)」、「本取り組み事業に補助をする専門家(コンサルタントなど)」との取り組み事業での関係性を示すことで、信頼できる事業体制であることを明記しましょう。
また、最近の財務状況が健全であるかどうか、本事業における資金繰りについても忘れずに記載しましょう。


② 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか(グローバル展開型では、事前の十分な市場調査分析を行っているか)。

解説

補助事業の内容に適切なユーザーやマーケットを具体的に定めましょう。
市場調査については、統計局や各地方自治体が発行しているデータを参考にすることや、アンケート調査を実施し顧客のニーズを把握するなどの手法が有効です。
ただし、マーケットの選定では、右肩上がりが見込める市場を対象にしましょう。市場調査の結果「どんどん衰退している!!」となると、儲からない事業計画(投入した補助金の効果が薄い)と評価されてしまいます。


③ 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。

解説

導入する設備の価格が妥当かを判断しましょう。装置などであれば、他社からも相見積もりをとることで導入予定の装置が市場価格から乖離していないかを判断できます。
また、投資対効果が高いもの、設備の投資金額に対して利益が多く発生するかを見極めることも重要です。
設備の導入であれば、発注から製作~現場納入~試運転調整など、長い期間がかかることが一般的です。スケジュールが補助事業の期間に収まるのかも併せて確認しておきましょう。工程表を作成するとわかりやすいですね。


④ 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか。

解説

補助事業でしっかりと利益が出ることを記載しましょう。
補助事業に投資をして、プラスマイナスゼロといった内容だと投資の意味がないと判断されてしまいます。そのため、効果(売上・利益の増加)は、できるだけ伸び率の大きい数字としましょう。しかし、根拠がない計画だと意味がありませんので気をつけてください。


4.審査項目【政策面】を満たす内容とは

最後に審査項目【政策面】についてです。

① 地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業を積極的に展開することが期待できるか(グローバル展開型では、事業の成果・波及効果が国内に環流することが見込まれるか)。

解説 

本取り組み事業によって、地域経済にどういった好影響を与えるかが評価基準となります。そのためには自社が存在する地域がどういった地域なのか特性を把握しましょう。
地域の社会問題(例:高齢化・過疎化など) がある場合はそれに交えて記載することも有効であると考えられます。


② ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。

解説

ここは事業化面で記載した内容と近いものになります。
自社の強みと市場を的確に選定し、競争に陥らないことが求められます。


③ バイオマス素材を用いた資源循環型プラスチック製品の開発等、環境に配慮した持続可能な事業計画となっているか。

解説

例えば新しい設備を導入することで、廃棄ロスの低減が見込めること、自社で生産できる体制を構築できるので、運搬などにかかるエネルギー(CO2やコスト削減)ができるなど、環境に少しでもプラスになるような取り組みを記載しましょう。


5.まとめ

ものづくり補助金の審査項目は多く、すべての審査項目で評価されるように事業計画書を作成することは、時間を要し作成の労力も必要です。
しかし、近年は提出される事業計画書のレベルが全体的に高くなっており、審査項目に漏れなく対応して記述することが採択には必要不可欠となっています。

特に「革新的」かどうかは重要なポイントになりますので、他社に負けないビジネスアイデアをしっかりと練っていただければと存じます。

審査項目とは関係がありませんが、事業計画書全体として「一本のストーリーになっているか」「専門的すぎる内容になっていないか、わかりやすい内容か」など、審査員にとって読みやすい体裁にすることも意識しましょう。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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