【2022年改正】見直された人材開発支援助成金
人材の教育、育成を積極的に行っている企業と、主に従業員個人に任せている企業とがありますが、皆様の会社ではいかがでしょうか。以前よりも個人に任せる企業が増えているとも言われますが、やはりここぞという教育・訓練は会社にて実施したいものです。
人材開発支援助成金は、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度で、「特定訓練コース」「一般訓練コース」など複数のコースがあり、令和4年現在は8つ用意されています。
その中の「特定訓練コース」「一般訓練コース」「特別育成訓練コース」において令和4年度に見直しがなされ、さらに国民のアイデアをもとに「人への投資促進コース」が新設されています。今回は新設コース、変更コースの変更点の概要を見ていきましょう。
なお、助成金の申請にあたっては必ず要綱等を確認し、不明な点は問い合わせをする等、慎重に行っていただきますようお願いします。
【1】人への投資促進コース
このコースには5つの助成メニューが準備されています。なお、すべての訓練コースでオンライン(e-ラーニング)による訓練も対象となっています。
デジタル/成長分野 |
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での高度な訓練を行う事業主に対する高率助成 |
IT分野未経験 |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する高率助成(OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練) |
サブスクリプション |
定額制訓練 サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成 |
自発的能力開発 |
自発的職業能力開発訓練 労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成 |
教育訓練休暇 |
長期教育訓練休暇等制度/短時間勤務等制度 働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務制度を導入する事業主への助成 |
≪助成率・対象訓練≫
訓練メニュー |
対象者 |
助成率 |
賃金助成額 |
||
中小企業 |
大企業 |
中小企業 |
大企業 |
||
①-1高度デジタル人材訓練 |
正規/非正規 |
75% |
60% |
960円 |
480円 |
①-2成長分野等人材訓練 |
75% |
国内大学院 960円 |
|||
②IT分野未経験 |
正規 |
60%(+15%) |
45%(+15%) |
760円 (+200円) |
380円 (+100円) |
③サブスクリプション |
正規/非正規 |
45%(+15%) |
30%(+15%) |
||
④自発的能力開発 |
正規/非正規 |
30% |
|||
⑤長期教育訓練休暇等制度 |
正規/非正規 |
制導入経費20万円 (+4万円) |
1日あたり6,000円(+1,200円) |
※()内の助成率(額)は、生産性要件を満たした場合の率(額)
- 1事業所が1年間に受けられる助成額、受講者1人あたりの助成額、受給回数等、限度額や限度回数、受講限度日数などが設けられています。
- 海外の大学院を活用した経営に関する分野の訓練等も大学や期間などによっては助成の対象となります。
≪助成金申請・支給の流れ≫
助成金支給申請は、コースによって流れが若干違います。制度導入と計画提出の順番が違うものがあります。手順を間違えてしまうと助成金を申請できなくなってしまうことがありますので、どの訓練の導入手順を踏むのか必ず確認しながら行いましょう。
1.①-1高度デジタル人材訓練/①-2成長分野等人材訓練
2.IT分野未経験
3.サブスクリプション
4.自発的能力開発
5.長期教育訓練休暇等制度
≪注意点≫
人への投資促進コースで助成金を受けるためには、「事業内職業能力開発計画」を作成し、労働者に段階的・体系的な訓練を実施することが求められています。そのために、社内で職業能力開発の取組を推進するキーパーソン「職業能力開発推進者」を選任しなければなりません。
「自発的職業能力開発訓練」では、計画提出前に就業規則等において制度を導入していることが必要であり、「長期教育訓練休暇等制度」では原則として、計画提出後に就業規則等に制度を導入することが必要など、コースによって時期等も変わってきます。思い込みで進めないように注意が必要です。
【2】 見直された人材開発支援助成金コース
全部で8つのコースがある中、「特定訓練コース」「一般訓練コース」「特別育成訓練コース」が見直されています。見直される主な内容を見ていきましょう。
訓練コース名 |
対象者・対象訓練 |
共通の見直し |
各コースの見直し |
特定訓練 コース |
正規雇用労働者を対象とした生産性向上に資する訓練など |
|
⑤「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更 |
一般訓練 コース |
正規雇用労働者を対象とした訓練 |
||
特別育成訓練コース |
非正規雇用労働者を対象とした訓練 |
⑥ 助成対象訓練変更 ⑦ 計画届提出時の書類変更 |
1.訓練施設の要件変更
対象となる訓練施設から次のような「事業主・事業主団体の設置する施設」の一部が除外されます。
- 申請事業主(取締役含む)の3親等以内の親族が設置する施設
- 申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
- グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
- 申請事業主が設置する別法人の施設
2.訓練講師要件変更
講師を招き、事業内で訓練を実施する場合に、新たに講師は次のいずれかに該当する必要があります。
- 公共職業能力開発施設や各種学校等の施設に所属する指導員等
- 訓練の内容に直接関係する職種の職業訓練指導員免許を有する者
- 訓練の内容に直接関係する職種の1級の技能検定に合格した者
- 訓練分野の指導員・講師経験が3年以上の者又は実務経験が10年以上の者
3.OJTの助成額変更等
ア.OJTを実施した場合の助成額が次のとおり定額制となります。
特定訓練コース(認定実習併用職業訓練) |
20万円(11万円) |
特別育成訓練コース(有期実習型訓練) |
10万円(9万円) |
()内は大企業の助成額。生産性要件を満たした場合の増額もあります。
イ.OJT訓練指導者が1日に指導できる受講者数は3名までとなりました。
4.特定訓練コースの見直し
- グローバル人材育成訓練の廃止
- 特定分野認定実習併用職業訓練を認定実習併用職業訓練に統廃合
- セルフ・キャリアドック制度導入の上乗せ措置を廃止し、定期的なキャリアコンサルティング制度の規定を必須化
5.特定訓練コースの見直し 「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更
若年人材育成訓練(35歳未満を対象)の対象労働者の要件を、「雇用契約締結後5年を経過していない労働者」から「事業所の雇用保険被保険者となった日から5年を経過していない労働者」に変更
6.特別育成訓練コースの見直し 助成対象訓練変更
対象訓練のうち「職業又は職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる接遇やマナー講習などの訓練の取扱を、職務に関連した内容に限り制限なく実施可能であったものが、訓練時間数に占める割合が半分未満とすることが必要となりました。
7.特別育成訓練コースの見直し 計画届提出時の書類変更
次の書類の提出が必要、変更、廃止のいずれかとなっています。
(新規)
- 訓練別対象者一覧
- 訓練の実施内容など(実施主体の概要、目的、訓練日ごとのカリキュラム、実施日時、場所が分かるもの)を確認する書類
(変更)
- 有期実習型訓練に係る訓練カリキュラム(様式変更)
(廃止)
- 有期実習型訓練に係る訓練計画予定表