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キャリアアップ助成金とは? コースごとの内容と支給条件・申請期限を解説

監修者:マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP  岡崎 壮史

キャリアアップ助成金とは? コースごとの内容と支給条件・申請期限を解説

さまざまな助成金の申請には、細かい支給要件があります。キャリアアップ助成金についても然り。経営者や人事担当者は、助成金を申請するにあたり、概要や支給要件、対象、申請手順などを知る必要があるでしょう。この記事では、キャリアアップ助成金のすべてを紹介します。

また、令和4年10月にキャリアアップ助成金の制度が一部変更となりました。見直しが行われたことで申請要件も変更になりますから、注意してください。これまで申請してきた企業もそうでない企業も、キャリアアップ助成金について再確認する機会となりますように。


キャリアアップ助成金とはなにか

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者や派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。

毎年、制度の適用条件などの改正が行われ、令和4年10月からは「正社員」と「有期雇用労働者」の定義の見直しが行われ、キャリアアップ助成金の申請要件のハードルが上がります。


キャリアアップ助成金の支給対象事業主の条件

支給対象事業主については、以下の要件を満たしている事業であることが前提となります。

  1. 雇用保険の適用事業であること
  2. 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を設置していること
  3. 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局に認定を受けた事業主であること
  4. 対象労働者に対する勤務状況や賃金の支払い状況などが分かる書類を整備し、賃金の算出方法が明確にすることができること
  5. キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいること

キャリアアップ助成金の6つの種類

キャリアアップ助成金には6つの種類(コース)があります。申請の金額や上限数はそれぞれ違います。各コースをみていきましょう。

1.正社員化コース

まずは、正社員化コースについて紹介します。転換パターンにより金額が異なりますので、注意が必要です。

概要:パート・アルバイトを正社員などに転換した時の助成金

正社員化コースは、パートやアルバイト(有期雇用労働者等といいます)を正社員に転換した場合、または直接雇用した場合に、その正社員に転換した人の数に応じて、助成金が支給されます。

毎年、申請できる人数は20名を上限としており、基本的に毎年申請することができる制度である点も大きな特徴といえます。

なお、これまでとは異なり、令和4年10月からは正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員に転換した場合も含む)以外の無期雇用社員(期間の定めのない雇用契約)への転換をした場合については、対象とはならなくなりますので、注意が必要です。

支給金額:転換パターンによって金額が異なる

現在、正社員化コースの対象となる転換のパターンは「有期雇用労働者(有期)→正規雇用労働者(正規)」と「無期雇用労働者(無期)→正規雇用労働者(正規)」の2とおりのみとなります。

  1. 有期→正規
    有期雇用労働者から正規雇用労働者へ雇用区分を転換することでキャリアアップを図る場合が対象となります。この場合は、1人あたり57万円(生産性の向上が認められる場合は72万円)が支給されます。
  2. 無期→正規
    無期雇用労働者から正規雇用労働者へ雇用区分を転換することでキャリアアップを図る場合が対象となります。この場合は、1人あたり28万5,000円(生産性の向上が認められる場合は36万円)が支給されます。

対象となる労働者:有期雇用労働者からの転換は雇用期間が3年以内に限る

キャリアアップ助成金の対象となる労働者の要件としては、以下の要件に該当する必要があります。

  1. 有期雇用労働者又は無期雇用労働者で一定の要件に該当する者
  2. 正規雇用労働者として雇用することを約して雇入れられた有期雇用労働者でないこと
  3. 転換又は直接雇用日の前日から過去3年以内に、正規雇用労働者として雇用されたことがないこと
  4. 事業主又は取締役の3親等以内の親族以外の者であること
  5. 支給申請日において、転換又は直接雇用の状態が続き、離職していないこと
  6. 定年までの期間が1年以上であるものなど

2.賃金規定等改定コース

次に、賃金規定等改定コースについてです。

概要:有期契約労働者の賃金増額によって昇給した時の助成金

賃金規定等改定コースは、すべてまたは一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給した場合に助成をする制度です。増額や昇給の割合に応じて、加算措置が行われます。なお、1年度1事業所あたり100人まで申請をすることができ、申請回数は年1回限りとなります。

支給金額:賃金の改定する人数によって異なる

支給金額は、対象となる有期労働者等の人数によって異なります

  • 1~5人の場合:1人あたり3万2,000円(生産性の向上が認められる場合は4万円)
  • 6人以上の場合:1人あたり2万8,500円(生産性の向上が認められる場合は3万6,000円)

なお、以下のいずれかに該当する場合は、上記の支給額に増額されます。

  • 中小企業において増額率が3%以上5%未満の場合:1人あたり1万4,250円(生産性の向上が認められる場合は1万8千円)
  • 中小企業において増額率が5%以上の場合:1人あたり2万3,750円(生産性の向上が認められる場合は3万円)

また、職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合についても、1事業所あたり19万円(生産性の向上が認められる場合は24万円)が支給されます。

職務評価の手法とは、職務の大きさ(職務内容や責任の程度など)を相対的に評価し、その職務に従事する労働者の待遇が現在の職務の大きさに応じているものであるかを把握することをいい、「要素別点数法」「単純比較法」「要素比較法」「分類法」があります。

対象となる労働者

賃金規定等改定コースの対象となる労働者は、以下のすべてに該当している必要があります。

  1. 就業規則又は労働協約に定めるところにより、その雇用するすべて、または一部の有期雇用労働者等に、適用される賃金に関する規定などを増額改定された日の前日から起算して3カ月以上前の日から増額改定後6カ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されているもの
  2. 増額改定前の基本給と比べて2%以上昇給しているもの
  3. 増額改定した日の前日から起算して3カ月前から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給等が減額されていない者
  4. 増額改定した日以降6カ月間、雇用保険の被保険者であること
  5. 事業主又は取締役の3親等内の親族でないこと
  6. 支給申請日において離職していないもの

3.賃金規定等共通化コース

では、賃金規定等共通化コースについてみていきましょう。

概要:職務等に応じた賃金規定等を作成・適応した時の助成金

賃金規定等共通化コースは、就業規則又は労働協約の定めるところにより、有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用をした場合に助成する制度です。

支給金額:1事務所あたりで定められている

賃金規定等共通化コースの支給額は、1事業所あたり57万円(生産性の向上が認められる場合は72万円)が支給されます。

ただし、1事業所あたり1回のみとされていますので、制度の導入のタイミングなどについて注意が必要となります。

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下のすべてに該当する者となります。

  1. 賃金に関する規定または、賃金テーブル等を共通化した日の前日から起算して3カ月以上前の日から、共通化後6カ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
  2. 正規雇用労働者と同一の区分に格付けされていること
  3. 賃金規定等を共通化した日以降の6カ月間、当該対象適用事業所において雇用保険の被保険者であること
  4. 賃金規定等を新たに作成し、適用した事業所の事業主または、取締役の3親等内の親族でないこと
  5. 支給申請日において離職していないこと

4.賞与・退職金制度導入コース(旧:諸手当制度共通化コース)

諸手当制度共通化コースは名称が変更となりました。詳しくみていきます。

概要:労働者に対して共通の諸手当制度を設置した時の助成金

諸手当制度共通化コースは、令和4年度より「賞与・退職金制度導入コース」と名称が改められた制度になります。

昨年度までは、賞与・家族手当・住宅手当・退職金・健康診断制度の5つの制度について、正社員と同一の額又は算定方法に制度を統一することが支給要件とされていました。

令和4年度からは、賞与・退職金の2つの制度に対象の諸手当の種類を限定し、非正規雇用労働者のみを制度の共通化(つまり、有期雇用労働者のみを対象とすることも可能)にすることで、支給を受けることができるようになりました。

支給金額:1事業所あたりで定められている

賞与・退職金導入コースは、1事業所あたり38万円(生産性の向上が認められる場合は48万円)が支給されます。

賞与と退職金制度を同時に導入をした場合については、上記の支給額に16万円(生産性の向上が認められる場合については19万2,000円)が加算される措置が行われます。

注意点としては、1事業所あたり1回限りとなっているため、加算措置を併せて受けたい場合は、導入する際に両方の制度を導入したうえ、支給申請を行う必要があるということです。

対象となる労働者

対象労働者は次のすべてに該当する労働者が対象となります。

  1. 賞与もしくは退職金制度または、両方の制度を新たに設けた日の前日から起算して3カ月以上前の日から新設日以降6カ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
  2. 賞与もしくは退職金制度または、両方の制度を新たに設け、初回の賞与または退職金の積み立てをした日以降の6カ月間、雇用保険の被保険者であること
  3. 事業主または取締役の3親等内の親族以外であること
  4. 支給申請日において離職していないこと

5.選択的適用拡大導入時処遇改善コース

選択的適応拡大導入時処遇改善コースについて、どのような制度なのかを紹介します。

概要:雇用する有期契約労働者を被保険者とし基本給を増額した時の助成金

労使合意に基づき、社会保険の適用拡大の措置を実施する事業主が、雇用する有期雇用労働者等に対して、社会保険の制度概要や加入メリットなどを説明・相談などを行うとともに、保険加入に関する意向確認を行うなど、有期雇用労働者等の意向を適切に把握し、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成する制度です。

なお、この制度は令和4年9月30日までの時限措置となります。

支給金額:1事業所あたりで定められている

支給額は、1事業所あたり19万円(生産性の向上が認められる場合は24万円)です。

なお、新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定割合以上増額した場合に、基本給の増額割合に応じて1人あたり1万9,000円(生産性の向上が認められる場合は2万4,000円)から13万2,000円(生産性の向上が認められる場合は16万6,000円)が加算されます。(支給申請上限は45人まで

また、措置を行った日以降に生産性の向上を図るための研修制度や評価の仕組みを行った場合は、1事業所あたり10万円(1回限定)が加算されます。

対象となる労働者

対象となる労働者は、次のすべてに該当する必要があります。

  1. 支給対象事業主に雇用される有期雇用労働者等
  2. 社会保険の適用拡大の措置を実施した日(措置該当日)の前日から起算して過去3カ 月以上の期間継続して有期雇用労働者として雇用されていた者
  3. 措置該当日の前日から起算して過去3カ月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であり、かつ、支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者
  4. 事業主又は取締役の3親等内の親族でないこと
  5. 支給申請日において離職していないこと

6.短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間延長コースについて、詳しく説明します。

概要:短時間労働者の週所定労働時間を延長し社会保険を適用した時の助成金

雇用する有期雇用労働者等について、週所定労働時間を3時間以上延長または、1時間以上3時間未満延長するとともに処遇の改善を図り、当該措置により有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした場合に助成する制度です。

社会保険適用を受けることのできる労働条件の確保を通じた、短時間労働者のキャリアアップを目的としています。

支給金額:延長時間によって定められている

支給金額は、週所定労働時間の延長を行い、新たに社会保険に適用させた場合に1人あたり22万5,000円(生産性の向上が認められる場合は28万4,000円)が支給されます。なお、令和6年9月30日までの期間については、上記の支給額が増額された金額となります。

また、労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長するとともに、基本給を昇給し、新たに社会保険の適用をさせた場合は、以下のような増額が行われます(1年度1事業あたり支給申請上限人数は45名まで)。

  • 1時間以上2時間未満
    1人あたり5万5,000円(生産性の向上が認められる場合は7万円)
  • 2時間以上3時間未満
    1人あたり11万円(生産性の向上が認められる場合は14万円)

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下のすべてに該当している必要があります。

  1. 週所定労働時間を延長した後、6カ月以上の期間継続して支給対象事業主に雇用され る有期雇用労働者等であること
  2. 次のいずれかに該当すること
    (1)3時間以上延長した日の前日から起算し、過去6カ月以上の期間有期雇用労働者として雇用されたこと
    (2)1時間以上2時間未満延長した日の前日から起算し、過去6カ月以上の期間有期雇用労働者として雇用されたもので、かつ、延長後の基本給が延長前の基本給と比べ10%以上昇給していること
    (3)2時間以上3時間未満延長した日の前日から起算し、過去6カ月以上の期間有期雇用労働者として雇用されたもので、かつ、延長後の基本給が延長前の基本給と比べ6%以上昇給していること
  3. 延長した日の前日から起算して過去6カ月間、社会保険の適用要件を満たしておらず、かつ、支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していないこと
  4. 事業主または取締役の3親等内の親族でないこと
  5. 支給申請日において離職していないこと

キャリアアップ助成金の申請手順

キャリアアップ助成金は、「キャリアアップ計画書の作成・提出」をしたうえで、その計画書に沿ったキャリアアップ計画を実施する必要があります。

計画書に沿ったキャリアアップ計画を実施した後、6カ月目の給与等の支払日の翌日から2カ月以内に「支給申請書」に必要書類(賃金台帳やタイムカードの記録など)を添付して、会社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出しなければなりません。

支給申請書の提出後、支給申請書の内容を審査して、問題がなければ「支給決定通知書」が申請をした会社に対して郵送され、支給決定通知書がきてから「およそ2カ月以内(状況によっては期間が延びることがある)」に、指定された振込口座へ助成金が入金されます。


キャリアアップ助成金はいつもらえるのか

キャリアアップ助成金は、その企業が計画書を提出するところから始まります。申請の期間と期限など、全体像を知っておきましょう。

申請期間・申請期限

キャリアアップ助成金の支給申請期間は、各コースごとに定められたキャリアアップ計画を実施した日から「6カ月目の給与等の支払日の翌日から起算して2カ月以内」に行わなければなりません。

また、キャリアアップ計画書の提出・受理が完了する前にキャリアアップ計画の内容を実施すると、支給申請の対象から除外されます。必ず、キャリアアップ計画書の提出をしたうえで、各種コースに対応したキャリアアップ措置を実施するようにしましょう。

助成金の支給時期

キャリアアップ助成金の支給申請を行ってから、支給されるまでの期間は各都道府県労働局の状況にもよりますが、およそ1~2カ月です。

支給申請書を提出し、支給申請書の内容の審査が行われ、支給決定通知書が発送され、助成金が入金されるという一連の流れで行われているため、支給されるまでの期間にタイムラグが生じることも多々あります。

また、支給申請書の提出の時点で書類の不備などの指摘を受けることも多いため、さらに支給までの期間が延びてしまうこともあります。

全体の期間としては、計画書の提出から助成金の入金までに「最低でも1年~1年半以上」は必要であると認識したうえで、計画を進めていくことが大切です。

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金パンフレット


キャリアアップ制度についてのまとめ

キャリアップ制度のなかでも、キャリアアップ助成金についてお伝えしました。

まとめると、

  • キャリアアップ制度には全部で6つのコースがある
  • 令和4年10月に制度の一部が改正され、申請のハードルが上がった
  • キャリアアップ制度は、計画書を提出してから助成金の入金までには1年~1年半かかる

以上です。

企業のキャリアアップは、さまざまな角度からチャレンジすることができます。

キャリアアップ助成金も一つの手立てとなりますから、ぜひ前向きに検討してみてください。

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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業として、生命保険や個人年金といった資産運用などに関する業務を担当する。

平成26年9月に1級FP技能士の資格を取得。その後、平成27年11月にFPの国際ライセンスであるCFPを取得。資格取得後は、保険や個人年金以外の様々な金融資産の運用や活用についてのセミナーや金融関係のサイトへの執筆・記事監修などを行う。

平成29年9月にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金を活用した企業の労務環境改善コンサルタントとして、労働者・事業主に対して職場環境の改善に向けた企業研修や助成金活用セミナーと保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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