休業手当がもらえなかった労働者への支援制度が創設されました!
コロナ禍における経済的な不安を軽減する制度が創設されました。休業を余儀なくされた労働者に直接お金が振り込まれる新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金です。
4月から5月にかけての緊急事態宣言下、4月の休業者は過去最多の597万人、5月の休業者は423万人を記録しましたが、休業期間中、すべての労働者に休業手当が支払われたわけではありません。収入が激減、または全く無くなった方もいると思われます。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、そうした労働者を支援するための制度です。すでに7月10日から受付が開始されています。
今回は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金をご紹介しましょう。
休業と休業手当の関係は?
まずは休業と休業手当に関し、法律ではどうなっているのかを確認しておきます。
【休業手当】
労働基準法第26条により、会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、会社は平均賃金の6割以上の休業手当を労働者に支払わなければなりません
ただし、不可抗力による休業の場合は、会社に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
という2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
厚生労働省では、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法による対応が取られる中で、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません」としており、緊急事態宣言下において行われた休業であっても休業手当の支払い義務がありうるとしています。
しかし、休業手当の支払い義務があると判断されるような休業であっても、現実問題として、必ずしもすべての企業が休業手当を支払っているわけではありません。そこで、こうした企業に雇用される労働者に救いの手が差し伸べられました。
労働者が直接申請できる制度の創設
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、事業主の指示により休業しているものの、賃金や休業手当を受け取ることができない労働者の生活を支援するため、労働者が直接申請することが可能な制度として創設されたものです。
【新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金制度】
新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、中小事業主に雇用される労働者が事業主の指示により休業し、休業中に休業手当を受けることができない場合に休業前賃金の8割(日額上限11,000円)を支給するもの
対象となる労働者は、令和2年4月1日から同年9月30日までの間、事業主の指示により休業し、当該休業に対して休業手当が受けられない中小事業主に雇用される労働者です。ここでポイントとなるのは、「中小事業主に雇用される」という部分です。
中小事業主に該当するのは、休業開始時点で、原則として、下記の「資本金の額・出資の総額」か「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす企業です。
産業分類 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
これらに当てはまらない大企業に雇用される労働者は対象外です。
気になる給付額は?
この支援制度に関し一番気になるのは、実際にもらえる金額ではないでしょうか。
給付額の計算は次の通りです。
給付額 = 休業前賃金日額の8割(上限11,000円) × 休業期間の日数
休業前賃金日額は、原則として、過去6か月のうち任意の3か月分の賃金を90で除して算定します。「任意の3か月分」ですから、賃金が高かった月を3月選べば休業前賃金日額が高くなりますので、給付額も高くなります。
【計算例】
・4月10日から休業開始
・賃金:3月、1月、12月を選択
3月 | 2月 | 1月 | 12月 | 11月 | 10月 |
30万円 | 25万円 | 28万円 | 26万円 | 25万円 | 25万円 |
・休業前賃金日額:9,333円
(30万円 + 28万円 + 26万円) ÷ 90 = 9,333円
・1日あたりの給付額:7,466円
9,333円 × 0.8 = 7,466円
この1日あたりの給付額7,466円に休業期間の日数をかけた金額が給付額です。例えば、5月1日~5月31日まで休業したとすると、支給額は「7,466円 × 31日 = 231,446円」です。
ちなみに、賃金とは月ごとの給与の総支給額をいいますから、残業手当などの諸手当を含み、税金や健康保険料、厚生年金保険料などを差し引く前の金額となります。いわゆる額面金額です。
申請方法の確認を
当面、郵送のみでの受付です(7月10日から受付中)。オンライン申請は準備中とのことです。迅速な支給や、感染予防・3密回避等の観点から、窓口での申請はできません。
申請に必要な支援金・給付金の支給申請書と支給要件確認書(事業主の証明が必要)は、厚生労働省ホームページからダウンロードできます。その他必要な書類は次の通りです。
初回申請時 | ① 運転免許証等の本人確認書類の写し ② 振込先口座を確認できるキャッシュカードや通帳の写し ③ 休業前および休業中の賃金額が確認できる給与明細・賃金台帳などの写し |
2回目以降の申請時 | ① 運転免許証等の本人確認書類の写し(前回申請時から変更がある場合) ② 振込先口座を確認できるキャッシュカードや通帳の写し(前回申請時から変更がある場合) ③ 休業中の賃金額が確認できる給与明細・賃金台帳などの写し ④ 前回申請時の支給・不支給決定通知書(通知書のキリトリ線から下の部分を切り取り、支給申請書の該当箇所に貼り付ける) |
支給申請の締切日も把握しておきましょう。
休業した期間 | 締切日(郵送の場合は必着) |
令和2年4月~6月 | 令和2年9月30日(水) |
令和2年7月 | 令和2年10月31日(土) |
令和2年8月 | 令和2年11月30日(月) |
令和2年9月 | 令和2年12月31日(木) |
注意点をいくつか
休業期間中、会社からいくらかでも休業手当が支払われている場合は、支援金・給付金の対象にはなりません。法律上の休業手当は平均賃金の6割以上と定められていますが、例えば、平均賃金の3割が休業手当として支払われたとしても対象外となり、支援金・給付金はもらえません。
次に、事業主が休業証明に協力してくれない場合。
この場合でも、個人からの申請は可能です。支給要件確認書の事業主記入欄に、事業主の協力が得られない旨をその背景となる事情とともに記載してください。なお、事業主の協力がない場合には、労働局から事業主に対して報告を求めますが、事業主から回答があるまでは審査ができません。よって、支給までに時間がかかります。
複数の事業所で働いている場合も注意が必要です。
この場合、複数事業所の休業について、支援金・給付金の申請が可能です。ただし、申請時に複数事業所分をまとめて申請する必要があります。別々に申請はできませんので気を付けましょう。あとから申請した分は無効となります。なお、支給申請書は複数事業所申請用を使ってください。この申請様式も厚生労働省ホームページからダウンロードできます。
新型コロナウイルス感染者数が各地で拡大しています。再び休業を余儀なくされる事態も考えられますから、新たに創設された新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金についてはぜひ知っておきましょう。
※本内容は、令和2年8月6日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター(0120-221-276)に確認をお願いいたします。