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助成金を活用して中途採用者の戦力化を考えよう!

助成金を活用して中途採用者の戦力化を考えよう!

人生100年時代を迎えました。平均寿命が延びるとともに働く期間も長くなると予想されています。少子高齢化による労働力不足が懸念される中、様々な知識や経験を持った人材を確保し、事業を継続していくには、働く人々を生かす組織でなければなりません。

働く意欲がある労働者がその能力を十分に発揮できるよう、また、働き手の多様なキャリア形成に資するよう、従来とは異なる雇用制度が企業に求められています。その1つが、伝統的な新卒一括採用を見直し、通年採用による中途採用・経験者採用の拡大を図ること。

令和3年4月、一定規模以上の企業に中途採用比率の公表義務が発生します。社会的に中途採用への関心が高まるかもしれません。

今回は、中途採用の拡大を図った場合にもらえる助成金をご紹介します。


中途採用の状況は?

厚生労働省「中途採用に係る現状等について」(令和元年9月27日)から、中途採用の状況をみてみると、2018年の入職者数は約767万人で、転職入職者は約496万人となっています。企業規模別に中途採用割合をみてみると、規模が大きい企業ほど中途採用比率が低いことが分かります。

【新卒・中途採用の比率】

新卒採用比率
(2018年卒)
中途採用比率
(2017年度)
全体 34.7% 65.3%
規模別 5~299人 23.3% 76.7%
300~999人 58.5% 41.5%
1,000~4,999人 59.6% 40.4%
5,000人以上 62.6% 37.4%

参考:厚生労働省「中途採用に係る現状等について」

こうした状況の中、労働者数が300人を超える企業に対し、中途採用比率の公表が義務づけられました。令和3年4月1日以降、「おおむね年に1回以上、直近3事業年度分の実績について、公表した日を明らかにしてインターネット等求職者が容易に閲覧できる手段を用いて公表するもの」としています。

中途採用の拡大と助成金

来年度から始まる中途採用比率の公表義務化を控え、国では、中途採用の拡大等を図った場合の助成制度を設けています。

【助成金の種類】

中途採用等支援助成金
(中途採用拡大コース)
中途採用を拡大(中途採用率の拡大又は45歳以上を初めて雇用)する事業主への支援
中途採用等支援助成金
(UIJターンコース)
東京圏からの移住者を雇い入れる事業主への支援
中途採用等支援助成金
(生涯現役起業支援コース)
中高年齢者等(40歳以上)が自ら起業し、中高年齢者等を雇い入れた場合の支援

ここでは中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)を中心にみてみましょう。
本助成金は、これまで学卒採用中心であった企業が、①中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用を拡大した場合に助成金がもらえ、その後、②生産性が向上した場合には追加で助成金がもらえるものです。

①中途採用拡大助成 中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大(中途採用率の拡大または45歳以上の方の初採用)を図る事業主に対する助成
②生産性向上助成 中途採用拡大助成の支給を受けた事業主のうち、一定期間経過後に生産性が向上した事業主に対する助成

①の中途採用拡大には、「中途採用率の拡大」と「45歳以上の方の初採用」の2つが含まれます。先の「中途採用に係る現状等について」から「中途採用の年齢別の採用方針」をみてみると、対象者が「35歳未満」の場合には約95%の企業が採用に積極的である一方、年齢層が高くなるにつれ採用の積極性は弱まり、「45歳以上」では「あまり採用は考えていない」が最多となっています。

「45歳以上の方の初採用」が助成の対象となっていることから、中途採用率の拡大のみならず、45歳以上の中途採用を増やすことも大きな課題であることが分かります。

②の生産性向上への助成は、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図るには、労働生産性を高めていくことが不可欠ですから、生産性を向上させた場合には追加で支援を行うというものです。

受給の流れと受給額

本助成金の受給の流れは次の通りです。

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の受給の流れ

気になる受給額をみてみましょう。

【中途採用拡大助成】

実施区分 助成額
中途採用率の拡大 20ポイント以上向上 40ポイント以上向上
1事業所あたり50万円 1事業所あたり70万円
これまで中途採用を行ったことがない場合は、上記に加えて1事業所あたり10万円
45歳以上の方の
初採用
1事業所あたり60万円または70万円(※)

※支給申請日において継続して雇用されている支給対象者の中に、雇入れ時の年齢が60歳以上であって、かつ雇入れ日から6か月以上経過している方がいる場合に70万円

【生産性向上助成】

実施区分 助成額
中途採用率の拡大 1事業所あたり25万円
45歳以上の方の初採用 1事業所あたり30万円

受給の要件は?

助成金の受給には、最初に次の要件を満たす中途採用計画を策定しなければなりません。

【中途採用計画】

中途採用者の雇用管理制度を整備するものであり、中途採用者に適用される募集・採用以外の雇用管理制度が、新規学卒者等に適用されるものと同じであること
中途採用計画期間内の中途採用の拡大について計画していること

アの雇用管理制度とは、募集・採用を除く、労働時間・休日、雇用契約期間、評価・処遇制度(人事評価、賃金、昇格、異動、転勤等の仕組み)、福利厚生などを指します。

イの計画では、採用予定職種、採用予定者数、採用予定時期、採用目的、配置予定部署・役職、採用時の評価方法、採用後のモデルキャリアを定めることが必要です。

その他、主な要件をみておきます。

中途採用率の拡大
  • ・中途採用計画が1年間であること。ただし、目標達成が困難と見込まれる場合は2年または3年に延長が可能
  • ・中途採用計画期間中に、支給対象者を2人以上雇い入れること
  • ・計画期間中の中途採用率から、計画開始日の前日から過去3年間の中途採用率を減じた値を20ポイント以上とすること
  • ・支給対象者のうち、雇入れ日から起算して6か月を経過する日までに離職した方の割合が20%未満であること
45歳以上の方の初採用
  • ・中途採用計画が1年以下で、事業主が定める期間であること
  • ・計画期間中に、支給対象者を1人以上雇い入れること
  • ・支給申請日時点で、雇入れ日から起算して6か月を経過し継続して雇用されている支給対象者が1人以上いること

対象となる労働者も確認しておきましょう。

申請事業主に中途採用により雇い入れられた者であること
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられた者であること
期間の定めのない労働者(パートタイム労働者を除く)として雇い入れられた者であること
雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、雇用関係、出向、派遣又は請負により当該事業主の事業所において就労したことのない者であること
雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、申請事業主と資本的・経済的・組織的関連性から見て密接な関係にある事業主に雇用されていた者でないこと

「45歳以上の方の初採用」の場合には、「⑥ 雇入れ時の年齢が45歳以上であること」が加わります。

追加で受給できる生産性向上については、「計画期間の初日が属する会計年度の前年度とその3年度後における生産性を比較し、3年度後の生産性が6%以上伸びていること」となっています。

生産性を算定するための「生産性要件算定シート」が厚生労働省ホームページに掲載されていますので、ダウンロードしてご利用ください。該当する勘定科目の額を損益計算書や総勘定科目の各項目から転記することにより生産性を算定することできます。

助成金は、国の政策に沿った取組を行う企業を支援する制度ですから、その内容から国の方向性がうかがえます。中途採用を積極的に行い、中途採用者を戦力化して、生産性の向上を図ることが企業には求められています。

一方で、転職希望者が新しい職場を探す際には、自らの能力を十分に発揮できる環境を望むことでしょう。来年度から公表される中途採用比率も検討材料の1つになると思われます。
ぜひ大きな観点から、今後の中途採用のあり方を考えていただければと思います。

※本内容は、令和2年8月13日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局に確認をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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