高年齢者が安全に安心して働ける職場環境整備を促進し、労働災害の防止と新型コロナウイルス感染防止にも資する「エイジフレンドリー補助金」
定年後も働くことを希望し就労する方が増え、それに伴い高齢者の労働災害(いわゆる労災)が増えています。
働く高齢者が安心して安全に働けるように、高齢者にとって危険な場所や負担の大きい作業を解消し、働きやすい職場環境を作っていくことが求められています。新型コロナウイルス感染を防止するため、対人業務を簡素化できる設備改善や作業改善についても、補助の対象となることがあります。
エイジフレンドリー補助金は、高年齢者の職場環境改善に要した費用の一部を補助しています。交付申請期間は令和2年10月末日です。まだ申請できる期間にありますので、要件を満たす事業者の方は、申請を検討してはいかがでしょうか。
このコラムでは、その要件などを見ていきましょう。
対象となる事業者
次の(1)から(3)すべてに該当することが必要です。
(1)高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用していること
常時雇用とは、期間の定めなく雇用されている従業員はもちろん、期間の定めのある従業員でも1年以上引き続いて雇用されている者、更新が予定されていて1年以上働くことが見込まれる者も入ります。
(2)労働保険及び社会保険に加入していること
(3)次のいずれかに該当する中小企業事業者であること
業種 | 常時使用する労働者数 | 資本金又は出資の総額 | |
小売業 | 小売業、飲食店、持ち帰り配達飲食サービス業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 医療・福祉、宿泊業、娯楽業、教育・学習支援業、情報サービス業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業等 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
卸売業 | 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
その他の業種 | 製造業、建設業、運輸業、農業、林業、漁業、金融業、保険業等 | 300人以下 | 3億円以下 |
※労働者数若しくは資本金等のどちらか一方の条件を満たせば中小企業事業者です。
補助金額
補助率:1/2
上限額:100万円(消費税を含む)
補助対象
補助の対象は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費です。ただし、事業場規模、高年齢労働者の雇用状況等を審査の上、交付決定がなされるとされ、申請者すべての事業者に補助されるわけではありません。
補助対象となる費用は、職場環境の改善対策として次のような対策に要したものです。この中には、新型コロナウイルス感染症防止として、利用者や同僚との接触を減らす対策も含まれます。
- ① 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- ② 働く高齢者の健康や体力の状況の把握等
- ③ 安全衛生教育
- ④ その他、働く高齢者のための職場環境の改善対策
具体的対策として、例えば「介護におけるリフト、スライディングシート等の導入」、「通路の段差の解消(スロープの設置等)」等が実施計画として提出する「様式1(別紙)」に挙げられています。これらに該当する対策はもちろんですが、働く高齢者の職場環境改善に資するものであれば対象となる可能性があります。
申請フロー
この補助金は、(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会が補助事業の実施事業者となっており、中小事業者からの申請を受け、審査等を行い、補助金の交付決定と支払いを実施しています。交付申請と支給申請で送付先が違いますので要注意です。
エイジフレンドリー補助金補助金のフローは次の通りです。まずは一つ目の交付申請書を提出し、補助金が受けられるかどうかの審査を受けることから始まります。
※「中小企業事業主」と書かれた部分の審査を行います。
交付申請審査等における評価項目
交付申請審査には、「必須項目」が6つ、「加点項目」が4つ定められています。
≪必須項目≫
- ① 実施する対策が高年齢労働者の安全衛生確保に寄与すると認められること
- ② 事業場の担当者、担当部署の体制を整備していること
- ③ 事業場において、措置を講じる計画を立てていること
- ④ 研修等の有形でない対策については、次年度以降の実施計画が含まれていること
- ⑤ 60歳以上の高年齢労働者を常時1名以上雇用する者であること。また3か月以内に雇用しようとするものとして申請したものについては、雇用計画を策定していること。
- ⑥ 過去1年以内に死亡災害又は社会的な問題となった労働災害を発生させていないこと
≪加点項目≫
- ① 実施する対策の取り組み内容がより効果的、積極的と考えられること
- ② 安全管理者又は衛生管理者の選任義務のない事業場において、有資格者を選任していること
- ③ 高年齢労働者を多く雇用していること
- ④ 労働安全衛生マネジメントシステムに取り組んでいること
提出書類
申請書類はエイジフレンドリー補助金事務センターのHPからダウンロードできます。
≪交付申請時≫
- (1)「令和2年度エイジフレンドリー間接補助金交付申請書」(様式1、様式1(別紙))
- (2)「誓約及び申立書」(様式1-1)
≪実績報告書・精算払い請求時≫
- (1)「令和2年度エイジフレンドリー間接補助金実績報告書及び精算払請求書」(様式3)
- (2)「取得財産等管理台帳」(申請者保管用)(様式2-1)
提出先・問い合わせ先
≪交付申請時≫
申請書(様式1関係)送付先・問い合わせ先
〒105-0014
東京都港区芝1-4-10 トイヤビル5階
エイジフレンドリー補助金事務センター
電話:03-6381-7507 FAX:03-6381-7508
Mail:af-hojyojimucenter@jashcon.or.jp
≪実績報告書・精算払い請求時≫
請求書(様式3)送付先・問い合わせ先
〒108-0014 東京都港区芝4-4-5 三田労働基準協会ビル5階
(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会内
電話:03-6809-4085 FAX:03-6809-4086
申請にあたっての注意点
(1)補助金の交付要綱、実施要領、交付規程をよく読んで、補助金の趣旨を理解した上で申請することが求められています。
(2)偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた場合、交付決定の内容や付された条件に違反した場合は、補助金の返還を求められることがあります。
(3)交付決定を一度受けられなかった案件でも、内容を再検討の上、申請期間中に再度の申請が可能です。
(4)交付決定額が予算額に達した場合には、申請期間中であっても受付が締め切られます。
その他
日頃から安全衛生に関する事項に取り組んでいる業種や事業場であれば、取り組む方向が見つけやすいかと思いますが、これまであまり取り組んだことがないという事業場では、管理体制や年間計画と聞いても、難しいと感じてしまうかもしれません。そんなときの参考資料や支援がありますので、ぜひご活用ください。
(1)「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)
事業者と労働者に求められる取り組みが示されていますので、自社で取り組めるものがないか見てみましょう。
(2)他社における好事例
① 厚⽣労働省ホームページ
(先進企業)
(製造業)
② 独⽴⾏政法⼈⾼齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページ
(3)高齢者のための対策についての個別相談
労働災害防止団体が中小規模事業場に対して、安全衛生に関する知識・経験豊富な専門職員を派遣して、高年齢労働者対策含めた安全衛生活動支援(現場確認・ヒアリング・アドバイス)をしています。
(4)65歳超雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザー制度
中小企業診断士、社会保険労務士等、高齢者の雇用に関する専門的知識や経験などを持っている外部の専門家が、企業の高齢者雇用促進に向けた取り組みを支援しています。