65歳以上の離職者を雇用する事業主をサポートする「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」
定年後も働くことを希望し、生涯現役と考える人も増えています。そのような65歳以上で新たな就職先を探す人を雇用する事業主をサポートするのが、「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」です。
雇入れ日の満年齢が65歳以上の離職者を、ハローワーク等の紹介により、1年以上継続して雇用することが確実な雇用保険の被保険者として雇い入れる事業主に対して支給されます。
この助成金は、支給申請の流れは助成金の中では難しくないと思いますが、要件が細かく定められています。要件を満たしているかの確認が要注意です。まずは、簡単なところから見ていきましょう。
なお、ご案内します情報は令和元年10月時点のものですので、実際に支給申請などを検討される場合には、ハローワークなどに確認ください。
助成額
対象労働者に支払われた賃金の一部に相当する額として、以下の表の金額が6か月毎に2回に分けて支給されます。この6か月毎を「支給対象期」といいます。
対象労働者の一週間の所定労働時間 | 支給合計額 | 支給対象期ごとの支給額 |
30時間以上 (短時間労働者以外) |
70(60)万円 | 35(30)万円×2期 |
20時間以上30時間未満 (短時間労働者) |
50(40)万円 | 25(20)万円×2期 |
※( )内は中小企業以外の企業に対する支給額
「中小企業」とは、業種ごとに次のいずれかに該当するものをいいます。
資本金又は労働者数のどちらかの条件を満たせば中小企業です。
業種 | 出資金又は出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
支給申請の流れ
助成金の支給申請の流れは次のとおりです。先に計画等の提出は必要とされていませんので、助成金の支給申請としては難しくありません。
① ハローワーク等からの紹介
現在失業中の人を、ハローワークの他、地方運輸局、適正な運用ができる特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者又は無料船員職業紹介事業者から65歳以上の求職者の紹介を受けます。
② 対象者の雇入れ
紹介を受けた労働者を雇い入れます。
③ 第1期助成金支給申請 ※
支給申請期間の間に申請書を提出します。
④ ハローワークによる支給申請書の内容の調査・確認 ※
ハローワークによって支給申請書に関する調査、確認が行われます。
⑤ 支給・不支給決定 ※
④の調査、確認により、支給若しくは不支給決定がなされ、申請事業主には通知書が送付されます。
⑥ 助成金の支給 ※
支給決定がなされてからある程度の時間がかかるとされていますが、指定した口座に振り込まれます。
※第2期の支給申請も③~⑥同様の手続きが必要です。
支給申請の手続き
- (1) 助成金は、支給対象期6か月毎に2回に分けて申請し、支給されます。
- (2) 支給申請先は、労働局又はハローワークです。
- (3) 支給対象期は、起算日から6か月間ごとに区切った期間です。起算日が賃金の締め日の有無、雇入れ日によって違いますので、支給対象期は最初に必ず確認してください。
- (4) 6か月毎の支給申請期間は、一支給対象期の次の日から2か月です。
- (5) 支給申請用紙は次のULRからダウンロードできます。
- 参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金対象労働者雇入登録票」
- 参照:厚生労働省「雇用関係助成金に共通の要件等(雇用関係助成金共通支給申請用紙)」
各種要件
支給申請をする前に確認しなければならい事項、この部分がこの助成金の重要ポイントです。「対象労働者」「受給できる事業主」「受給するための要件」があります。
(1)対象労働者
次の両方の要件に該当する労働者であることが必要です。
- ① 雇入れ日現在満年齢が65歳以上の人
- ② 紹介日に雇用保険の被保険者でない人(1週間の所定労働時間が20時間以上であるなど、失業状態にない場合を含む)
(2)受給できる事業主
全部で8の要件があり、そのすべてに該当する事業主であることが必要です。6つのみここではご案内します。
- ① 雇用保険の適用事業主であること
- ② 対象労働者をハローワーク、地方運輸局、適正な運用ができる特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者又は無料船員職業紹介事業者の紹介により、雇用保険の「高年齢被保険者」として雇い入れる事業主であること。(65歳以上の労働者を雇用保険に加入させると、雇用保険上高年齢被保険者となります)
- ③ 対象労働者を1年以上継続して雇用(期間の定めのない雇用又は1年以上の契約期間の雇用)することが確実であると認められる事業主であること
- ④ 対象労働者の雇入れ日の前後6か月間(以下「基準期間」という)に事業主の都合による従業員の解雇(退職勧奨を含む)をしていないこと
- ⑤ 対象労働者の雇入れ日よりも前に特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)の支給決定の対象となった者を、支給申請日の前日から過去3年間に、その助成対象期間中に事業主の都合による解雇・雇止め等をしていないこと(平成30年10月1日以降の解雇・雇止めに限る)
- ⑥ 基準期間に倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が対象労働者の雇入れ日における被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合を除く)
(3)受給するための要件
全部で19の要件があり、そのいずれにも該当しないことが必要です。7つのみここではご紹介します。
- ① ハローワーク等の紹介以前に雇用の予約があった対象労働者を雇い入れる場合
- ② 支給対象期間の途中で対象労働者が離職した場合(対象労働者の責めに帰すべき理由による解雇などは除く)
- ③ 雇入れ日の前日から過去3年間に、当該雇入れにかかる事業所と雇用、請負、委任の関係にあった者、又は出向、派遣、請負、委任の関係により当該雇入れにかかる事業所において就労したことのある者を雇い入れる場合
- ④ 雇入れ日の前日から過去3年間に、対象労働者と雇用、請負、委任の関係にあった事業主、出向、派遣、請負、委任の関係により対象労働者を事業所において就労させたことがある事業主、対象労働者が通算して3か月を超えて受講等したことがある訓練・実習等を行っていた事業主と、資本的・経済的・組織的関連性等から見て密接な関係にある事業主が当該対象労働者を雇い入れる場合
- ⑤ 対象労働者が、雇入れ事業主の事業所の代表者又は取締役の3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族及び姻族)である場合
- ⑥ 支給対象期間における対象労働者の労働に対する賃金を、支払期日を超えて支払っていない場合(時間外手当、休日出勤手当など基本給以外の手当等を支払っていない場合を含む)
- ⑦ ハローワーク等の紹介時点と異なる条件で雇い入れた場合で、対象労働者に対し労働条件に関する不利益、又は違法行為があり、かつ、当該対象労働者から求人条件が異なることについての申出があった場合
要件は、労働者を不用意に解雇していないか、法違反がないか、対象労働者が以前から何らかの関係が有るか等助成金支給対象として適切かどうかを問うています。この助成金は数年に渡って改正を重ねて今に至ります。これらの要件はこれまでにあった不正が反映されているとも言えますので、判断に迷う場合には必ずハローワーク等にご確認ください。また、雇用関係助成金に共通の要件もありますので併せてご確認ください。