急ごう!!! 中小企業が生産性を向上させるための設備投資等の取組を支援する助成金!(業務改善助成金)
人口減少に伴う人手不足が問題に取り上げられ、生産性向上が語られる場面が増えて暫くたちます。現在はコロナ禍にあり、これまでと少し意味合いが違っているかもしれません。しかし、生産性を高めていくことは、企業にとって必要不可欠なことであることに変わりはないのではないでしょうか。生産性を向上させるため設備を導入したい、取り換えたいなどと検討している中小企業もあるかと思います。
この度ご紹介する業務改善助成金は、賃金の引き上げを行うことを目指して、生産性向上、労働能率の増進を図るために設備投資等を行う中小企業に対し、その設備投資等に要した費用の一部を助成するするものです。
賃金の引き上げとは、具体的には事業場内で最も低い賃金を引き上げることであり、就業規則その他これに準ずるものに当該引き上げ後の賃金額を下限とする旨の定めをすることも求められています。また、引き上げた賃金額に応じて助成上限額が変わる仕組みになっています。概要を見ていきましょう。
ただし、この助成金の交付申請書(下記流れの①)の提出期限が令和3年1月29日(金)です。時間がありません。申請を考えている場合には、急ぎ取り掛かるようにお願いします。
【1】助成金申請の流れ
助成金申請には大きく分けて3段階あり、それぞれ2つの事項が含まれます。下記①において提出する計画が認められなければ次には繋がりません。まずは計画をしっかり立てていくことが重要です。
①-1. 業務改善計画(設備投資などの実施計画)と賃金引き上げ計画(事業場内最低賃金の引き上げ計画を記載した交付申請書を作成し、添付書類と共に都道府県労働局に提出します。
①-2. 都道府県労働局において、交付申請書の審査(書類審査、必要に応じて現地調査あり)が行われ、内容が適正と認められた場合に交付決定通知が出されます。
②-1. 業務改善計画に基づき設備投資等を行い、賃金引き上げ計画に基づき事業場内最低賃金の引き上げを行います。
②-2. 業務改善計画の実施結果と賃金引き上げ状況を記載した「事業実績報告書」を作成し、都道府県労働局に提出します。
③-1. 都道府県労働局において、事業実績報告書の審査(書類審査、必要に応じて現地調査あり)が行われ、内容が適正と認められた場合に助成金額が確定され、事業主に通知されます。
③-2. 助成額金額の確定通知を受けた事業主は、支払請求書を提出し支給を受けます。
【2】生産性向上に資する設備・機器等の導入
生産性向上に資する設備・機器導入として以下の費用等が挙げられています。
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング費、委託費
ただし、パソコン等の汎用性事務機器購入、セキュリティ対策費などの通常の業務活動の経費は認められません。また、職場環境改善のための経費や単なる経費削減のための経費は除くとされています。助成対象とされる設備・機器等の導入に当たるかどうか不明な場合には、問い合わせ先に確認することをお勧めします。
導入の例としては次のようなものがあります。
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
【3】支給要件
助成金の支給には以下の要件が挙げられています。
① 賃金引き上げ計画を作成すること
就業規則等に事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる旨規定すること
② 引き上げ後の賃金額を支払うこと
③ 生産性向上に資する機器・設備を導入する等により業務改善を行い、その費用を支払うこと
④ 解雇、退職勧奨・希望退職等による退職、賃金の引き下げ、労働条件変更による月当たりの賃金額減少、労働関係法令に違反していることが明らかとなるなど、不交付事由に該当しないこと
当該支給要件の不交付事由に該当するかどうかを見る期間は、【1】①-1にある交付申請書の提出日の前日から起算して3か月前の日から、助成金支給額の決定通知を受け支払い請求手続きを行った日【1】③-2の前日、または賃金額を引き上げてから6か月を経過した日のいずれか遅い日までの間となっています。細かい要件が他にもありますので、交付申請前に必ずご確認ください。
【4】賃金の引き上げ金額、助成上限額、助成率等
コース区分 | 引き上げ額 | 引き上げる 労働者数 |
助成上限額 | 助成対象事業場 | 助成率 |
---|---|---|---|---|---|
25円コース | 25円以上 | 1人 | 25万円 | 以下の2つの要件を満たす事業場 ①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内 ②事業場規模100人以下 |
事業場内最低賃金850円未満 4/5(※1) |
2~3人 | 40万円 | ||||
4~6人 | 60万円 | ||||
7人以上 | 80万円 | ||||
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 事業場内最低賃金850円未満 4/5(※1) 事業場内最低賃金850円以上 3/4 |
|
2~3人 | 50万円 | ||||
4~6人 | 70万円 | ||||
7人以上 | 100万円 | ||||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | ||
2~3人 | 90万円 | ||||
4~6人 | 150万円 | ||||
7人以上 | 230万円 | ||||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | ||
2~3人 | 150万円 | ||||
4~6人 | 270万円 | ||||
7人以上 | 450万円 |
※1 事業場内最低賃金850円未満が対象となるのは、地域別最低賃金額が850円未満の地域であり、かつ事業場内最低賃金額が850円未満の事業場に限られます。
東京など地域別最低賃額が850円以上の地域においては、30円コース以外のコースを選択することになります。
≪生産性向上による助成率アップ≫
企業の決算書類から算出した労働者一人当たりの付加価値を生産性といい、助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に事業場内最低賃金額によって次の率となります。
事業場内最低賃金額による助成率表
850円未満の事業場 | 9/10 |
850円以上の事業場 | 4/5 |
【5】その他留意点
①多くの助成金で、過去に同じ助成金を受給したことがある事業場には支給されないことがありますが、当該業務改善助成金は助成対象となります。
②予算の範囲内で交付されるため、申請期間内であっても募集が締め切られる場合がありますので、状況を確認の上ご準備ください。
③助成金を受けるためには、いつ何を行うか、十分に注意する必要があります。例えば次のようなものがあります。
・交付申請書を都道府県労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引き上げを実施してしまうと、助成対象となりません。
・事業場内最低賃金の引き上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日(設備投資等の納品日又は助成対象経費の支払い完了日又は賃金引き上げのいずれか遅い日)までの間であればいつでも実施してよいとされています。
・設備投資等については、事業場内最低賃金引き上げと違い、交付決定通知後に行う必要があります。
詳しくは厚生労働省ホームページをご覧いただき、不明な点がありましたら都度確認の上進めていただきますようお願いします。
参照:厚生労働省「業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」