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65歳を超えても働ける生涯現役社会に向けての助成金(65歳超雇用促進助成金)

65歳を超えても働ける生涯現役社会に向けての助成金(65歳超雇用促進助成金)

人口減少に伴う人手不足問題が取り上げられ、生産性向上も語られるなか、働けるうちは働きたいという高年齢の方が増えています。

年金額、社会的存在や生きがい等、様々な理由があると思われますが、企業にとっても人手不足の補充や技術や経験等を持って働き続ける高年齢者を、積極的に雇用し続ける理由があると思います。

2020年3月31日に独立行政法人労働政策研修・研究機構が発表した「高年齢者の雇用に関する調査」によると、現在の定年年齢を60歳と答えた企業が75.6%、65歳と答えた企業が次いで多く18.5%でした。まだ多くの企業で60歳定年としていることが分かります。

65歳以降の高年齢者で希望者全員が働くことができる企業の割合は、4年前の調査よりも増加しているとはいえ、2割となっています。しかし、46%もの企業が65歳以降の雇用確保の措置の実施、または予定があると答えています。

この度ご紹介する65歳超雇用促進助成金は、生涯現役社会の実現に向けて高年齢者の雇用促進を図ることを目的とし、65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換した事業主に対して助成されるものです。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が申請窓口となっています。事前相談等にも応じていますので、確認等しながら進めてください。

具体的には「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の3つのコースがあります。概要を見ていきましょう。


この記事の著者
本山社会保険労務士事務所  所長 

【1】65歳超継続雇用促進コース

この助成金は、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への定年引上げ等の制度を導入した事業主に対して助成されるものです。

≪主な支給要件≫

  • ①制度を規定しその際に経費を要した事業主であること
  • ②制度を規定した労働協約又は就業規則を整備している事業主であること
  • ③制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請の前日までの間に、60歳を下回る定年年齢をしていない、又は60歳以上65歳未満の定年の定めをしている事業主は、当該定年の引上げ、継続雇用制度、当該定年の定めの廃止のいずれかの制度を導入している事業主であること
  • ④支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって、60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
  • ⑤高年齢者雇用推進者の選任及び職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等7つの高年齢雇用管理に関する措置の中から1つ以上を実施している事業主であること

≪支給額≫

定年年齢引き上げ等の措置の内容や年齢の引き上げ幅、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて次の表の金額が支給されます。

『A:65歳以上への定年の引上げ』『B:定年の定めの廃止』






60歳
以上
被保険
者数
A B
65歳まで引上げ 66歳以上に引上げ 定年の定めの廃止
(5歳未満) (5歳) (5歳未満) (5歳以上)
1~2人 10万円 15万円 15万円 20万円 20万円
3~9人 25万円 100万円 30万円 120万円 120万円
10人以上 30万円 150万円 35万円 160万円 160万円

※( )内は引上げ幅

『C:希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入』





60歳
以上
被保険
者数
C
66~69歳まで 70歳以上
(4歳未満) (4歳) (5歳未満) (5歳以上)
1~2人 5万円 10万円 10万円 15万円
3~9人 15万円 60万円 20万円 80万円
10人以上 20万円 80万円 25万円 100万円

※( )内は引上げ幅
※ 定年の引上げと継続雇用制度の導入を合わせて実施した場合の支給額はいずれか高い額のみ

≪支給申請等の流れ≫

対象事業主に該当するか事前確認
委託先と契約
委託先と共に就業規則の変更作業を実施(労働基準監督署への提出含む)
高年齢雇用推進者の選任
定年引上げ等の制度を実施
定年引上げ等実施後2か月以内に支給申請

※ 委託先に契約締結後支給申請までの間にかかった費用の支払いを要します。

【2】高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

この助成金は高年齢者の雇用促進を図るための雇用管理制度の整備(賃金・人事処遇制度、労働時間、健康管理制度等)に係る措置を実施した事業主に対して助成されるものです。

≪主な支給要件≫

  • ①「雇用管理整備計画書」を提出して、計画内容について認定を受けていること
  • ②①の計画に基づき、高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、当該措置の実施の状況及び雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備している事業主であること
  • ③【1】の③、④と同様
  • ④雇用管理整備の措置の実施に要した支給対象経費を支給申請日までに支払ったこと

≪高年齢雇用管理整備措置の例≫

55歳以上の高年齢者を対象として、次のような制度を労働協約又は就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要です。

  • ①高年齢者の職業能力を評価する仕組を活用した賃金・人事処遇制度の導入又は改善
  • ②労働時間制度の導入又は改善(短時間勤務制度、隔日勤務制度などの導入、改善)
  • ③在宅勤務制度の導入又は改善
  • ④研修制度の導入又は改善
  • ⑤高年齢者向けの専門職制度等の導入又は改善
  • ⑥健康管理制度の導入

≪支給額≫

雇用管理制度の整備等の実施に要した経費の額に次の助成率を乗じた額。経費として認められるものは、雇用管理制度の導入又は見直しに必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費であり、初回に限り50万円とみなされ、2回目以降の申請は、50万円を上限とする経費の実費が対象とされます。

中小企業事業主への助成率 中小企業事業主以外の助成率
生産性要件を満たした場合 75% 60%
満たさなかった場合 60% 45%

≪支給申請等の流れ≫

計画の申請準備・申請
計画の認定を受ける
高年齢者の雇用管理制度の整備及び実施
支給申請(雇用管理整備計画の実施期間終了日の翌日から起算して6か月後の日の翌日から2か月後の日までの間に申請)
支給の決定

【3】高年齢者無期雇用転換コース

この助成金は50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成されるものです。(ただし、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と同一の行為によって二つの助成金を同時に受給することはできません。)

≪主な支給要件≫

  • ①「無期雇用転換計画書」を提出し、計画内容について認定を受けていること
  • ②有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を労働協約又は就業規則その他これに準ずるものに規定していること(実施時期が明示され、かつ有期契約労働者として平成25年4月1日以降に締結された契約に係る期間が通算5年以内の者を無期雇用労働者に転換するものに限る)
  • ③②の制度に基づき、雇用する50歳以上64歳未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること
  • ④③で転換した労働者を、転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月賃金を支払うこと
  • ⑤無期雇用転換計画書提出日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に60歳を下回る定年年齢をしていない、又は60歳以上65歳未満の定年の定めをしている事業主は、当該定年の引上げ、継続雇用制度、当該定年の定めの廃止のいずれかの制度を導入している事業主であること

≪支給額≫

対象労働者一人につき(支給申請年度1適用事業所当たり10人上限)下記の金額が支給されます。

中小企業・・・48万円(60万円)
中小企業以外・・・38万円(60万円)
( )内は生産性要件を満たした場合

≪支給申請等の流れ≫

支給申請の流れは【2】の雇用管理改善コースとほぼ同様です。ただし、支給申請提出期限が対象者に対して転換後6か月賃金を支給した日の翌日から2か月以内となります。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
労務相談、メンタルヘルス対策、就業規則作成・変更、採用に関する相談・指導、助成金申請に関する相談・指導、労働・社会保険各種手続、相談・指導、年金相談・手続、個別労働紛争代理業務(企業、個人)、個人相談、他士業との連携による創業支援、ワンストップサービス

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