業績低迷からのV字回復を狙う御社こそ“ものづくり補助金”を活用しましょう
今回は、“ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金”(以下、ものづくり補助金)について、どのような制度なのか、具体的にはどのような案件に活用ができるのか、御社でならどのように使えそうかイメージしていただければと思います。
1. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは
一言で言うと、「中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するために補助されるもの」です。一般的には、“ものづくり補助金”と呼ばれており、補助金の中でも非常にポピュラーなものになります。
(ア) “ものづくり補助金”とは、こんな制度です
補助額は、最大1,000万円。補助率は、中小企業で2分の1、小規模事業者等では3分の2となっています。具体的に言うと、「従業員の少ない小規模事業者さんには、1,500万円の投資に対して、最大で1,000万円の補助金を交付しますよ」という制度です。つまり、2,000万円の投資をしても補助金は、1,000万円までとなっています。これ以外にグローバル展開型というものがあり、最大3,000万円まで補助されますが、今回は、たくさんの方に関連がある一般型に絞ってお伝えします。
補助金の公募締切は年間に何度もあるのですが、こちらも新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく、毎回、さまざまなルールが変更になります。必ず最新の情報をキャッチするようにご注意ください。最新の公募要領はこちらからご確認ください。
(イ) 補助される経費は?
「機械装置・システム構築費・技術導入費・専門家費・運搬費・クラウドサービス利用費・原材料費・外注費・知的財産権等関連経費」となっています。やはり、名前の通りものづくりを支援する国の意図が表れていますね。しかし、技術導入費や専門家費、クラウドサービス利用費などソフト面での経費も認められています。
(ウ) 補助金を受け取るために必要なことは?
補助要件は、「以下の要件を満たす3~5年の事業計画を策定、実行すること」となっています。
- 付加価値額:+3%以上/年
- 給与支給総額:+1.5%以上/年
- 事業場内最低賃金 ≧ 地域別最低賃金+30円
「この情勢のなかで成長計画!?」とちょっと驚かれる方もあるかもしれませんが、この“付加価値額”は、次のような計算式で算出します。
付加価値額=営業利益(本業の利益)+人件費+減価償却費
つまり、設備投資をするということは、間違いなく減価償却費は増えます。また“市場のニーズを捉えた新製品や改良品が売れて営業利益が上がる”、そして“増産に対応するための人員を増加させたり、営業利益の向上に伴って昇給させたり”するので人件費が増えます。ですから、自然と成長計画を描くことになります。逆に言うと、「成長戦略を描けないような更新投資は採択されない」と考えてもよさそうです。
(エ) どんな書類を用意すればよいのか?
まずは、前項で説明した事業計画書を10ページ以内に収める必要があります。その内容は大きく3つの項目にまとめる必要があります。
- 補助事業の具体的取組内容
- 将来の展望(事業化に向けて想定する市場及び期待される効果)
- 会社全体の事業計画
そして、賃金引上げ計画の表明書。これには、従業員代表の署名が必要になります。それから当たり前ですが、“決算書等”を直近2年分。以上です。
加えて、審査に当たっては以下のことが加点要素として加味されます。可能な限りチャレンジされることをお勧めします。
- 「経営革新計画承認書」
- 「開業届又は履歴事項全部証明書」(創業・第二創業の企業は加点されます)
- 「事業継続力強化計画認定書」など
- 「特定適用事業所該当通知書」(被用者保険の定期用拡大は加点されます)
2. 新設備の導入事例
高精度短納期実現を目的とした設備導入事例
A社は、非常にニッチなものづくりをしている板金加工会社です。2年ほど前、地元金融機関を通じて、同じ市内の金属加工業の取引先からM&Aの相談を受けました。今後の自社の行く先を考え、事業を引き継ぎましたが、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた取引先の生産ラインがストップしたのです。大口取引先からの受注が激減。社長は考えました。「この先もこのように今まで想像もしなかったようなことが起こるに違いない。今までのように特定の取引先からの受注に依存していては、事業の継続は困難だ。安心して次の世代に事業を任せられない」。そこで、生産体制の縮小で空いた時間を利用して、新製品開発と営業活動に注力することを決意し、最新の加工設備をこの「ものづくり補助金」を活用して導入しました。
ピンチをチャンスとすべく、現在は、商工会議所や金融機関からの紹介を受けながら、さらなる見込み客開拓に励んでいます
ものづくりと言うと、どうしてもこのような事例を想像しがちですが、この補助金の対象事業は工場設備ばかりではありません。
3. 新サービス開発事例
感染リスクを低減する医療機関向けクラウドサービス開発事例
B社は、医療機関向けのシステム販売を事業の主軸とするシステム開発会社です。医療機関の業務効率改善や医療従事者のリスクを軽減できる新規事業の開発を目指していました。しかし、全国に数えきれないほどのシステム開発会社があります。その中において“新規性のある事業”というテーマを掲げたものの、その開発は難航しました。
そんなある日、患者さんの待合室で事務長を待っていた担当者がひらめきました。「患者さんの待ち時間を減らせないか?」
B社の新規事業チームは、そのアイデアをもとに開発をスタートしました。自宅や医療機関へ向かう途中でご自身の体調や病状について、手元のスマートフォンからクラウド上へ登録する“電子問診票”です。病院の待合室には、まだ病名もわからない治療前の患者さんがいらっしゃいます。その感染リスクは、市中の比ではありません。
このシステムを高齢の方にこそ使ってもらいたいと考えていたので、その開発は簡単ではありませんでした。しかし、外部の専門家の支援や新たな開発用システムの導入によって、なんとか開発を成功させました。これまで導入していた電子カルテなどへの連動など、既存事業へのシナジーもあり、今後の大きな飛躍が期待されています。
出所:ものづくり補助事業成果事例集 北海道版
4. まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、一般的なものづくりにかかわるテーマとサービス開発という、一見補助の対象外とも思えそうなテーマについて紹介いたしました。このように、本補助金は、小規模事業者等の革新的な取り組みを支援することを目的とした制度です。補助金額から考えても簡単に採択される制度とは言えませんが、“事業継続力強化計画の策定事業者”や“新規創業者”には加点される仕組みもありますので、是非前向きに取り組まれてみてはいかがでしょうか?
今回は、筆者周辺での申請事例の一部を修正した上でご紹介いたしましたが、これらはほんの一例にすぎません。インターネットなどで多種多様な採択事例を閲覧することが可能です。そちらも参考にしてみてください。
本補助金は、金額が大きいこともあり、しっかりとした事業計画書が求められます。もし、「取り組んでみようかな?」とお考えでしたら、公募要領を一読の上、お近くの専門家に相談してみることをお勧めします。