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テレワークの環境整備とメンタルヘルス対策

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長  村田瑞枝

テレワークの環境整備とメンタルヘルス対策

様々なご意見があるでしょうが、無観客での東京オリンピックの開催が決まりました。新型コロナウイルス感染症は誰も想像もしていなかったくらい長引き、喜ばしくない理由でテレワークが浸透しました。

もちろん、良い側面もあります。これまでは出社するのが前提で、対面でのコミュニケーションがベースでしたが、「WEB会議で十分」「離れていても繋がることはできる」ことに気がついた、といった声が上がりました。30年間、足で稼ぐと信じていた営業の方から、「オンラインでも売れるなんて、今まで何をしていたのだろう」というコメントをいただいたこともあります。在宅での勤務を体験したことで、テレワークでも仕事ができることはもちろん、通勤時間が削減されるメリットが広く認識されました。そして今、テレワークの可否は就職や転職の際の条件へと昇華しており、「リモートワークOK」や「在宅ワークへの転職」といったキーワードで就業先候補が選ばれるようになっています。

その一方、「在宅勤務で腰が痛くなった」「運動不足で太ってきた」といった声も。厚生労働省の“テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン”には「自宅等においてテレワークを実施する場合においても、事業者は、これら関係法令等に基づき、労働者の安全と健康の確保のための措置を講ずる必要がある。」と明記されています。パソコンの貸与はもちろん、自宅でのテレワーク環境を整えるための初期費用を会社が負担したり、希望者にはディスプレイを配布しているところもあります。在宅勤務時であっても、企業は従業員の安全衛生管理に配慮する義務があり、何かあった場合は労働災害となる場合があることを再認識していただきたいと思います。

※画像クリックで拡大表示

図表1:自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備 図表1:自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

厚生労働省では、図表1の通り、自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備として、照度は300ルクス以上、室温は17度から28度、椅子は背もたれがあるなど、望ましい環境を提示しているほか、作業中の姿勢や作業時間にも注意するよう呼び掛けています。一般的に、1時間に1回は立ってストレッチをするなど、姿勢を変えることをお勧めしています。パソコンに向かい続けると目の負担も大きくなりますので、遠くを見る、首のストレッチをするなど、意識してやってみて下さい。集中力の高い方ほど、1時間ごとにアラームを掛け休憩する等試していただきたいところです。

ご参考まで、海外では、コロナ禍以前からwalking meetingという文字通り歩きながらミーティングをするのがポピュラーだったそうで、かの有名IT企業の創業者や前大統領も取り組んでいたという記事があります。歩くことでリラックスし、クリエイティブな発想に結びつく効果があるそうです。社内ミーティングは歩きながらという方法も先進的でかっこいい気がします。

図表2:ラインケアで注意すること

もちろん、体の健康だけでなく、心の健康も維持する必要があります。図表2は、ラインケアで注意することを記載しています。左側は出勤する前提で書かれたものですが、テレワークでもほぼ同様のことがいえます。特にテレワークだからこそ気をつけていただきたいのは、目の前にいないことによって気づくことが遅れたり、気づいてからのアクションが起こしにくい点です。最もあってはならないのは、就業連絡が無いことに気づかないことですが、メールで行っている場合は、しっかりチェックしないと特定の社員からの連絡が無いことが解りにくいので、特に注意が必要です。顔色や服装の乱れも画面越しでは伝わりにくいですし、そもそもビデオがONになっていなければ確認することもできませんので、水曜日だけは少なくとも全員ビデオをONにする、最初と最後だけはONにするなど、予めルールを定めておくことが大切です。

また図表3の通り、職場ストレスのベクトルは、①周囲からの支援、②仕事の自由度、③仕事の要求度によって高まります。テレワークでは一般的に、周囲からの支援が小さくなる一方で仕事の自由度は増やしやすいといえます。ジョブ型とまではいわなくても、可能な部分はプロセス管理から結果管理に移行してみるなど、テレワークに適したやり方に変えてみて下さい。仕事がやりにくくなることが明らかである場合を除き、基本的に仕事の要求度を変える必要はありません。

図表3:職場の負荷

テレワークだからこそ気をつけていただきたいことをまとめます。まず、マネージャーは自己管理が得意でない部下には特に注意して、日々の状況把握に努めて下さい。スケジューラー等を活用すると把握しやすくなります。また、業務メールのみでなく、チャット等でくだけたコミュニケーションを心掛けて下さい。雑談はマネージャーや先輩から仕掛ける必要があります。ミーティングの中で一定の雑談タイム(雑談しかしてはいけない時間)を設けて営業成績がアップした例もあり、雑談タイムは無駄な時間ではありません。

このほか、見えないからこそ隣にいないからこそ、情報共有の範囲を広げる、情報共有頻度を上げることも大切です。自宅勤務による孤独感や帰属意識が持てないことへの不安も課題となっています。テレワークをどの位取り入れるのが最も心地良い働き方なのかは、仕事の内容や人によって様々です。テレワークができる職種とできない職種で不公平感が出ていて困る、という相談を数多くいただきますが、テレワークを全員がしたいと思っているわけではありません。中長期的には、テレワークをしたい方にはテレワークで、出勤したい方は出勤スタイルで、さらには自然の中で働きたいという方は山小屋で、サーフィンが趣味の方は海辺の町で、といった本当の意味で場所や時間にとらわれない働き方をしていただきたいと思います。このような就業者一人一人のライフ・ワーク・バランスの充実が、企業の経営革新、ひいては社会の労働力人口減少緩和はもちろん、持続可能社会の形成に繋がっていくのです。

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著者プロフィール

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村田瑞枝

一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長

1991年日本電信電話株式会社入社。人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。2020年4月より現職。

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