テレワークにおける勤怠管理とは? 効果的な方法やポイントを解説

テレワークの普及に伴い、従業員の勤怠管理に関して多くの企業が課題を抱えています。オフィスでの対面勤務を前提としていた従来の管理手法が通用せず、正確な労働時間の把握や適切な打刻方法の導入に苦戦している企業もいるでしょう。
例えば、細かい打刻がしにくくなり、労働時間の把握が難しいなどです。
本記事では、テレワークでの勤怠管理の注意点から、適切な管理方法、勤怠管理システムのメリットと選定基準などを、ポイントを押さえて解説します。
リモートワークにも対応できる、効率的で透明性の高い労務管理体制の構築に役立ててください。

テレワーク導入時に注意すべき勤怠管理の課題
柔軟な働き方を推進していくなかで、テレワークの実施は最初に思い浮かぶ案でしょう。しかし、テレワークには、勤怠管理上の課題が伴うことを理解しておかなければいけません。
テレワーク導入時に注意しておきたいポイントは、以下のとおりです。
・オフィス外勤務は労働時間の把握が難しい
・業務とプライベートの切り分けが難しい
・長時間労働に陥るリスクが増加する
ここでは、上記の注意点について解説します。
オフィス外勤務は労働時間の把握が難しい
テレワークでは、従業員の勤務状況を直接確認できません。そのため、上司が部下の勤務実態を詳細に把握することが難しくなり、適切な労働時間の管理が困難になりがちです。
在宅勤務など、オフィス以外の環境下での就業では、労働時間の可視化や客観的な記録の取得が重要な課題となります。テレワークにおける勤怠管理では、労働時間を正しく把握する術(すべ)が必須です。
業務とプライベートの切り分けが難しい
テレワークの課題の1つは、自宅での仕事は私用との境界が曖昧になりやすいことです。自宅のように仕事に集中しづらい環境では、業務効率が下がる懸念があります。そのため、テレワークでは、働く時間とプライベートな時間のメリハリをつけられるような工夫が必要不可欠です。
業務とプライベートの切り分けを意識し、集中して働ける環境作りが、テレワークでの生産性維持に欠かせません。在宅勤務だと、ちょっとした家事など細かな休憩も増えやすいので、正確な労働時間の把握もしにくくなります。
長時間労働に陥るリスクが増加する
テレワークの環境下では「いつでも仕事ができる」という利便性がかえって自己管理を難しくし、働き過ぎてしまう危険性があります。自宅にいると仕事モードがオフになりにくく、深夜や休日も働き続けてしまいがちです。
そのため、テレワークでの長時間労働を防ぐためには、適切な勤務時間の把握と、労働と休息のバランスを取る施策が重要となります。従業員の健康管理という観点からも、長時間労働の防止に努めましょう。
テレワークでの適切な勤怠管理方法
前述のように、テレワークでは労働時間を把握しづらいというのが難点です。しかし、テレワークでの勤怠管理には、いくつかの有効な方法があります。
テレワークで適切に勤怠管理を行う方法は、以下のとおりです。
・始業・終業時に定期的な進捗報告をする
・勤怠管理システムを活用する
・社内コミュニケーションツールのログを活用する
・就業規則にテレワークのルールを明記する
・リモート対応のタイムレコーダーを導入する
ここでは、上記の方法をそれぞれ紹介します。
始業・終業時に定期的な進捗報告をする
業務開始と終了時に上司へ連絡を義務付けることは、従業員の勤務状況を把握するうえで効果的です。始業時と終業時に、メールやチャットツールで勤務状況を報告させることで、大まかな労働時間は把握できます。
また、日々の進捗報告の習慣化は、社員の自己管理意識を高め、生産性向上にもつながるでしょう。この報告制度を形式的なものにせず、実質的なコミュニケーションの機会として活用することで、テレワークだと不足しがちなチームの協力体制構築も補える施策です。
勤怠管理システムを活用する
専用ツールで労働時間を正確に記録・集計することで、勤怠管理の適正化が図れます。勤怠管理システムを使えば、場所を問わずリアルタイムで勤怠状況を打刻し、自動集計が可能になります。
勤怠管理システムは、PCやスマホから簡単に入力でき、管理工数を大幅に削減できることが大きなメリットです。チャットベースの報告よりも簡単かつ正確なので、テレワークでの勤怠管理には非常におすすめです。
また、多くのシステムは給与計算システムとの連携も可能で、バックオフィス業務全体の効率化にもつながります。
社内コミュニケーションツールのログを活用する
チャットやWeb会議の利用履歴から、勤務状況を把握する方法も有効です。社内コミュニケーションツールの利用ログを分析することで、従業員のおおよその就業実態をつかむことができます。
ただし、ログ活用は客観的な勤務記録としても有用ですが、プライバシーに配慮した慎重な取り扱いが必要です。社内チャットでのコミュニケーションが盛んな場合は、従業員のプライバシー保護に十分留意しましょう。
就業規則にテレワークのルールを明記する
テレワークを導入する際は、テレワーク時の勤怠管理方針を社内規定として整備することが重要です。テレワーク特有の勤務条件や報告義務などを、就業規則に明記しておきましょう。
テレワーク時の労働時間の定義、勤怠報告の具体的方法、休憩時間の取り方などを明確に規定することで、曖昧さから生じる混乱やトラブルを未然に防ぐことができます。策定したルールは社内ポータルサイトなどを通じて周知し、定期的な研修を開催するなど、理解促進のための取り組みも必要です。
リモート対応のタイムレコーダーを導入する
場所を問わず、出退勤時刻を打刻できるシステムを用意するのも一案です。クラウド対応のタイムレコーダーを導入すれば、自宅やモバイル環境からも勤怠打刻が可能になります。システムによっては顔認証や指紋認証を採用し、なりすまし打刻を防止する機能も備えています。
客観的な勤怠記録を残せるため、労働時間の適正把握に役立つでしょう。リモート対応タイムレコーダーには、位置情報も取得できるものがあるので、自宅以外の環境でのリモートワークも許可する場合におすすめです。
テレワークの勤怠管理にマッチしたシステムの特長
テレワークでの勤怠管理には、専用のシステムを活用することが最も効果的と言えます。テレワークに対応した勤怠管理システムのメリットは、以下のとおりです。
・場所を選ばずに、打刻と自動集計ができる
・リアルタイムの勤務状況の可視化と共有ができる
・自動計算機能で業務負担を削減できる
・給与計算や休暇管理などの関連業務との連動
ここでは、上記のメリットを解説します。
場所を選ばずに、打刻と自動集計ができる
どこからでも勤怠入力でき、データを自動で集計できることが、テレワーク向け勤怠管理システムの特長になります。クラウド型の勤怠管理システムなら、インターネット環境さえあれば、場所を問わず利用可能です。
勤怠管理システムは、出退勤時刻や休憩時間などを入力すれば、労働時間を自動計算してくれます。そのため、面倒な集計作業から開放されるのも魅力です。
リアルタイムの勤務状況の可視化と共有ができる
テレワークに対応の勤怠管理システムは、何より従業員の勤務状況をリアルタイムで把握・共有できることが特長です。管理者が部下の勤務状況を逐一確認でき、社員同士も互いの稼働状況を把握し合えます。
同じ場所にいなくても従業員の都合が分かるため、急に会議や相談を行う必要が出た場合でも、機会を作りやすくなります。また、リアルタイムの情報共有は、テレワークでのコミュニケーション不足解消にも一役買うでしょう。
自動計算機能で業務負担を削減できる
勤怠データを自動計算し、管理工数を大きく減らせるのも、テレワーク向けシステムの魅力です。PCやスマホから打刻するだけで、勤務時間や残業時間などを自動集計してくれます。手作業での入力と集計が発生しません。
管理業務の自動化により、人事労務担当者の工数を大幅カットできます。テレワークに対応しつつ、業務効率化に直結する機能と言えるでしょう。
給与計算や休暇管理などの関連業務との連動
勤怠データを他の人事労務システムと連携できることもメリットです。例えば、勤怠管理システムから給与計算ソフトへデータを連携すれば、賃金計算業務も自動化が可能になります。
年次有給休暇の取得状況管理など、勤怠関連業務のデジタル化・省力化が図れます。特に、時給制の従業員が一定数いる場合は、重宝する機能です。
自社に最適な勤怠管理システムの選定基準
勤怠管理システムの導入は、テレワーク時の勤怠管理に効果的な施策です。実際にテレワーク向け勤怠管理システムを選ぶ際は、以下の2点を考慮してください。
・多様な勤務体系に柔軟に対応できるか
・サポート体制の充実度
ここでは、上記の選定基準を解説します。
多様な勤務体系に柔軟に対応できるか
自社の勤務形態に合わせたカスタマイズが可能かどうかは、システム選定の重要な判断基準です。裁量労働制やフレックスタイム制など、自社の勤務体系に適したシステムを選ぶ必要があります。
加えて、将来的な勤務制度変更の可能性も見据え、柔軟に対応できるシステムが望ましいです。現段階で採用している勤務体系に対応していることは前提として、なるべく変化に順応できるシステムを選んでみましょう。
サポート体制の充実度
導入や運用時に手厚いサポートが受けられるかどうかも、システム選定時に評価しましょう。システム導入時の社員教育やマニュアル整備など、手厚いサポートが受けられるベンダーを選んでみてください。
トラブル発生時のサポート体制や、問い合わせ対応の迅速さも重要なポイントです。充実度の高いサポート体制を備えたベンダーを選べば、導入から運用までスムーズにいきやすくなります。
テレワーク時の勤怠・労務管理で押さえるべき注意点
テレワークでの勤怠・労務管理には、いくつか押さえておくべきポイントがあります。テレワーク時の勤怠・労務管理を行う際の注意点は、以下のとおりです。
・社員間の積極的なコミュニケーションを促進する
・在宅勤務での労災認定について周知する
・公平な人事評価制度を整備する
・適切な36協定の締結と割増賃金の支払い
・テレワーク関連コストの負担ルールを策定する
ここでは、上記の注意点を解説します。
社員間の積極的なコミュニケーションを促進する
テレワークを導入するうえで、オンラインでの活発な意思疎通を促す施策を実施することが重要です。社員同士の連携や一体感が失われないよう、コミュニケーションの活性化策を講じる必要があります。
Web会議の定期開催や、チャットツールの有効活用など、積極的な情報共有を後押ししましょう。テレワークでも、十分なコミュニケーションを図ることが、業務の生産性向上にもつながります。
在宅勤務での労災認定について周知する
自宅勤務中の労災認定について、社員に周知することも重要です。自宅勤務中の災害も労災認定される場合があることを社員に説明し、適切な対応を指導する必要があります。
周知に伴い、社用PCの利用を認める、勤務場所の申告を必須にするなど、災害時に備えたルール整備も重要です。万一の事態に備え、労災対応の体制を整えておきましょう。
公平な人事評価制度を整備する
テレワークを理由として、不当な評価をしないよう徹底することも欠かせません。テレワークの社員でも、正当に評価できる人事制度作りを進めましょう。
業務プロセスではなく成果物を重視するなど、多様な働き方に対応した評価軸のシフトが必要です。公平な評価制度が整備されていれば、テレワークをしやすくなり、社員のモチベーションも維持できるでしょう。
適切な36協定の締結と割増賃金の支払い
テレワークでも、36協定の締結と割増賃金の支払いを適切に行うことが重要です。テレワークだから管理が難しいという理由で、違法な長時間労働を見逃すことがあってはなりません。
在宅勤務でも法令順守を怠らず、36協定の内容を守り、残業代は確実に支払ってください。正確な労働時間管理と、それに基づく報酬の支払いが、企業のコンプライアンスにつながります。
テレワーク関連コストの負担ルールを策定する
通信費など、テレワークに伴う費用の負担ルールを定めることも重要です。情報通信機器の利用料や光熱費など、テレワークに必要な実費の負担ルールを取り決めましょう。
この際、曖昧な部分を残さず、会社と社員双方が納得できる線引きを行ってください。コスト負担のルール化は、トラブル防止に役立ちます。
テレワーク勤怠管理の効果的運用のポイント
ここまで、テレワークの勤怠管理の方法や注意点を紹介しました。テレワークでの勤怠管理を効果的に運用するには、以下の2点を押さえておきましょう。
・全従業員へルールを浸透させる
・運用を通じて継続的に改善していく
ここでは、上記のポイントを解説します。
全従業員へルールを浸透させる
テレワークの勤怠管理体制をいかに整えても、従業員がそのルールを理解し、実践しなければ効果は限定的です。勤怠管理の方針や手順を文書化し、イントラネットなどで常時アクセスできる状態にしましょう。
また、定期的な研修会の実施などにより、ルールの理解浸透を図ることも大切です。特に、「なぜこのルールが必要なのか」という勤怠管理の重要性を認識し、ルールに沿った行動を取れるよう、継続的な啓発活動が求められます。
運用を通じて継続的に改善していく
テレワークでの勤怠管理は、導入したら終わりではありません。実際の運用状況をモニタリングし、PDCAサイクルを回していくことが重要です。
勤怠管理の運用実態を定期的に点検・評価し、改善策を打ち出していく必要があります。定期的な従業員アンケートや管理者へのヒアリングを通じて、システムの使いにくさや不便な点、ルールの実効性などについての生の声を集めましょう。
システムの機能改善要望をベンダーに伝えたり、ルールの見直しを図ったりと、柔軟にブラッシュアップを重ねましょう。
テレワーク時の適切な勤怠管理で、生産性の高い働き方を実現しよう
テレワークを実施するうえでは、正確な労働状況の把握が求められます。テレワークに適した勤怠管理を確立し、働きやすさと生産性を高めることが重要です。
テレワークの勤怠管理には、社内コミュニケーションツールの活用や定期的な進捗報告などの方法があります。特に、場所を選ばずに打刻と自動集計ができる勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
また、オフィス外勤務でも効率良く成果を出せるよう、勤怠管理のインフラを整備することも欠かせません。公平な人事制度やテレワークのルールを取り決め、周知を徹底することにより、テレワークでの勤怠管理を適正化していく必要があります。
加えて、社員がいきいきと働ける環境を整えることが、テレワーク成功の鍵を握ります。適切な勤怠管理とともに、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めることで、テレワークの価値を引き出していきましょう。