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もしも経理をやることになったら… 経理の仕事シリーズ⑤ 年次決算のポイント

もしも経理をやることになったら… 経理の仕事シリーズ⑤ 年次決算のポイント

初めて経理業務を担当する方向けに経理の仕事を紹介する、「経理の仕事」シリーズ。

今回は「経理の仕事シリーズ⑤ 年次決算のポイント」ということで、年次決算において分かりにくい点をピックアップして解説していきます。


この記事の著者
  中小企業診断士 

1.「現金過不足」の処理方法

経理担当者は、帳簿上の現金残高と実際の現金残高を毎日突合しています。

しかし、実務では現金が合わないケースも発生します。

ここでは、現金過不足の処理方法について解説していきます。

(1)現金不足の場合

①実際の現金残高が帳簿上の現金残高より10,000円少ない。

この場合は、「現金過不足」という勘定科目を用いて処理します。

借方

貸方

現金過不足 10,000円

現金 10,000円

ポイントは、帳簿上の残高を10,000円減らすことにより、実際の現金残高に合わせていることです。帳簿上の現金残高と実際の現金残高が合わない場合は、「現金過不足」勘定により経理処理を行いますが、決算までに現金が不足した原因を追究する必要があります。

現金が不足した原因が判明した場合は次のような仕訳を行います。

<仕訳例>

調査の結果、新聞図書費10,000円の計上が漏れていたことが判明した。

借方

貸方

新聞図書費 10,000円

現金過不足 10,000円

②現金過不足が発生した原因が判明せず、決算日を迎えた。

借方

貸方

雑損失 10,000円

現金過不足 10,000円

期中に発生した現金過不足の原因が決算日時点で判明しない場合は、「雑損失」という勘定科目で処理をします。

(2)現金過剰の場合

ここも仕訳例を挙げながら解説していきます。

①実際の現金残高が帳簿上の現金残高より10,000円多い。

借方

貸方

現金 10,000円

現金過不足 10,000円

この仕訳により帳簿上の現金残高を10,000円増加させて、実際の現金残高に合わせています。ここから経理担当者は決算日まで現金過剰の原因を調査していきます。

②現金過剰が発生した原因が判明せず、決算日を迎えた。

借方

貸方

現金過不足 10,000円

雑収入 10,000円

現金過剰の場合は「雑収入」という勘定科目を用いて処理します。

経理担当者としては、現金過不足が発生することはあってはならないことです。

簡単に雑収入や雑損失に振り替えるだけではなく、原因追及を十分に行うことが大切です。


2.「有価証券」の処理方法

決算時には有価証券の評価を見直す必要があります。

ただし、有価証券は4つに分類され、評価方法もそれぞれ異なります。

自社が保有している有価証券を適切に分類した上で評価する必要があります。

<有価証券の区分と評価方法>

有価証券の区分

評価方法

売買目的有価証券

期末時価にて評価。評価差額は当期の損益にて調整する。

満期保有目的債権

原則、取得価額にて評価。債券金額と取得原価との差額が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づき算定した価額を貸借対照表価額とする。

子会社・関連会社株式

取得原価を貸借対照表価額とする。

その他の有価証券

期末時価にて評価。評価差額はその他有価証券評価差額金として純資産に計上。

ここでは売買目的有価証券の処理方法を見ていきましょう。

(1)有価証券評価益

まずは具体的な事例から考えていきましょう。

<具体例>

保有している株式(帳簿価額100,000円)の決算日における時価が、110,000円になった。

売買目的有価証券の代表例は株式です。

株価は日々変動しますので、決算日における株価で再評価する必要があります。

この場合、帳簿価額100,000円に対して、決算日における時価は110,000円であることから10,000円の評価益が出ています。

決算処理においては「有価証券評価益」という勘定科目を用いて処理します。

借方

貸方

有価証券 10,000円

有価証券評価益 10,000円

(2)有価証券評価損

先ほどは有価証券評価益について説明しましたが、時価が帳簿価額よりも下落した場合は「有価証券評価損」という勘定科目を用いて仕訳を行います。

<具体例>

保有している株式(帳簿価額100,000円)の決算日における時価が、80,000円になった。

この場合、帳簿価額100,000円に対して、決算日における時価は80,000円であることから20,000円の評価損が出ています。

借方

貸方

有価証券評価損 20,000円

有価証券 20,000円


3.引当金の計上

引当金とは、翌期以降において費用または損失の発生可能性が高い場合に計上される勘定科目です。引当金には貸倒引当金を代表とする「評価性引当金」と退職給与引当金、役員賞与引当金などの「負債性引当金」があります。

ここでは貸倒引当金を例に仕訳を説明していきましょう。

<仕訳の具体例>

(1)決算にあたり保有している売掛金500万円に対して貸倒引当金1%にて見積もり貸倒引当金として計上した。

借方

貸方

貸倒引当金繰入額 50,000円

貸倒引当金 50,000円

(2)翌期において、保有している売掛金1,000万円に対して貸倒引当金1%にて見積もり貸倒引当金として計上した。

この場合処理方法が2通りあります。

①洗替法

洗替法にて処理する場合は、前期に引き当てた貸倒引当金を一度戻し入れます。

そして、今期発生した貸倒引当金を新たに引き当てます。

借方

貸方

貸倒引当金 50,000円

貸倒引当金繰入額 100,000円

貸倒引当金戻入益 50,000円

貸倒引当金 100,000円

貸倒引当金を戻し入れする際は「貸倒引当金戻入益」という勘定科目を使います。

②差額補充法

差額補充法にて処理する場合は、前期繰入した貸倒引当金との差額を新たに貸倒引当金として繰入します。今回の事例は、今期に貸倒引当金として100,000円計上しますが、前期に既に50,000円計上しており、差額の50,000円を貸倒引当金として計上することになります。

借方

貸方

貸倒引当金繰入額 50,000円

貸倒引当金 50,000円

前期の貸倒引当金は50,000円、今期の貸倒引当金が30,000円の場合はどのような仕訳をすればよいでしょうか。前期の貸倒引当金より20,000円少ないことから、貸倒引当金戻入益という勘定科目にて仕訳を行います。

借方

貸方

貸倒引当金 20,000円

貸倒引当金戻入益 20,000円


4.売上原価の確定

売上原価とは、実際に販売した売上に対して、仕入費用がどの程度かかったかを図る指標です。決算においては、実地棚卸を行い正確な在庫数を把握します。

売上原価は下記の式にて算出します。

売上原価=期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高

実際の仕訳例を見ていきましょう。

決算において期首棚卸高が100,000円、期末棚卸高が50,000円だった場合

借方

貸方

仕入  100,000円

繰越商品 50,000円

繰越商品 100,000円

仕入    50,000円

期首棚卸高100,000円については、既に販売されていることから繰越商品100,000円を減らし、仕入を100,000円増やします。期末棚卸高50,000円はまだ売れていないために繰越商品50,000円を増やし、仕入を50,000円減らします。

もし実地棚卸の結果、帳簿上の商品数と実際の商品数が異なった場合はどのように処理をするべきでしょうか。この場合は「棚卸減耗損」という勘定科目を使った経理処理を行います。

棚卸資産減耗損は次の公式にて求めることが出来ます。

棚卸資産減耗損=(帳簿棚卸数量―実地棚卸数量)×原価

例)実地調査の結果、帳簿棚卸数量が1,000個 実地棚卸数量が980個で棚卸数量が20個少なかった。(原価100円)

棚卸資産減耗損=(1,000―980)×100=2,000円

借方

貸方

棚卸資産減耗損 2,000円

繰越商品  2,000円

次に商品在庫の価値が下がった場合を考えていきましょう。

例えば、流行のおもちゃを大量に仕入れたが、一時的なブームが去り売れ残ってしまった場合はどうでしょうか。流行している間は高値で売れるかもしれませんが、ブームが過ぎ去ると安値でしか売れないでしょう。

このような場合は「商品評価損」という勘定科目を用いて処理をします。

商品評価損は次の公式にて求めることが出来ます。

商品評価損=(原価―時価)×実地棚卸数量

例)在庫価格1,000円の商品が売れ残り、残り在庫の100個を販売価格800円とした。

商品評価損=(1,000-800)×100=20,000円

借方

貸方

商品評価損 20,000円

繰越商品  20,000円


5.最後に

今回は年次決算のポイントについて解説しました。決算業務についての具体的な仕訳など理解いただけたでしょうか。年次決算は経理担当者にとって重要な仕事ですが、分かりにくい点が多いことも事実です。

この記事を読んで、決算業務についての理解を深めていただければ幸いです。

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著者プロフィール

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髙岡 健司

中小企業診断士

PROFILE

ライター,コンサルタント

1975年生まれ,栃木県足利市出身。埼玉大学経済学部卒

2020年中小企業診断士登録

地方銀行を24年勤務後、コンサルタント事務所に転職。

得意分野は財務支援、資金繰り支援。

お問い合わせ先

株式会社プロデューサー・ハウス

Web:http://producer-house.co.jp/

Mail:info@producer-house.co.jp

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