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帳簿の書き方とは?正しい帳簿の付け方や種類について解説

帳簿の書き方とは?正しい帳簿の付け方や種類について解説

帳簿は、会社の取引の流れを記録したもので、事業の状況把握や今後の事業の方針決定のために必要なデータとなります。また、税金の申告や、銀行などへの借入申込にも必要となるなど、会社の経営状況を把握するために不可欠な資料です。

帳簿の種類や、それぞれの種類ごとの書き方について解説します。

また、手書き、エクセルなど、管理方法による特徴やメリット・デメリットも紹介しますので、導入の際の参考にしてください。


この記事の監修者
  公認会計士・税理士 

帳簿とは?

帳簿とは、会社内の日々の取引を記録するものです。帳簿を記帳することで、会社の経営状況を把握し、今後の事業方針を決めるためのデータとしても利用できます

また、税金や資金の借入審査などの手続きの際にも必要となります。

帳簿の基本

帳簿は、一般的に会計帳簿を指すことが多いです。日々の取引から生じる資産・負債の増減や、収益・費用など、会社内のお金の流れを記録します。

帳簿をつけることで、事業の状況を客観的に把握することができ、資金繰りを考えることができます。取引先や仕入先との取引を正確に実施するためにも、帳簿は欠かせません。

帳簿の必要性

会社は帳簿を備え付け、取引を記録することを義務づけられています(法人税法第150条の2)。

また個人事業主も、申告方法に関係なく、帳簿を備え付け、取引を記帳することを義務づけられています(所得税法第232条第1項)。

帳簿を記帳することで、会社がちゃんと儲かっているのか、資金繰りは問題ないかなどを把握することもできます。そのため帳簿は、会社の今後の事業方針を模索・改善するためのデータ収集にも必要です。

また、納付する税金の額は帳簿を基に計算されるので、税金計算にも帳簿は必要です。そのほかにも、帳簿は銀行などの借入審査の際にも提出が求められることがあるので、事業をするうえでは欠かせません。


帳簿の種類|主要簿と補助簿

帳簿は、大きく「主要簿」と「補助簿」の2種類に分けられます。それぞれ、記録のまとめ方や、データの利用方法が異なる帳簿です。

ここではそれぞれの帳簿の内容について、詳しく解説していきます。

主要簿

主要簿とは、「総勘定元帳」と「仕訳帳」の2種類の帳簿のことを指します。総勘定元帳は、勘定科目ごとに記録がまとめられた帳簿で、仕訳帳はすべ全ての取引が日付順に記載された帳簿のことです。以下で詳しく解説します。

【総勘定元帳】

総勘定元帳とは、勘定科目ごとの取引内容がまとめられた帳簿で、それぞれの勘定科目の残高や合計金額を確認することができます。

たとえば、「現金」の実際の残高と帳簿の残高が合わない時は、「現金」の取引内容を確認することで、記帳漏れがないか確認することでき、正確な帳簿を作成することができます。また、「売上高」の合計金額を確認することで、目標達成度合を確認することも可能です。

【仕訳帳】

仕訳帳とは、日々の取引すべてが記録されている帳簿のことです。日付順に記載されているので、特定の日付の取引を確認することができます。

また、総勘定元帳では相手勘定科目が複数の場合、「諸口(しょくち)」と記載されるため、相手勘定科目を確認することができませんが、仕訳帳では相手勘定科目すべてを確認することができ、取引の全体像を把握することができます。

補助簿

補助簿とは、特定の勘定科目ごとの詳しい情報が記載してある帳簿のことです。補助簿を作成することによって、詳しい取引の状況を把握することができます。会社の事業状況をより正確に確認する際にも必要となります。

【現金出納帳】

現金出納帳は、現金の入金・出金を記録する補助簿です。

たとえば、〇〇会社から仕入れた、××会社へ販売したなど、入金・出金の内容も細かく記録します。そのため、現金の増減理由や残高を確認する際に役立ちます。

家庭や個人でも記録している家計簿やおこづかい帳と同じイメージで、身近に感じやすい帳簿ではないでしょうか。

【預金出納帳】

預金出納帳は、各預金口座ごとの預け入れ・引き出しを記録する補助簿です。各預金口座ごとなので、同じ銀行でも普通預金と当座預金を持っていたら、別々に記録することになります。そのため、各預金の通帳の内容を書き写すイメージです。

預金出納帳には、通帳に記載がある日付・取引先・金額以外にも、たとえば家賃の支払などを詳しく記録します。

【固定資産台帳】

固定資産台帳は、建物や機械、工具器具備品などの有形固定資産について記録した帳簿です。それぞれの取得年月日、名称、耐用年数、償却方法、取得原価、残存価格などの詳細を記録します。

固定資産台帳は、基本的に資産の購入時、決算で減価償却費を把握する時、売却・除却など資産を手放す時のタイミングで記帳します。

【売掛帳】

売掛帳は、取引先ごとに売掛金の増減を記録する補助簿です。売掛金元帳、得意先元帳とも呼ばれます。

売掛金の回収は資金繰りに直結するため、取引先ごとに売掛金の状況を把握することがとても重要です。売掛帳は取引先が増えるほど、売掛金の回収がちゃんとできているか把握することができ、請求書作成にも役立ちます。

【買掛帳】

買掛帳は、仕入先ごとに買掛金の増減を記録する補助簿です。買掛金元帳、仕入先元帳とも呼ばれます。

買掛金を期限までに支払うことは、仕入先との信頼関係に直結します。

仕入先ごとの買掛金を把握することができるので、仕入先から請求書が届いた時に自社の記録と一致しているかを確認してから支払うことができ、両社にとって正確な取引ができます。


種類別|帳簿の書き方

帳簿の書き方について、それぞれの帳簿の種類ごとに記入例を使って解説します。

主要簿

主要簿は、「総勘定元帳」と「仕訳帳」の2種類に分けられることを前述で紹介しました。

総勘定元帳は、取引を勘定科目ごとに記載し、仕訳帳は日付順にすべての取引を細かく記載します。総勘定元帳と仕訳帳の書き方はそれぞれ以下のとおりです。

【総勘定元帳の書き方】

総勘定元帳の書き方を、「1/5にボールペン10本を1,000円で購入して現金で支払った」取引を例に説明します。

まず、取引の内容を仕訳帳に記帳をします。次に、総勘定元帳へ仕訳帳に記帳した内容を転記します。今回は現金が貸方になるので貸方側へ、摘要欄には相手勘定科目の「消耗品費」を記入します。

また、総勘定元帳は仕訳帳から転記するため、仕訳帳にもアクセスできるように、仕訳帳のどのページから転記したのかを「仕丁」欄に記載します。相手勘定の消耗品費の総勘定元帳にも、同じように記録する必要があります。

<記入例>

総勘定元帳
現金 

日付

摘要

仕丁

借方

日付

摘要

仕丁

貸方

1/1

前月繰越

10,000

1/5

消耗品費

2

1,000

【仕訳帳】

仕訳帳の書き方を、総勘定元帳と同じ「1/5にボールペン10本を1,000円で購入して現金で支払った」取引を例に説明します。

取引が発生すると、まず仕訳帳に仕訳を記録することになります。今回の場合、文房具は「消耗品費」という勘定科目を使用して、摘要欄の借方(左側)に消耗品費、貸方(右側)に現金を記載し、それぞれの金額を記入します。

摘要欄には「ボールペン10本購入」など詳細に記録し、購入したお店の名前なども記載することがあります。その後、取引内容を総勘定元帳へ転記するため、総勘定元帳の転記したページを「元丁」欄に記載します。

<記入例>

仕訳帳

日付

摘要

元丁

借方

貸方

1/5

(消耗品費)

50

1,000

(現金)

1

1,000

ボールペン10本購入

補助簿

補助簿では、取引を勘定科目ごとに記帳します。それぞれの帳簿によって、記入が必要な項目も違うので、以下で詳しく見ていきましょう。

【現金出納帳】

主要簿と同様に、「1/5にボールペン10本を1,000円で購入して現金で支払った」取引を例に説明します。

「日付」に取引日、「摘要」には取引の内容を詳細に記載します。そして「収入」に現金の増加額、「支出」に現金の減少額を記入し、「残高」に取引後の現金の残高を記入します。現金の残高まで記入することで、帳簿の残高と実物の現金の残高が一致しているか、確認することが可能です。

もし残高が不一致の場合は、現金出納帳の内容に記帳漏れなどがないか確認し、残高を一致させることで、帳簿を正確に作成することができるでしょう。

<記入例>

現金出納帳

日付

摘要

収入

支出

残高

1/1

前期繰越

10,000

10,000

1/5

ボールペン10本購入

1,000

9,000

【預金出納帳】

預金出納帳も現金出納帳と同じように、取引の日付順に預金の増減を記入していきます。記録する内容も似ていて、「日付」に取引日、「摘要」に取引の内容を詳細に記載し、「収入」に預金の増加額、「支出」に預金の減少額、「残高」に取引が終わった時点での預金の残高を記録します。

また、当座預金の場合は、当座借越といって、預金残高がマイナスになると自動的に銀行からお金を借りることができる借入金を利用することが可能です。

そのため、当座預金出納帳には、当座預金の残高が0以上の場合は「借」、マイナスの場合は「貸」を記入する欄が設けられており、記入が必要です。「借」は借方、「貸」は貸方の略です。

<記入例>

当座預金出納長

日付

摘要

収入

支出

借/貸

残高

1/1

前月繰越

100,000

100,000

1/8

〇〇商店へ売上

80,000

108,000

【固定資産台帳】

固定資産台帳は法律などで決まったフォーマットはありませんが、会社や個人の確定申告の際に提出する書類に記載する「取得日」「名称」「償却方法」「耐用年数」「取得原価」「残存価額」「当期減価償却費」「減価償却累計額」「帳簿価額」などを記載することが多いです。

「取得原価」「期首減価償却累計額」を記入します。「期首帳簿価額」は「取得原価」から「期首減価償却累計額」を差し引いた額のことです。

そして「当期減価償却費」を計算し、「期首帳簿価額」から「当期減価償却費」を差し引いた額を「期末帳簿価額」に記入します。

<記入例>

固定資産台帳

取得日

名称

期末数量

償却方法

耐用年数

取得原価

期首減価償却累計額

期首帳簿価額

当期減価償却費

期末帳簿価額

X1/1/1

備品A

1

定額

8

500,000

31,250

468,750

62,500

406,250

【売掛帳】

売掛帳は、取引先ごとに売掛金の増減を記帳します。具体的には、「日付」に売掛金の増減が発生した日、「摘要」に取引内容、売掛金が増加した場合は「借方」に売掛金の増加額、売掛金が減少した場合は「貸方」に売掛金の減少額、「残高」に取引後の売掛金残高を記入します。

また、売掛金の残高は借方なので、「借/貸」には「借」を記入します。取引先に請求書を作成する場合、売掛帳の内容を基に作成することも可能です。

売掛金の回収ができていない場合は取引先に問い合わせたり、経営状況を確認して、今後売掛金を回収できるか確認する場面も発生します。

<記入例>

売掛帳
A社

日付

摘要

借方

貸方

借/貸

残高

1/1

前月繰越

3,000

3,000

1/10

売上

2,000

5,000

1/20

売掛金の回収

1,000

4,000

【買掛帳】

買掛帳は取引先ごとに買掛金の増減を記帳します。売掛金と同じように、「日付」に取引日、「摘要」に取引の内容を記入します。そして、買掛金が減少した場合は「借方」に買掛金の減少額、買掛金が増加した場合は「貸方」に買掛金の増加額、「残高」に取引後の買掛金残高を記入しましょう。

また、買掛金の残高は貸方なので「借/貸」には「貸」を記入します。仕入先から請求書が届いたら、買掛帳の請求内容が一致しているか確認することができます。

もし一致していない場合は、仕入先の請求内容が間違っている可能性があるので、問い合わせて確認したり、買掛帳が間違っていた場合は修正することで、正確な帳簿を作成することが可能です。

<記入例>

買掛金
B社

日付

摘要

借方

貸方

借/貸

残高

1/1

前月繰越

2,000

2,000

1/7

仕入

1,000

3,000

1/20

買掛金の支払

1,500

1,500


帳簿の付け方は3つ|手書き・エクセル・会計ソフト

帳簿の管理の仕方には3種類あります。ここでは手書き、エクセルや、会計ソフトを使った帳簿の付け方について、それぞれの特徴とメリット・デメリットについてまとめました。会社に合った帳簿の付け方を検討してみましょう。

手書き

帳簿を手書きで付ける場合、ノートなどに主要簿の「仕訳帳」「総勘定元帳」、必要であれば「現金出納帳」などの補助簿を作成します。

手書きの帳簿の場合は、ある程度、簿記の知識があると作成しやすいでしょう。仕訳がわからない場合などはインターネットで検索できますし、簿記の教科書などでも確認することができます。

手書きのメリット 手書きのデメリット
手書きのメリットとしては、自分で考えながら帳簿を付けるので、簿記の知識も深まりますし、経営状況を意識する機会を増やすことができます。また、ノートなどにすぐに記入できるので、手軽に記帳しやすいでしょう。 手書きのデメリットは、記載ミスや転記ミス・計算ミスが起こる可能性が高いことです。ミスがあった時は、ミスを見つけるのに時間がかかり、記帳に時間と手間がかかります。また、ミスに気づけない時も出てくるかもしれません。

エクセル

エクセルで帳簿を付ける場合、主要簿の「仕訳帳」「総勘定元帳」、必要であれば補助簿のフォーマットも作成します。

エクセルの場合は、計算式を使って「仕訳帳」から「総勘定元帳」への転記を自動化したり、自分が使いやすい形にカスタマイズすることができます。自分で作るのが難しい場合はインターネット上でフォーマットを検索し、ダウンロードして利用することも可能です。

帳簿をエクセルで管理するには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

エクセルのメリット エクセルのデメリット
普段からエクセルを使っている方は、日常業務の延長線で帳簿を作成することができるので、慣れる時間を短縮できるでしょう。また、計算式を使うことである程度、転記ミスや計算ミスを防ぐことができます。 エクセルの場合も、仕訳など、ある程度の簿記の知識が必要になります。また、計算式で自動化している場合も、計算式自体に誤りがあるとすべて誤った情報になるため、注意が必要です。

会計ソフト

会計ソフトで帳簿を付ける場合は、そのソフトにもよりますが、「仕訳帳」「総勘定元帳」どちらからも入力することが可能です。

また、会計ソフトによっては「仕訳帳」や「総勘定元帳」のような帳簿を入力するのではなく、取引自体を入力することで仕訳が自動作成され転記までしてくれます。

最近では、領収書などのデータをアップロードすることで仕訳を自動で作成できるソフトも出てきました。会計ソフトの場合、入力することで「仕訳帳」「総勘定元帳」だけでなく、「試算表」まで自動的に作成でき、決算時の手続きも楽になります。

帳簿を会計ソフトで管理するメリットとデメリットは、以下のとおりです。

会計ソフトのメリット 会計ソフトのデメリット
会計ソフトは入力すると、「総勘定元帳」への転記や「試算表」まで自動で作成されるので作成の手間が少なくて済みます。自動計算なので、計算ミスや転記ミスの心配もありません。また、最近の会計ソフトは簿記の知識があまりなくても、直観的に入力できるものも多いです。 会計ソフトのデメリットとしては、ソフト代がかかることです。使える機能を少なくすることでコストを抑えることや、キャンペーンなどで初年度は安く購入できたりもしますが、事業が軌道に乗る前の状況だと、少し負担に感じるかもしれません。

帳簿についてのまとめ

帳簿は、取引の詳細から会社の事業状況を知ることができる貴重なデータです。帳簿を分析することで、過去の情報から、今後の事業の方針を決めるのにも役立ちます。

すべての取引の詳細を記載するものから、勘定科目ごとにまとめられたものまで、帳簿の種類は様々です。それぞれの会社に合った帳簿の付け方で、ミスのないように管理することが大切です。

今回紹介した3種類の管理方法の特徴や、メリット・デメリットをぜひ参考にしてください。

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監修者プロフィール

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喜多 弘美

公認会計士・税理士

神戸大学経済学部、甲南会計大学院卒業。

2010年公認会計士試験論文試験合格後、上場会社経理部に所属し、固定資産・消費税を担当。その後、大手監査法人で会計監査、グループ会社で内部監査・人事に携わる。

2020年4月から東京都品川区で個人事務所を開業し、会計システム導入支援・記帳代行に従事。

2020年11月税理士登録。

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