ディスクロージャーとは? 意味や目的をわかりやすく解説
ディスクロージャーは、企業や金融機関が株主・投資家などの利害関係者に対して情報公開を行うことです。情報を開示することは、企業や金融機関にどのような影響があるのでしょうか。
この記事では、ディスクロージャーの意味や目的、メリット・デメリットまで具体例を用いながら解説します。今後、ディスクロージャーを行うことを検討されている経営者の方は、参考にしてみてください。
ディスクロージャーとは?
まずは、ディスクロージャーとは何か、どのような目的で行うかについて解説します。
ディスクロージャーの内容
ディスクロージャー(disclosure)とは、「情報開示」または「情報公開」という意味です。
具体的には、企業や金融機関が投資家や株主、取引先に対して企業情報を公開することです。法律によって行うことが義務づけられている場合もありますが、基本的には任意で行われます。
ビジネスにおけるディスクロージャーは既存事業だけでなく、新規事業を展開する際に投資家や株主の協力を得るための方法の1つです。投資家や株主などのステークホルダーに対して重要な会社情報を開示することで、信頼を得て、さらなる投資を促すことができるからです。
開示する情報は、投資家や株主が「この会社に投資をするかどうか」を判断する基準となるものです。たとえば、会社の財務状況が確認できるIR(Investor Relations)情報などが、公開の対象となるでしょう。
ディスクロージャーの目的
ディスクロージャーには2種類あり、それぞれ以下のような目的があります。
- 株主や投資家の保護
- 企業の透明性を高め、信頼性を追求
1.株主や投資家の保護
法律や規制(金融商品取引法や会社法、証券取引所規制など)によって行われるディスクロージャ―は、「株主や投資家の保護」を目的としています。
具体的な開示方法には、有価証券報告書の開示や決算短信の発表などがあります。
投資家や株主、取引先から見ると、公開された情報を確認することで、会社とのつながりを維持するメリットの大きさなどを客観的に判断できます。
投資家や株主の利益を守るためには、投資を継続するか否かを決定する判断材料を開示する、ディスクロージャーが重要なのです。
2.企業の透明性を高め、信頼性を追求することができる
会社の経営状態の透明性を高め、外部の利害関係者の信頼性を高めることも企業がディスクロージャーをする目的の1つです。
会社の経営に関する情報開示によって、会社の透明性をアピールすることができます。株主や投資家、取引先といった利害関係者に会社の内部状況を明確にするほど、会社への信用が増すのは当然のことです。
財務状況などが健全である場合はもちろんのこと、何か問題が発生している場合も事実を公開する方が賢明です。正確な情報を開示したうえで改善策を示すことで、取引先や投資家からの信頼を得やすくなるでしょう。
会社の経営状況や財務状況の開示は、会社の透明性を高めるとともに、会社の信頼性を追求するために有効な手段です。
企業におけるディスクロージャーのメリット・デメリット
ここからは、ディスクロージャーのメリットとデメリットについて解説します。
ディスクロージャーのメリット
ディスクロージャーには2つのメリットがあります。
①情報開示による信ぴょう性や信用力の向上
ディスクロージャーは、「法に基づいて行われるもの」と「会社の任意によって行われるもの」の2種類に分かれています。
投資家保護を目的に開示された情報は「金融商品取引法」や「会社法」によって規定されており、法的な根拠がある情報です。投資家や株主などから見ても信ぴょう性が高く、ディスクロージャーを行った会社への投資に対して安心感をもたらします。
企業にとっては、財務状況を投資家や株主などの利害関係者へ公開し、投資対象としての安心感を与えることで、取引先としての信用力の向上につながるメリットがあります。
②投資家へのアピールに期待できる
会社が自主的に行うディスクロージャーはIR(Investor Relations)とも呼ばれており、会社が任意で行う情報開示のことです。法律で開示が義務づけられている「有価証券報告書」や「決算短信」などの資料では開示されていない、投資家に対するPR情報が含まれます。
IR情報の公開には、決算発表説明会の開催や月次データの公開、ホームページの掲載といった方法があります。CSR報告やSDGsに関する取り組みなど、企業の社会的な意義を示すことが投資家へのアピールにつながるでしょう。
ディスクロージャーのデメリット
ディスクロージャーのデメリットも同様に見ていきましょう。
①多大なコストが発生する
情報開示を行う場合、会社の内部情報を適切かつ明確に示さなければなりません。情報収集や資料の準備などのために、非常に多くの人員や費用が必要になります。
②ディスクロージャーをしないと、信用が失われる恐れがある
ディスクロージャーは、会社が外部の利害関係者に対する信頼を得るために不可欠な活動であり、情報開示を行わないリスクは大きくなっています。不利益な情報の開示をせずに信用を失うリスクの高さの方が、企業にとってはデメリットです。
多少の不利益については、今後の経営努力で改善する余地があります。また、利害関係者と情報を共有することが、さらなる投資促進を促すチャンスにつながることもあるでしょう。
情報開示を行わないことは、投資家の会社に対する疑念を強め、投資を集めるチャンスを逃すことにもなりかねません。
③不利益な情報も開示する必要がある(開示情報の意図的な選別はできない)
ディスクロージャーでは会社にとって利益になる情報だけではなく、不利益になる情報も開示しなければなりません。
たとえば、業績悪化による事業縮小といった会社のイメージを悪化させる情報もすべて公開する必要があります。投資家の会社に対する投資判断が引き下げられるリスクを負うことになります。開示した情報によっては、訴訟されるリスクも生じるでしょう。
ディスクロージャーと企業
企業におけるディスクロージャーは、法律の規定により強制的に行うものと、企業が自主的に行うものの2種類に分類されます。それぞれについて、詳しく解説します。
法律で定められているディスクロージャー(強制開示)
法律で規定されたディスクロージャーは、「金融商品取引法」や「会社法」等の法律によって定められているものと、証券取引所の規則によって定められているものに分かれます。
たとえば、有価証券の発行の際には、企業情報を開示をすることが金融商品取引法によって義務づけられています。
法律で定められた強制的な情報開示は、企業の情報を開示することで「投資家が必要以上に損をしないための投資家保護としての役割」が主な目的です。
自主的なディスクロージャー(自発的開示)
自主的なディスクロージャーは、会社が投資家に対して任意で行う広報活動であり、IR(Investors Relations)とも呼ばれます。
開示される情報の内容については、特に決まりはありません。会社が投資家に対して必要と判断してまとめた情報を開示することになります。
決算説明会や会社説明会で情報開示を行う会社が多く、ホームページや特設のページに情報を掲載し、広く公開しているケースも見られます。
ディスクロージャーと金融機関
ここまでは企業について解説してきましたが、以下では金融機関のディスクロージャーについて紹介します。
金融機関が行うディスクロージャーには3つの機能があり、それぞれについて解説します。
1.取引先に対する情報開示
金融機関の取引相手に対して、当該金融機関が引き受けているリスクの範囲や量を把握するための情報開示を行います。取引相手の会社のリスク管理能力やリスク許容度について、評価が可能な情報も含まれます。
各種金融市場の参加者は、自己の判断と責任により、取引相手を選定しやすくなるでしょう。
2.価格形成の促進
ディスクロージャーによる企業の情報開示内容は、各種金融商品市場において適切な価格形成を促進するために、重要な役割を果たします。
ディスクロージャーの促進は、より安定的な市場価格の形成につながります。金融機関はディスクロージャーを積極的に利用する方向で動いていると言えるでしょう。
3.市場の健全性の維持
ディスクロージャーを行う金融機関は、各種金融市場に参加している投資家たちから高評価を獲得するために、経営努力を徹底して続けることになるでしょう。経営方針を見直したり、リスク管理に関する技術の向上や管理方針を厳格にすることが考えられます。
このような経営努力の継続が、各種金融市場における健全性を高い状態で維持することにつながっていると言えます。
ディスクロージャーについてのまとめ
ここまでの話をまとめます。
- ディスクロージャーとは、企業や金融機関が投資家や株主、取引先に対して企業情報を公開すこと
- 企業が自主的に行うディスクロージャーは、企業の信頼性を高めることが目的であり、投資家へのアピールになる
- 一方でコストがかかる、不利益な情報も開示しなければならないといったデメリットもある
ディスクロージャーのメリット・デメリットを理解したうえで、自社に合った情報公開を行い、企業の信頼向上に努めましょう。
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