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ビジネス文書の書き方 第2回 分かりやすく伝える

ビジネス文書の書き方 第2回 分かりやすく伝える

この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。

前回は「正しく書く」スキルを紹介しました。このコラムでは、それを「分かりやすく伝える」方法を考えてみましょう。


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大事なことを先に書く

あなたは自分の手がける仕事の案件について、1か月がかりで詳細な報告書を書き上げました。そのボリュームは、用紙30枚に及びます。「労作なのだから、関係者全員に全文を読んでほしい」と思いますね。しかし受け取った相手は、「ちょっと負担だな」と感じてしまうのが正直なところです。
それでは、最初に用紙1枚を付け加えましょう。この1ページ目に、概要と結論を簡潔に記載するのです。これで、読んでほしいあなたと、要点だけ知りたい関係者の双方が折り合えますね。

新聞記事は「逆三角形」の構造になっていて、重要なことほど先に書かれています。編集の都合でカットされても、読者が途中までしか読んでくれなくても、見出しとリード(導入文)だけで内容の8割を理解できるよう記述されているのです。


5W1Hで具体的に

小学校の作文の授業で「文章には『いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように』を書きましょう。そうすれば上手な作文になりますよ」と教わりましたね。これはどの言語でも同じで、不明瞭な部分があれば疑問詞(英語の5W1H)で質問されます。では、次の例文を見てみましょう。

コンサートは楽しかった。

この文にはwhoは書かれていませんが、楽しんだのは「私」であると推測できます。しかし「私」が奏者なのか聴衆なのかは分かりません。そこで、whyやhowの要素を加えてみましょう。

練習通りに弾けて楽しかった。
ノリノリでシャウトして楽しかった。


これで音楽のジャンルや書き手の属性まで、ある程度想像できますね。

ところで、whoが欠けているのに推測できるのは、なぜでしょうか。
学生時代に古文が苦手だった人も多いことでしょう。古文が難解な理由の一つに、主語が省略されていることが挙げられます。平安時代は現代より敬語の語彙数がはるかに多く、相手の身分によって敬語のランクを使い分けていました。そのため、主語を明示しなくても人物を特定することができたのです。言わずとも伝わるのは、千年前からの日本人のDNAなのかもしれませんね。


主観と客観を区別する

執筆者の視点として、「主観」と「客観」を意識したいものです。主観とは「意見・感想」、客観とは「事実」を指します。主観で書けば親近感のある文章に、客観で書くと説得力の高い文章になります。

主観:彼はとても背が高い。
客観:彼の身長は190cmです。

営業先で、次のように話したとします。

当社の売上は10年前に比べて約10倍になっていますから、業績はとても良いほうだと思います

根拠が薄く、何となく自信がなさそうに聞こえませんか?

当社の売上は、10年前はおよそ1億円、今期の目標は10億円で、業績は順調に伸長しています

ビジネスシーンでは、客観的なデータに基づいて正確に伝えることも重要ですね。


漢字と仮名の比率を適正に

次の3つを読み比べてみましょう。

1. 貴殿益々御健勝の事と御慶び申し上げます。
2. 貴殿ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
3. きでんますますごけんしょうのこととおよろこびもうしあげます。

漢字が多すぎる文は、硬くて読みにくいですね。平仮名ばかりでは文意が取れず、もっと読みにくいですね。一文中の漢字含有率は、3割程度を目安にするのが良いと言われています。常用漢字(義務教育で習う漢字)の範囲で表記を統一するのも、スタンダードな基準です。


主語と述語の係り受けを正しく

次の文の主語と述語の関係は正しいでしょうか?

私の日課は、仕事終わりにスポーツジムで汗を流します。

主語と述語だけを1文節で取り出してみましょう。

日課は/流します

これでは、かみ合いませんね。次のどちらかに直せば、正しい係り受けになります。

私の日課は、仕事終わりにスポーツジムで汗を流すことです

私は日課として、仕事終わりにスポーツジムで汗を流します


修飾語と被修飾語を近くに置く
 

次の文を見てみましょう。

できるだけ仲良くなりたいのなら、挨拶するほうがいい。

この文では、「できるだけ」は「仲良く」を修飾しています。

では、「できるだけ」の位置を変えてみましょう。

仲良くなりたいのなら、できるだけ挨拶するほうがいい。

この文では、「できるだけ」は「挨拶する」を修飾しています。

形容詞や副詞などの修飾語は、修飾される言葉の直前に置きましょう。すると、読み手の誤読を防ぐことができます。


長文は区切る


文章は、単文・重文・複文のいずれかで構成されています。

単文:1つの主語と1つの述語で成り立つ文。

私はカレーを食べた。

重文:2組の主語と述語が並立した文。英語で言う、andやbutなどの接続詞で結ばれた文です。

彼女がカレーを作り、私はそれを食べた。

複文:1組の主語と述語の中に別の主語と述語が組み込まれ、文節を修飾する文。英語で言う、whichやwhenなどの関係詞で結ばれた文です。

私は、彼女が作ったカレーを食べた。

重文や複文は、主述の関係が単文よりも複雑になります。その結果、分かりにくい語順になってしまうことがあります。

私は彼が言うことが本当かどうか疑った。


 「私は」「彼が」「言うことが」と、主語が連続しています。では、このように入れ替えましょう。
   

 彼が言うことが本当かどうか、私は疑った。

また、一文に多くの要素を盛り込むと、長文になってしまいます。そんな時は、文を区切りましょう。

ダイエットのためには食事管理が重要と言われていますが、バランスを考えずにリンゴだけを食べる方法ではリバウンドを招き、かえって以前よりも体重が増えてしまうことになり、痩せにくい体質にもなってしまいます。

 100文字の長文です。これを短文に分けてみましょう。

ダイエットのためには食事管理が重要と言われています。しかし、バランスを考えずにリンゴだけを食べる方法はリバウンドを招きます。かえって以前よりも体重が増え、さらに痩せにくい体質にもなってしまいます。

 

とてもシンプルになりましたね!


最後に推敲する


急いで書類を作成し、すぐに提出しなければならないことも多いでしょう。しかし、もう一度読み返す時間を確保したいものです。
文章を読み直して不備がないか確認する作業を、推敲(すいこう)と言います。推敲する際には、誤字はもちろん、「一読してすんなり文意が通るか」に注意したいですね。文筆のプロである小説家でも、改訂版を出す時に「大幅に加筆修正した」と断り書きを記すことも珍しくありません。
そして、自分が書いた文章の欠陥には、自分では気づきにくいものです。そんな時は、人の目を借りましょう。

ある人が、こんな文を書きました。

私はいつもですが、たまらなく爆発しそうな怒りになって頭が真っ白、10秒3回深呼吸してクールダウンしたから目を開けてもう大丈夫、とやっています。

この人は、翌日読み返して、書き直しました。

私はいつものことですが、たまらなく爆発しそうな怒りで頭が真っ白になったら、10秒3回深呼吸してクールダウンし、もう大丈夫と目を開けます。

後日、別の人がこれを見て、さらに添削してくれました。

強い怒りで頭が真っ白になった時、私はいつもこのように対処しています。目を閉じ、3回深呼吸し、10秒間クールダウンした後、「もう大丈夫」と自分に言い聞かせます。

ずいぶんスッキリしましたね!


文章には型がある

文章にはある程度、型があります。論文なら「序論・本論・結論」、物語なら「起承転結」の構成がよく知られています。そして幸いなことに、ビジネス文書や挨拶文には、お手本となる一定の書式があります。次回からは、そんな定型文を紹介します。

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bizocean編集部

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