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ビジネス文書の書き方 第29回 社内文書の書式(5) 議事録①

著者:   bizocean編集部

ビジネス文書の書き方 第29回 社内文書の書式(5) 議事録①

この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。

ビジネス文書には、一定の書式があります。今回は、議事録の書き方のコツを紹介します。


記録を取ることで業務理解が進む

議事録とは、会議・商談・討論会などの議事や結論をまとめたビジネス文書であり、これも報告書の一種です。記憶が鮮明な間に迅速に作成することが重要です。

若手社員が記録係を命じられることが多いでしょうが、慣れるまではとても難しく感じるものです。しかし、これは仕事を覚える好機でもあります。なぜなら、議事録を書くことで自分の仕事や立場への理解が進み、その理解度を上司や先輩に確認してもらう機会になるからです。


とにかくメモをする

では、議事録を上手に書くテクニックを紹介しましょう。

書くためには、まず記録することから始めなければなりません。その場での発言をできるだけ多くメモに取りましょう。ノートに書いてもパソコンに入力しても構いません。自分が速く書ける方法を選んでください。

その際に忘れてはならないのは、発言者名を記すことです。後で読み返して「これは誰の発言だったかな?」と迷うことになっては、正確な議事録を作成することができません。

会議が始まる前に、テーブルの着席位置を簡単な絵に描き、氏名を記入しておくと良いでしょう。商談であれば、いただいた名刺を着席順に並べ、発言者を確認しながらメモを取ります。

メモする際は、発言の重要度を考える必要はありません。雑談であっても、急に本題に切り替わることも多いため、話題の取捨選択をその場で行うことは避けましょう。「とにかく全部記録する」という気持ちで臨んでください。

大変な集中力を要し、会議が終わる頃にはとても疲れているかもしれませんが、しっかりメモできれば議事録作成の第一歩はクリアです。

重要な会議では、録音を残しておくこともあるでしょう。しかし音声があるからと安心してメモを怠ると、後で苦労することになります。録音からの文字起こしの作業は、大変時間を要するものです。メモを取った後で録音を聞き、記録漏れがあった箇所を書き足していくのが良いでしょう。

なお、発言をテキストデータ化してくれるソフトもあり、使い慣れている人にとっては便利なツールです。ただし、話し言葉と書き言葉は別物であるため、後で編集する作業が必要です。


メモを整理する

さて、ここからはメモを整理・編集する作業に入ります。編集とは、無駄な箇所を省き、必要な言葉を補足し、同一の内容をまとめ、順序を入れ替える作業です。その手順を説明しましょう。

1.主語と述語を加える

メモを取る際には、キーワードの抜き書きや箇条書きで記すしか余裕がないことが多いものです。これを文章化するために、主語と述語を加えていきます。話し言葉では主語が省略される傾向にあるため、「誰が」「何をする」を意識して加筆しましょう。

2.意味が通る文章に直す

話し言葉は、そのままでは書き言葉になりません。聞いている時は雰囲気で理解できたつもりでも、書き言葉にしてみると意味がよく分からないことも多々あります。そこで、無駄な言葉を省き、足りない言葉を補い、文意が通るように修正していきます。


文章整理の例

では、実際に文章を整理する例を見てみましょう。

【例1】営業会議での発言

<内容が整理されていない場合>

営業部長:

「今月の売り上げをどうやって作るのか?」

「新規先を回るのか?」

「それとも既存先に行くのか」

「そうそう、新規先といえば、例の○○商事のほうはどうなってる?」

「最近訪問した、あの何て言ったかな? △△協会の案件は取れたのかな?」

「それから、□□社はどうなってる? 最近売り上げが落ち込んでいるようだが…」

これを議事録向けに整理すると、以下のようになります。

<整理・修正例>

当月営業拡大策について

当月の売上目標達成のために、対象ターゲットを新規・既存に関わらず検討すべきである。

特に、新規の○○商事、最近訪問した△△協会の進捗確認が必要と考える。

加えて、□□社の売り上げが落ち込んでいる件は、調査が必要である。(営業部長)

ここで行った作業は、次の4点です。

  • ① 言葉を言い換えて文章らしくする
    今月の売り上げをどうやって作るのか?
    ⇒当月の売上目標達成のために
  • ② 言葉に表れていない部分を推測して補記する
    □□社はどうなってる? 最近売り上げが落ち込んでいるようだが…
    ⇒□□社の売り上げが落ち込んでいる件は【調査が必要である。】
    【 】は議事録作成者が補記したものです。この部分がないと意味が通りません。
    補記する際は、どうか躊躇しないでください。後で上司や出席者に確認してもらえば、問題はありません。自分で考え、適切な言葉を選びましょう。
  • ③ 内容を要約してタイトルをつける
    ⇒当月営業拡大策について
  • ④ 発言者名を( )で囲んで文末に挿入
    ⇒(営業部長)

【例2】インタビューでの発言

<長文が続く場合>

電話営業業務に従事するAさん:

「電話営業の特徴としては、実際に電話をこちらからかけるわけですから、こちらが伝えたいことをきちんと伝えるスキル、それと、お客様のおっしゃっていることをきちんとお聞きするスキル、特にお客様がお話しされているのにかぶせて、お話しするなんてことは多々見られます。実際に営業電話をかけて、目的を達成するためには、言葉のキャッチボールをうまく延々やっていく必要があり、特にお客様にとって営業電話は必要ないもので、聞いていただくためには延々お客様のメリットを強調したり、それからお客様の心に沿わないようなお話をしないスキルが必要になります」

これを議事録向けに整理すると、以下のようになります。

<整理・修正例>

電話営業のスキル

電話営業業務で必要となる特徴的なスキルは、以下の3点である。(Aさん)

・当社が伝えたいことをきちんとお客様に伝えるスキル

・お客様のおっしゃっていることをきちんとお聞きするスキル

(お客様のお話の途中で、当方が話す場面が散見される)

・お客様との言葉のキャッチボールを上手に行うスキル

(お客様のメリットを強調し、心に沿わないお話をしない)

ここでも、例1と同様の4点を整理・修正しています。

加えて次のように、不要と思われる部分を割愛しています。

  • ⑤ 不要な箇所を削除する
    <実際に電話をこちらからかけるわけですから、こちら>が伝えたいことをきちんと伝えるスキル
    ⇒【当社】が伝えたいことをきちんと【お客様に】伝えるスキル
  • < >が削除した箇所、【 】が補記した箇所です。

メモを編集する

「メモを整理する」の項で、

1.主語と述語を加える

2.意味が通る文章に直す

方法を説明しました。続いて必要な作業があります。

3.同一のテーマをまとめる

次に、スムーズな展開になるよう関連のある話題を入れ替え、つなぎ合わせて整理します。これが最も労力のかかる過程です。特に交渉の場面では、何度も同じことを話したり前に戻って言い直したりするため、まとめる作業が難しく感じられるのです。発言を分類して再構成し、話の筋道を整理し、簡潔に記述する必要があります。

多くの人がパソコンで文書を作成するでしょうが、ここで「切り取り&貼り付け」の機能が威力を発揮してくれます。話題を入れ替え、同じ内容をそれぞれ1か所に集めましょう。

そして重複する部分を割愛し、話を要約していきます。その際、完全に削除するのではなく、文書名を変えて保存しておくことをお勧めします。後で必要になった場合に、すぐに戻せる状態で保存しておくと便利です。

4.並べ替える

次に、これらのテーマをどのような順で並べるかを考えましょう。一番簡単な方法は、時系列で書くことです。最初の話題、次の話題、最後の話題と、話の出た順に列挙する並べ方です。会議では大切なテーマから順次話すことが多いため、その通りに書くのは無難な順序といえるでしょう。

しかし議事録や報告書は、最も立場が上の読み手に合わせて書く必要があります。つまり、「誰に宛てるのか」を意識しなければならないのです。


誰に宛てるのか

営業会議で、次の3点が議題に上ったとします。

1.新規マーケット開拓の件
2.営業管理システム更改の件
3.来期重点目標決定の件

この議事録を営業部長宛に書く場合、営業部長の関心が、

③目標⇒①新規マーケット⇒②システム

の順であれば、

  1. 来期重点目標決定の件
  2. 新規マーケット開拓の件
  3. 営業管理システム更改の件

と並べ替えるのが良いでしょう。

報告書や議事録を作成するためには、記録者がその業務をきちんと理解していることが前提になります。仕事を覚えることで議事録が書けるようになり、議事録を書くことで仕事への理解が進むのです。

次回も引き続き、議事録の書き方を紹介します。

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