ビジネス文書の書き方 第30回 社内文書の書式(6) 議事録②
この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。
ビジネス文書には、一定の書式があります。前回に続き、議事録の書き方のコツを紹介します。
整理・編集したメモは、まだ「素材」の段階
前回、議事録を書くための手順を説明しました。最初にするべき作業は、
- とにかくメモをする
- メモを整理する
- メモを編集する
の3点です。
そしてメモを整理し編集するには、次の作業が必要です。
- 主語と述語を加える
- 意味が通る文章に直す
- 同一のテーマをまとめる
- 並べ替える
さて、こうして整理・編集したメモは、まだ「素材」の段階にすぎません。この素材をどのように議事録にまとめ上げれば良いのか考えてみましょう。
議事録の形式
ビジネス文書は書式が定まったものが多く、議事録にも一定の形式があります。読む人の理解の流れが決まっているためで、その形式に従って書けばOKです。
議事録の書式は、本連載の第28回で解説した「報告書」の書き方と同様です。
議事録作成のポイント
議事録には、次の事柄を明記します。
- 決定事項/保留事項
- 決裁権限者がどう判断しているか
- 具体的な数字(金額、期日、数量など)
- 具体的な方法や手段
- 今後の予定や目標(誰が、何を、いつまでに など)
保留事項については、保留となった理由や今後の決定時期、対応などを記載すると良いでしょう。
また、次の点にも留意してください。
1.正確に
公的文書として保存されるものであり、客観的・正確な記述であることが重要です。
2.読み手が知りたい内容を
読み手が知りたい内容を、的確に記した文書に仕上げることが必要です。「誰が」「どのような目的で」読むのかを意識しましょう。
3.要旨と詳細の2段構えで
まず要旨(議題や結論)を先に、詳細(理由や説明)は後に書きます。
ボリュームとしてはA4用紙1枚程度にまとめるのが理想ですが、議事録は簡潔さと同時に、さらに詳しい内容を要求されることがあります。その場合、2ページ目以降に詳細を記した文書を添えると良いでしょう。
4.体裁を整える
読み手はまず、文書を「美しさ」で判断します。フォント、文字の大きさ、配置のバランスなどが、一見した見栄えを左右する基準になります。体裁に配慮があれば、内容もよく吟味されているだろうとの印象を与え、したがって「読むに値する」と思ってもらうことができます。
見栄えを美しくするために、次の点を意識してください。
- 適度な余白があること
- 行頭の位置が揃っているなど、構成・レイアウトが整っていること
- 要旨が的確に表現され、要点を一目で理解できること
文書形式の議事録 文例
では、いくつか文例を見てみましょう。
【文例1】
まず、お客様との商談議事録を例に考えてみましょう。
① 出席者
「お客様と当社」の場合、まずは顧客側を列記します。そして両社とも、役職の高い人から順に書きます。役職名も必ず入れましょう。
複数の部署の人が出席し、部署間に序列がある場合は、それに従います。組織図で確認すると良いでしょう。
② 要旨
重要なことを順に3項目ほど挙げ、箇条書きで記します。
③ 詳細
要旨の内容を詳しく記載します。
要旨と詳細の書き方は、本連載の第26回「報告書」と同様です。
④ 発言者
誰の発言であるかも重要です。行末に( )書きで記しましょう。
なお、次回の日程が決まっている場合はあわせて記入しておくと良いでしょう。
また、所見(議事録作成者の意見)が必要な場合と不要な場合があります。必要の有無は、本連載の第26回「報告書」をご覧ください。
Eメール形式の議事録 文例
メールを参加者に送信する形を取れば、閲覧の頻度が増して共通認識も高まり、次回以降の会議を効率良く進めることができるでしょう。
また、前回の議事録メールの文頭に今回の分を挿入・追加して作成すれば、過去の経緯をさかのぼって閲覧することができます。
【文例3】
先ほどの【文例2】をEメール仕様にアレンジしたものです。
件名:新規アプローチ業界開拓ミーティング 第2回 議事録 |
送信日時:20○○/○/〇 19:08 送信者:営業部 黒木春奈 ‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗‗ 出席者各位 本日の会議につき、下記の通りご報告いたします。 【日時/場所】 20○○/○/○ 14:00~16:00 東京本社 第一会議室 【出席者】 マーケティング室 杉浦室長、水元さん 営業部 川崎部長、三浦課長、福田さん、黒木 【議題】 新規営業アプローチ業界の開拓について ・新規営業アプローチ先の業界候補は? ・アプローチ先企業は? 【前回の会議の流れ】 ・既存の営業先の業界から脱却し、新規の業界にアプローチすることを決定 ・次回、新規アプローチ業界案を持ち寄る ・同時に、その業界を選定した理由を精査 【今回の会議の位置付け】 ・新規アプローチ業界の決定会議 【今回の会議の流れ】 ・各自、業界案を提示 ↓ ・各自が用意した資料を精査し、業界を絞り込む ↓ ・アプローチの理由を明確にする ↓ ・その業界におけるアプローチ先企業を選定 【今回の会議の要点】 ・その業界の今後の成長性 ・先方の業界にとってのメリット ・個別企業の洗い出し 【今回の会議の決定事項】 ・民宿・小規模旅館をアプローチ先とする ・まだオンラインシステムが十分でない家族経営だからこそ効率化を提案 ・ホームページの作成提案(自動予約システム、空室情報のシステムの受注) ・サイトへの誘導プロモーションの請負いなど ・個別アプローチではなく、まずは地区の選出 例:箱根、河口湖、修善寺、草津 など 【次回課題】 ・次回までに、水元さん、福田さん、黒木が各自5か所の地区を調べておく ・それを検討し、合計4か所を決定 ・次回 ○月○日(○) 14:00~16:00 同会議室にて 【添付資料】 「アプローチ先業界候補一覧」 以上 --------------------------- 営業部 黒木春奈 内線:1234 E-mail ___________________ --------------------------- |
2回にわたって議事録の書き方を紹介しました。
メモを取ることから始まり、それを文章化し、一通の議事録としてまとめ上げる作業は、慣れるまでは大変な労力を要します。しかし議事録を上手に書けるようになれば、あなたの仕事は多くの人に評価されるはずですよ。
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