このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

ファシリテーションとは?やり方や役割をわかりやすく解説

監修者:FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」  代表 / ファイナンシャルプランナー・CFP®認定者(日本FP協会会員)、証券外務員2種、国家資格キャリアコンサルタント  山内 真由美

ファシリテーションとは?やり方や役割をわかりやすく解説

会議には、さまざまな立場の人が参加します。言いたいことがあっても言えない人がいると不満を持つ原因となり、時には議論が白熱して、結論に至らないまま終了してしまうこともあるでしょう。

そのような事態を防ぐために、会議には「影で舵取り」をする人が欠かせません。

会議の進行をよりスムーズにし、参加者全員が納得する結論にたどり着くよう支援するのがファシリテーションの役割です。ファシリテーションについて理解を深めることで、日々の会議がより充実したものになります。

本記事では、ファシリテーションのやり方や役割をわかりやすく解説します。


ファシリテーションとは?

そもそもファシリテーションは、どのような意味を持つのでしょうか。また、どのような背景によって生まれたのでしょうか。ここでは、ファシリテーションに関する基本理解を深めましょう。

ファシリテーションの概要

ファシリテーション(Facilitation)は、日本語に直訳すると「容易にすること」「促進すること」になります。

集団による問題解決、アイデア創出、知的創造活動を促進する「かかわり技法」を指し、会議や研修などにおいて、活発な意見交換や情報をもとに、参加者全員で良質な結果にたどり着くように進行および支援をしていくのがファシリテーションです。

その役割を担う人をファシリテーター(Facilitator)と呼びます。

ファシリテーションの目的

ファシリテーションの最大の目的は、会議の参加者一人ひとりの当事者意識を生み出すことです。ファシリテーターの支援のもと、参加者が会議の目的と意義を理解したうえで、積極的な意見交換を行います。

設定された目的に向かって議論を深め、納得できる結論にたどり着くという過程を経ることで、参加者は自分が課題や問題を解決する当事者であることを認識できます。それにより、決まった目標に向かって主体的に行動し、他者と協力して解決策に取り組む姿勢が生まれます。

ファシリテーションが注目された背景

1960年代のアメリカで、臨床心理学者「カール・ロジャーズ」が考案した「ベーシック・エンカウンター・グループ」と呼ばれるグループワークが登場しました。そこでメンバーの相互交流を働きかけ、進行役を務めた人物が「ファシリテーター」です。

その後、ファシリテーションはコミュニティの問題解決の手法として体系化され、1970年代頃から、ビジネスの場でも会議を効率的に進める方法として徐々に発展しました。

また近年、強力なリーダーシップを持ったトップが部下に指示命令する従来のコミュニケーションスタイルでは、複雑化する課題解決が難しくなってきたことも、ファシリテーションが広まった背景のひとつといえます。

さらに、グローバル化が進み、多様な価値観を持ったメンバーが会議に参加するようになったことも大きな変化です。「暗黙の了解」では会議が成り立たなくなり、それぞれの立場から意見を出し合い、組織として意思決定を行う重要性が高まっています。


ファシリテーションが企業に与えるメリット

ファシリテーションという考え方を会議に用いることで、議論が活性化し、生産性が向上します。ここでは、ファシリテーションが企業に与えるメリットを具体的に見ていきましょう。

1. 会議が活性化する

ファシリテーターが進行役を担うことで、職場の上下関係にとらわれることなく、参加者が発言しやすくなります。

ネガティブな意見、楽天的な意見など、出てきた意見を適切なタイミングで整理してバランスを取ることが大切です。

また、緊張をほぐすためのアイスブレイクを行い、発言に偏りがないように配慮すると、参加者同士のコミュニケーションがスムーズになるメリットもあります。

多様性が求められる現代において、年齢や性別、立場を超えた意見を広く求めることで、
会議だけに留まらず、組織全体の活性化も期待できるでしょう。

2. 会議の生産性が向上する

ファシリテーターは、会議の目的や議題を確認しながら、適切に時間を配分する役割を担います。

ファシリテーターを設置することで、会議の「中だるみ」や、議論が白熱して結論にたどり着かないなどの問題を回避できるでしょう。適切なタイミングで会議の内容を振り返り、確認しながら進めていくことで、「つまらない」「決まらない」会議を軌道修正し、合意形成へと導きます。

3. 参加者の当事者意識が高まり、行動変容につながる

ファシリテーターが積極的な発言を促すことで、参加者は自分の意見を言いやすくなります。また、意見が対立した場合は、適切な質問を参加者に投げかけて議論を深めることも重要です。

ファシリテーターが参加者の意見を引き出し、まとめあげていくことで合意形成しやすくなります。それにより、会議で出た結論や目標が「自分ごと」になり、参加者の行動変容にもつながります。


ファシリテーションのやり方・場面ごとの役割

ファシリテーションは、基本的な手順を守り、場面ごとに臨機応変な対応を行うことが重要です。ここでは、ファシリテーションのやり方と場面ごとの役割、ポイントを解説します。

1. 会議のスタートとゴールを明確にする

会議は各参加者が主役であり、全員の協力のもとで作り上げていくものです。そのため、会議を始める際は、参加者全員で会議のスタートとゴールを共有することが求められます。

この会議は何を目的に、なぜこのメンバーで、何について話し合い、どんな成果を目指すのかを冒頭で確認することで、参加者が迷子になるのを防ぎます。意思決定、合意形成には最初が肝心です。

2. 参加者が持つ情報や立場について把握する

会議をスムーズに進行するには、あらかじめ会議に参加するメンバーの意見や立場をある程度、把握しておくことも重要です。特に、普段かかわりのない人同士が参加する場合や、参加者の経験に差がある場合には、遠慮や情報量の違いから、発言する人に偏りが出やすくなります

ファシリテーターは情報提供をする時間を設けたり、各参加者の立場を理解したうえで必要な場面で発言を促したりする必要があります。さらに、発言に対して適切な質問を投げかけ、全員が平等に理解を深めることを心がけましょう。

3. 会場の雰囲気を作り、活発な意見交換を促進する

「人前では、緊張して言いたいことの半分も言えない」という人も多くいます。そのような人に配慮して、参加者が考える時間を設ける、話しやすい話題を提供する、発言に対して好意的な相槌を打つなど、参加者の緊張をほぐし、自信を持ってもらう工夫をすることが大切です。

また、参加者のなかには、自分の意見を持たず、半ば義務的に参加している人もいます。参加者が話しやすい場を提供することで、興味関心を持って参加してもらえるでしょう。

4. 話の脱線・論点のズレを修正する

会議中の発言が活発になるにつれて、話が脱線してしまうのはある程度仕方がないものです。ただし、会議の時間には限りがあるため、話の流れにまかせていると、ゴールにたどり着かなくなる恐れがあります。

冷静な視点で状況を捉え、論点がズレていないか、話が脱線していないかを確認し、本筋に戻すことはファシリテーターにとって大切な役割です。

議論が白熱すると本筋に戻すことは難しくなりますが、論理的にズレを指摘し、参加者に協力を求めましょう。

5. タイムキーパーとして時間を管理しながら、進行する

1つの議題に時間をかけすぎてしまい、予定していた時刻に終わらないという事態を防ぐため、会議は予定時間を決めて議事進行することが大切です。あらかじめ約束した時間内で会議を終わらせることは、メンバーの時間を大切にするという意味でも重要です。

ただし、会議は予定通りに進むとは限りません。活発な意見が出てきたところで、次の議題に進む時間になってしまうこともあります。

もう少し議論が必要だと思われる場面では、延長をするという判断も必要でしょう。その場合には、予定時間の調整や休憩時間の変更などを参加者と確認しながら、臨機応変に対応することが大切です。

6. 結論に至った経緯をまとめ、合意形成をする

会議の最後には、話し合ったプロセスを整理し、結論を参加者と共有します。ホワイトボードなどに見える化して確認すると、認識の齟齬が発生しにくくなります。会議で決まった約束事をいつまでに、誰が、何をするかという具体的な行動まで確認しておくことが大切です。

すべての工程が完了したら、会議の参加者に活発な議論ができたことについて感謝を伝え、感想を聞いたり、会議後すぐ取り組むことなどを話してもらったりすると良いでしょう。


ファシリテーションに必要な4つのスキル

ファシリテーションが成功するかどうかは、ファシリテーターのスキルにかかっているといっても過言ではありません。ここでは、ファシリテーションに必要な4つのスキルについて見ていきましょう。

1. 準備する力

会議は段取りができていなければ、良いものにはなりません。会議の目的、目指すゴール、参加者が招集された理由、そして最適な議論の進め方や論点を、参加者全員で共有してからスタートすることが大切です。

事前にアジェンダを用意して、参加者に資料を配布しておきましょう。参加者の主張や関係性を調べておくと、事前に会議の流れをシミュレーションできるかもしれません。

また、会議室のホワイトボードなどの備品や席次といった準備も、スムーズな会議運営に欠かせません。

2. 聴く力と質問力

参加者からたくさんの意見を出してもらうには、出てきた意見に耳を傾け、時には発言者を勇気づけ、本音や意図を汲み取りながら、議論を展開していくことが大切です。そのために求められるのが「聴く力」です。

具体的には、発言者の言葉にうなずき、励まし、言い換え、要約するなど、「聴く姿勢」を示すことで積極的な発言を促します。

また、発言者の意図に不明点がある場合や、より深く聴きたい時には「質問力」が求められます。批判や批評は行わず、安全な場を提供することもあらかじめ伝え、たくさんの意見や考えを「発散」してもらいましょう。

3. 見える化する力

さまざまな意見や考え方を出し合う「発散」をした後は、意見をまとめて「収束」していく過程に移ります。

これまでに出てきた意見を整理して全体像をつかみ、議論から外すべきもの、もっと掘り下げるべきものを絞り込み、議論を展開していきます。

その際に、ホワイトボードや付箋などを活用すると、参加者の理解が深まります。付箋に議論の内容を書き出しグルーピングしたり、ホワイトボードにマトリックス(2×2の4分割表)を書き出して整理したりする方法があります。

また、「SWOT分析」などのビジネスフレームワークの利用も有効です。

4. まとめる力

話し合いで出てきたさまざまな意見をどうやって融合させ、何を結論として選ぶのか、決め方を選択します。さらに、決めたことを誰が、いつまでに、どのように実行するかまで落とし込む力も必要です。

決め方として代表的なのが、次のような方法です。

  • 最善の策を全員で選ぶ
  • 全員が妥協できる点を探し、落としどころを探る
  • 多数決を採る
  • 意思決定者(役職者)が決定する

いずれの方法を採る場合でも、しっかりと議論を重ねることで、合意を得ることができるようになります。さらに、結論から得られた行動計画をまとめ、実行内容を具体的に共有しましょう。


ファシリテーションを導入すべき会議の事例

ここでは、ファシリテーションを導入すべき会議の事例を紹介します。思い当たる点があれば、さっそくファシリテーションの導入に向けて、具体的に検討を始めましょう。

会議中の意見が少なく、意見が偏る

意見が出てこない場合に考えられる理由は、大きく分けて2つあります。

1つは、参加者が緊張しており、発言をためらってしまうケースです。まずは、会議の参加者の緊張をほぐすために、アイスブレイクとして簡単なグループワークを行いましょう。答えやすい質問を用意しておき、指名して発言を促す方法も有効です。

もう1つは、発言しすぎるメンバーがいるケースです。「今のAさんの発言について、みなさんはどう思いますか」など、他のメンバーに質問を投げかけて話題を広げる工夫が必要です。

会議の結論に、一部の参加メンバーが納得しない

意見の出し方が一方向だけで終わってしまうと、遠慮して本音が出せなかった参加者が不満を持つでしょう。また、結論へ導く際に、同意を得られないまま決めてしまった場合も「納得できない」という人が出てきます。

会議を進行する際は、少数意見を言いにくい雰囲気になっていないか、気にかけましょう。対立する意見をまとめる際には、取りこぼしがないか、発言者に偏りがないか、発言をためらっている様子の人はいないか、確認しながら議論を進めていきましょう。


ファシリテーションについてのまとめ

ファシリテーションのやり方や役割を、わかりやすく解説しました。

会議を影で舵取りする役割を担うファシリテーターは、活発な意見交換を促し、情報を整理することで会議の進行を支援します。さらに、意見を言いたくても言えない人がいないかどうかを確認しながら、全員が納得できる結論に導くことを意識する必要があります。

ファシリテーションのスキルは、実践を重ねていくことで徐々に上がっていくものです。基礎的な知識を身に付けたら、なるべく早く実践に移りましょう。

また、交渉力や時間管理術など、ファシリテーションのスキルは、ビジネスのあらゆる場面に応用できます。一部のリーダーだけでなく、各従業員が幅広くファシリテーションについて学ぶことで、日々の業務に活かせる場面が数多くあるでしょう。

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

監修者プロフィール

author_item{name}

山内 真由美

FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」 代表 / ファイナンシャルプランナー・CFP®認定者(日本FP協会会員)、証券外務員2種、国家資格キャリアコンサルタント

メガバンクの資産運用部門にて投資信託、外貨預金等の販売に3年半従事した後、FPとして独立開業。

主に子育て中の家族からの運用相談、家計相談、およびライフプラン相談に応じている。

またマネーライターとしてお金に関する記事の執筆活動を通して、運用に関する基礎知識を発信している。

この監修者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ