中小企業が直面しているDX推進に向けての課題とは?
DXは市場変化に素早く対応したビジネスモデルを構築するほか、業務効率改善も期待できます。AIやクラウドサービスに作業を依頼し、業務を自動化できるからです。
ただし、中小企業を中心にDXの推進は停滞している状況です。「DXがどんな内容かわからない」「どういったメリットがあるのか」など、実態を把握できていない声も多く聞かれました。
今回の記事では以下の3点について解説しています。
- 中小企業のDX推進を妨げる課題
- DXの遅れによって発生するデメリット
- 中小企業がDXを導入する3つのメリット
中小企業のDX推進を妨げる4つの課題
多くの中小企業でDXが実現しない理由は以下の4点が考えられます。
- DXへの理解不足
- ITスキルに長けた人材不足
- 業務の属人化
- 過度なアナログ文化への傾斜
それぞれ詳しく解説します。
課題①:DXへの理解不足
会社の経営方針や予算の割り振りを決める経営層で、DXへの認知が進んでいません。㈱ネットオンが採用サイト作成ツール「採用係長」を利用している中小企業を対象に実施した調査では、74.1%の企業が「DXを知らない」と回答しました。
一方、DXに取り組んでいる企業はわずかわずか9.6%に留まっています。現場の社員がDXの必要性やメリットを感じていたとしても、経営層が動かなければDXは推進されません。
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)は急速に変化する市場ニーズに対応するため、最新のデジタル技術を活用してビジネスモデルの転換・創出を測る意味合いを持ちます。
クラウドサービス・AI・Iot機器など、自社に合ったデジタル技術を駆使して新商品開発の効率化や他事業への参入を図り、業績拡大を実現します。同時に業務の自動化も進められるため、社員の業務負担軽減も実現可能です。
DXの推進は社員と企業双方に多大なメリットをもたらす改革です。しかし現状多くの中小企業の経営層に目的やメリットが伝わっていません。中小企業の日本企業の99.7%を占める中小企業での認知が進まない限り、日本経済全体の停滞が予想されます。
課題②:ITスキルに長けた人材不足
優れたITスキルや豊富な経験を持つIT人材の確保は困難な状況です。経済産業省が試算したデータでは2020年時点で既に30万人が不足しており、市場ニーズの拡大が続くと2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると試算しています。
さらに、人材が東京・神奈川・大阪に集中しており、地方での人材難が深刻化しています。基幹システムの再構築・新たに購入するデジタルツールの選定・セキュリティ対策など、DX推進に向けて優れたITスキルを持った人材は欠かせません。
IT人材を確保できないとDXを推進するためにどのような作業から行うべきかわからず、具体的な展望が描けなくなります。市場ニーズの変化に対応できず多額の利益損失につながるほか、情報漏洩のリスクが高まります。
専門会社とのコンサルティングサービス締結や外部研修を利用したITスキル習得など、ノウハウを蓄積するための対策が重要です。
課題③:業務の属人化
特定の従業員へIT関連の業務を任せている状態は非常に危険です。転職や定年退職で不在になった場合、後継者がいないとノウハウを継承できません。
特に優れたスキルを持つIT人材は市場に不足しており、中途採用での採用も年々難しくなっています。社員にITスキルの向上を目的とした教育を行い、後継者として育てる形が現実的な対応策です。
ただし、一人ではなく複数人にITスキルを学ぶ場を設けてください。一人だけだと担当者が出張・休暇・退職で不在になった場合、アクシデントに対応できません。また、基幹システムに蓄積された企業データも活かせなくなります。
課題④:過度なアナログ文化への傾斜
対面形式を過剰に重視している場合、多様な働き方の実現は望めません。オフィスへの出社義務や対面での顧客商談など、対面形式での業務進行を命じられるからです。
コミュニケーションを図りやすいメリットもある反面、業務効率化は望めません。web会議ツール・ビジネスチャット・ファイル共有ツールなど、オンラインツールへの理解向上が重要です。
また、契約書や見積書などの帳票書類も紙での保存以外を認めていない場合、ペーパーレス化は進まず、印刷費用が増大します。
DXの遅れによって発生する中小企業の3つのデメリット
政府はDX推進の遅れを2025年の崖と称しています。特に業務の中核を担う基幹システムの老朽化によって、様々なデメリットが生じます。内容を3点にまとめました。
- ランニングコスト増大
- 利益損失
- 企業データの流出リスク増大
それぞれ詳しく解説します。
デメリット①:ランニングコスト増大
基幹システムが老朽化すると、機能維持のために必要なランニングコストが増大します。
システムダウンしないよう、定期的なメンテナンスが必要だからです。
基幹システムは生産管理・受発注管理・購買管理など、業務の中核を担う機能を多数搭載しています。トラブルが起きると業務の大部分が停止し、取引先に多大な迷惑が掛かります。信頼喪失に伴う利益損失を回避するためにも、定期的なメンテナンスが必要です。
ただし、導入してから時間が経過すると点検箇所も増え、年々ランニングコストが高騰します。社員育成や設備投資に掛ける費用が無くなるため、企業経営を圧迫する前に基幹システムの再構築をご検討ください。
デメリット②:利益損失
市場の変化に応じたビジネスモデルを構築できず、顧客ニーズを汲み取った商品やサービスを展開できません。顧客満足度が上がらず、購入単価やリピート率が低下します。
また、基幹システムの老朽化で各部門間のデータ連携が上手くいかず、売上が伸びない課題の発見に時間が掛かってしまいます。
デメリット③:データ損失のリスク増大
犯罪者が仕掛けてくるサイバー攻撃に対応できず、取引先のデータを流出する可能性が高まります。ランサムウェア・DDos攻撃・パスワードリスト型攻撃など、多彩な攻撃を仕掛けてきます。
近年はより確実にターゲット企業の情報を入手するため、セキュリティガードが甘い中小企業を狙ったサプライチェーン攻撃も増加しており、中小企業も他人事では無くなっている状況です。
取引先のデータが漏れると社会的信用を失い、今後の経営が厳しい状況に追い込まれます。
中小企業がDXを導入する3つのメリット
以下の3点がDX導入によって得られるメリットです。
- 業務の生産性向上
- 働き方の多様化
- BCP(事業継続計画)の拡充
それぞれ詳しく解説します。
メリット①:業務の生産性向上
システム管理者の作業負担を軽減できます。クラウドサービスやAIの利用で、業務を自動化できるからです。例えば、基幹システムをクラウドで再構築した場合、サービスを提供しているベンダー側にアップデート作業を依頼できます。
プログラムが自動アップデートされるため、管理者が作業を行う必要はありません。同様にシステムトラブルがあった場合もベンダーが対処します。よって他の業務に割く時間を確保できます。
また、部門間でのデータ連携が改善され、別々のシステムにログインする必要が無くなります。作業効率向上とミスの削減を両立でき、業務の生産性向上につながるのです。。
メリット②:働き方の多様化
web会議ツール・グループウェア・ファイル共有ツールなどを導入し、テレワークが実現できる環境が整うと在宅勤務を導入できます。在宅勤務は通勤時間の有効活用や交通費削減など、社員と企業双方に多大なメリットをもたらす働き方です。
それに加え、結婚や出産を経ても働ける環境が整い、優秀な女性社員の退職を防げます。
表:在宅勤務導入のメリット
社員 |
企業側 |
|
|
メリット③:BCP(事業継続計画)の拡充
自然災害の被害を受けたとしても、最短で業務への復旧を実現可能です。業務に必要なデータをクラウド上に保存しておけるからです。
ベンダー側はデータセンターにも企業データを保存しているため、データを失うリスクを最小限に抑えられます。BCP対策強化によって取引先に安心感を与えられ、今後も継続的な取引を望めます。
中小企業は2025年までにDX課題を解決し段階的に進めていく事が重要
今回の記事では以下の3点を紹介しました。
- 中小企業におけるDX実現への課題
- 2025年の崖がもたらすデメリット
- DX実現による中小企業が受けるメリット
DX推進への対応が遅れると市場ニーズの変化に対応できず、売上減少につながります。利益拡充や業務効率化アップにもデジタル技術を活用したビジネスモデルの転換が求められています。
ただし、一気に作業を進める必要はありません。基幹システムの再構築やクラウドサービスの導入には一定のコストも掛かるため、計画的な導入が重要です。
ペーパーレス化やオンライン商談の実施など、可能な範囲で段階的に作業を進めてください。