2022年1月に改正された電子帳簿保存法のポイントをわかりやすく紹介!
完全ペーパーレス化の達成を手助けする電子帳簿保存法は、企業にとってぜひ導入したいものです。しかし、導入までの要件が厳しいことでも知られており、安易に導入できるものではありません。
ただ、徐々に電子帳簿保存法の改正が進み、導入しやすい環境が整いつつあるなか、2022年1月にも新たな改正が行われました。
そこでこの記事では、2022年1月に改正された電子帳簿保存法のポイントについてわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法とは、各種帳簿や取引書類について、電子データでの保存を可能とする法律です。
通常、各税法では各種帳簿や取引書類について、原則として7年から10年の保存が義務付けられています。
従来の紙で保存する方法では保存スペースを確保しなければならず、また書類自体や内容を確認したい場合、容易に検索することができませんでした。
このような問題に対応するために誕生したのが、電子帳簿保存法です。電子帳簿保存法は1998年に施行されましたが、当時はまだ紙の書類をスキャンして保存する方法に対応していませんでした。
その後、2005年のe-文書法の施行に伴い、電子帳簿保存法が改正されて紙の国税関係書類をスキャナで取り込んだ上で電子データ化できるようになったのです。
2015年には、スキャナだけでなくデジタルカメラなどのカメラ機器での電子化が許可され、そして2020年10月の改正ではキャッシュレス決済において領収書が不要になるなど、導入しやすい法律として緩和が進んでいます。
電子帳簿保存法の改正ポイント
2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法では、帳簿や取引書類の電子保存が容易になりました。具体的には、次の点が改正されています。
事前承認制度の廃止
改正前の電子帳簿保存法では、帳簿や書類を電子データとして保存する場合、税務署長の事前承認を得る必要がありました。
原則として、運用開始の3ヶ月前までに税務署長に申請して認証を受けて初めて導入できるルールでしたが、今回の改正により事前承認制度自体が廃止されました。
これによって、導入と判断して準備を進め開始できる状況であれば、すぐに運用開始できるようになったのです。
ただし、すでに申請書を税務署に提出し承認されている事業者は、従前の規定が適用されるので注意しましょう。
システム要件の緩和
最低、以下3つの要件を満たせば電子保存できるようになったため、導入のハードルがより下がりました。
- システム関係書類等を備え付けること
- 保存場所に電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタの設置、機器を操作するためのマニュアルを設置して、画面や書面に整然とした形式で明瞭な状態で速やかに出力できること
- 税務職員による電子データのダウンロードの要求に応じることができること
優良な電子帳簿の新設
国税関係帳簿では優良な電子帳簿としての要件を満たして、電子データの記録による備付けや保存を行い、届出書を予め所轄税務署長に提出している保存義務者に対しての優遇措置が、新たに導入されました。
これにより、優良な電子帳簿に記録された事項に関して申告漏れが生じても、申告漏れに対して課される過少申告加算税が5%軽減されます。
ただし、申告漏れについて隠蔽や偽装した事実があるケースでは、本措置が適用されないので注意してください。
検索項目の緩和
検索要件の記録項目について、以下の3項目に限定されました。
- 日付、金額、取引先の項目で検索できること
- 日付または金額については範囲指定できること
- 2以上の項目を組み合わせて検索できること
上記により、 税務調査の際に電子データをダウンロードした上で提示することができれば、範囲指定や項目組み合わせ検索への対応が不要となりました。
適正事務処理要件の廃止
スキャナ保存において、内部統制として不正防止の観点から必要になっていた、以下の適正事務処理に関連する要件が廃止されました。
- 相互けん制
- 社内規程の整備
- 定期的な検査
また、定期検査において必須となっていた原本が不要になり、スキャンした後に廃棄できるようになりました。
タイムスタンプ要件の緩和
スキャナ保存において、従来までは受領者が自署して3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、改正によって自署不要で、最長約2ヶ月と概ね7営業日以内にタイムスタンプを付与する形での運用が可能となりました。
電子取引の電子データ保存の義務化
データで授受した請求書などの国税関係書類は、従来は紙または、マイクロフィルムでの保存が認められていました。
今回の改正により、紙及びマイクロフィルムでの保存が認められなくなり、電子保存のみとなりました。
罰則規定の強化
スキャナ保存された電子データ及び電子取引の取引情報に係る電子データに関して、隠蔽や仮装された事実が発覚した場合の罰則が強化されました。
具体的には、その事実が発覚した場合は、申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されます。
電子帳簿保存法の改正内容に注意しよう!
電子帳簿保存法の改正で一部要件が緩和されたため、より導入しやすい法律になりました。
一方で、すでに運用している企業は、優良な電子帳簿に対応するのかを判断する必要があります。電子帳簿保存法の改正内容に注意して、法令を遵守しましょう。