第8回:所得控除の種類とそのやり方2(医療費控除)
所得控除がテーマの確定申告のコラムですが、ここでは医療費控除について説明していきます。
医療費控除とは、多くの医療費を支払った年の所得税が軽減される制度です。
医療費控除の要件や対象となる金額、特例などについて解説しているので、参考にしてください。
医療費控除の概要
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記「医療費控除の対象となる金額」参照)の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
医療費控除の対象となる医療費の要件
- 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となる)
医療費控除の対象となる金額
- ① 原則
(支払医療費合計 – 保険金等補填金額)- 10万円 - ② 総所得金額が200万円未満の場合
(支払医療費合計 - 保険金等補填金額)- 総所得金額の5%
保険金等補填金額とは、例えば、生命保険などによる入院給付金、高額療養費、出産一時金などをいいます。
なお、給付対象の医療費からのみ引きます。引ききれない場合、他の医療費から控除はしません。
通院費は医療費控除の対象か
治療のための通院費も医療費控除の対象です。この場合の通院費は、交通機関などを利用したときの人的役務の提供の対価として支出されるものをいいます。
したがって、自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代等といったものは、医療費控除の対象になりません。
確定申告書の添付資料
医療費の領収書や「医療費のお知らせ」から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付してください。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
セルフメディケーション税制とは、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、一定額について、所得控除できる制度です。セルフメディケーション税制は医療費控除と重複適用できません。
なお、通常は、購入した医薬品等が本税適用物品かはレシートに記載されています。
セルフメディケーション税制の要件
セルフメディケーション税制の要件は、自己がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っていることです。
証拠書類として、これらの領収証は保管しておくようにしましょう。
セルフメディケーション税制の金額
セルフメディケーション税制による所得控除額は次のように計算されます。
所得控除額※ = 特定一般医薬品等購入費合計額 – 保険金等補填金額 – 12,000円
※ただし、88,000円が上限になります。
つまり、保険金等補填額がないものとすると、12,000円以上のセルフメディケーション税制適用医薬品等を購入した場合、所得控除の計算対象となり、購入合計額10万円まで、上限88,000円として所得控除が増加します。
引用・参考:国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
歯の治療費
歯の治療に関しては、保険適用外となって、治療費が高額になる場合もあります。このような保険適用外の治療費も、原則として、医療費控除の対象になります。ただし、一般的に、その病状などに応じて支出される水準を超えるような治療費等は医療費控除適用対象外です。
金やポーセレンによる治療
金やポーセレンは、歯の治療材料として一般的に使用されていますので、医療費控除の対象です。
歯の矯正
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける者の年齢や矯正の目的などからみて社会通念上歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象です。
この場合、客観的に証明ができるように、医師の診断書等を保存しておくようにしましょう。
他方、美容のために歯科矯正を受ける場合などの治療費は、医療費控除の対象外です。
ローン払い等による歯の治療費
ローン払い等の場合、医療費控除の適用時期は、そのローン契約が成立した日です。あくまでもローン会社による立替払いであって、医療費総額の支払いは行われます。つまり、患者がローンを組んだなどの資金調達方法は問わないという考え方です。
医療費控除の際には、総支払金額を証明する資料が必要ですので、ローン契約書等を必ず保管してください。
海外で支払った治療費
海外で支払った医療費も、日本国内に居住している人であれば医療費控除の対象になります。
医療費としては、その支払った日の相場レート(仲値)で換算して算出します。この場合も、医療費控除全般に共通していえることですが、保険等で補填される場合は、その金額を差し引いた金額が、医療費控除の対象になりますので、ご注意ください。
引用・参考:国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」