確定申告|所得控除で節税対策 雑損・医療費控除やふるさと納税について解説
確定申告の基本
確定申告の基本、今回は控除についてです。控除とは、「一定の金額を差し引く」という意味です。しっかりと控除について理解しておき、正当な形で納税額を減らしたいものです。
ここでは、所得控除、雑損控除、医療費控除、寄付金控除について解説していきます。
1.所得控除とは
所得税法において所得控除の制度を設けているのは、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味しようとするためです。
それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合には、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引きます。
所得税額は、その残りの金額を基礎として計算されます。
所得控除の種類には、
- ①雑損控除
- ②医療費控除
- ③社会保険料控除
- ④小規模企業共済等掛金控除
- ⑤生命保険料控除
- ⑥地震保険料控除
- ⑦寄附金控除
- ⑧障害者控除
- ⑨寡婦控除
- ⑩ひとり親控除
- ⑪勤労学生控除
- ⑫配偶者控除
- ⑬配偶者特別控除
- ⑭扶養控除
- ⑮基礎控除
があります。
年末調整では計算されないものには、
①雑損控除
②医療費控除
⑦寄附金控除
があります。
今回は、この3つの控除について説明をいたします。
2.雑損控除
雑損控除とは、災害または盗難もしくは横領によって、下記の「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産について損害を受けた場合等に、一定の金額の所得控除を受けることができます。
雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は、災害減免法による所得税の軽減免除があり、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べます。
雑損控除の要件は、損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまることです。
- (1) 資産の所有者が①納税者又は②納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)の方であること。
- (2) 棚卸資産もしくは事業用固定資産等または「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること。
(注)「生活に通常必要でない資産」とは、例えば、別荘など趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)も含まれます)や貴金属(製品)や書画、骨董など1個または1組の価額が30万円超のものなど、生活に通常必要でない動産をいいます。
損害の原因は、
- ①震災風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- ②火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- ③害虫などの生物による異常な災害
- ④盗難
- ⑤横領
に限られますので、詐欺や恐喝の場合には雑損控除は受けられません。
3.医療費控除
医療費控除は、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)との選択適用をすることになりますので、いずれか一方を選択して適用することになります。
したがって、セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択した納税者は通常の医療費控除を受けることができず、通常の医療費控除を受けることを選択した納税者はセルフメディケーション税制の適用を受けることはできません。
また、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、この特例の対象となる特定一般用医薬品等購入費以外の医療費の額が通常の医療費控除の適用下限額(10万円と総所得金額等の5パーセント相当額のいずれか低い方の金額)を超える場合であっても、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。
一旦選択をしたら、その後において納税者が更正の請求や修正申告書により、セルフメディケーション税制から通常の医療費控除へ適用を変更することはできません。
同様に通常の医療費控除を受けることを選択した場合も変更できません。
①通常の医療費控除
一定の額の医療費を支払ったときは、確定申告を行うことで所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。
納税者や納税者と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費があるときは、次の算式によって計算した金額が医療費控除として所得金額から差し引かれます。
1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費に限って控除の対象となります。未払となっている医療費は、実際に支払った年の控除対象となります。
通常の医療費控除の適用を受けることを選択した方は、セルフメディケーション税制を受けることはできません。
その年中に支払った医療費-保険金などで補填される金額-10万円又は所得金額の5%のいずれか少ない金額=医療費控除額(最高200万円)
②医療費控除の特例
健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方が、平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合には、一定の金額の所得控除(医療費控除の特例)を受けることができます。
セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。
4.寄附金控除
寄附金控除とは、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合に、所得控除を受けることができるものです。これを寄附金控除といいます。
寄附金控除の金額の計算は次のとおりです。
次の(1)または(2)のいずれか低い金額 - 2000円 = 寄附金控除額
- (1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- (2)その年の総所得金額等の40パーセント相当額
なお、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金および公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除に代えて、税額控除を選択することができます。
5.ふるさと納税
ふるさと納税は、ワンストップ特例を使用しない場合は確定申告を行うことになり、寄附金控除により国税部分の所得控除を受けることになります。
ふるさと納税の控除額の計算は
- ①所得税からの控除 =
(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
次に住民税ですが、「基本分」と「特例分」があります。
- ②住民税からの控除(基本分)=
(ふるさと納税額-2,000円)×10%
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
- ③住民税からの控除(特例分)
= ふるさと納税額 - 2,000円)×(100%-10%(基本分) -所得税の税率)
住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は、この計算で控除額が決定します。
2割を超える場合は、住民税の特例部分の控除額は(住民税所得割額)×20%となります。
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