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[契約書作成] 第5回:合弁契約(ジョイントベンチャー契約) 作成上の留意点

著者:柏木総合法律事務所 弁護士  金子 朝彦


[契約書作成] 第5回:合弁契約(ジョイントベンチャー契約) 作成上の留意点

ジョイント・ベンチャー契約書

ジョイント・ベンチャー契約書

1.はじめに

今回は、合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)を締結する際の留意点について検討してみたいと思います。

合弁会社は、「複数の企業(多くの場合二社)が、ともに高い比率の出資を行いかつ人員派遣等を通じ経営に能動的に参加する会社である。新規分野への進出のコスト節減・リスク分散の目的のほか、技術力のある企業と販売力のある企業が相互補完の目的、あるいは外国企業単独の直接投資を認めない発展途上国への進出の目的等のため行われる。」(江頭憲治郎『株式会社法 第7版』62~64頁(有斐閣、2017)として、複数の企業の力を集結させて新規事業を行う際によく利用されます。

合弁会社の形態としては、株式会社や合同会社のように法人の形態をとるものや、法人格のない組合のものもあります。

会社形態のものについては、合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)を締結せずとも、定款にて規定(種類株式の活用等)することにより、カバーすることも可能ではありますが、定款は、契約書と異なり、会社法等に根拠を有しない事柄まできめ細かく決めることは通常しないことから、合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)が好まれるようです。

本稿では、もっともよく使われる、2社が集まって、新規に株式会社を設立する形態の合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)を作成する際の留意点を説明します。今回も、末尾に契約書のひな型を掲載いたします。

2.合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)作成上の留意点

それでは、具体的に条文に沿って合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)作成上の留意点について検討しましょう。

(1) 合弁会社の目的

第1条 (目的)

本契約に基づき、甲及び乙は、〇〇〇〇の運営事業(以下「本事業」という。)に関して、共同出資による合弁会社(以下「合弁会社」という。)を創設する。

これは、合弁会社において行う合弁事業を定める条文です。冒頭に述べたとおり、合弁会社は、複数の企業が共通の目的を有して設立しますので、参加者の目標とするところに齟齬が出ないよう、目的を明確にすることが大事です。

(2) 合弁会社の設立

第3条 (合弁会社の設立)

  • 甲及び乙は、令和  年  月までに合弁会社を設立する。
  • 合弁会社の資本金は、金    円とし、甲が    円、乙が    円ずつ出資し、1株金    万円の発行価額により、甲は49株、乙は51株を引き受けるものとする。

第3条は、出資金の額及び引受株数等を定める規定です。何パーセントの株式を有するかにより、株主総会での意思決定等の主導権を握れるかが変わってきますので、どう決めるのかは、非常に重要です。なお、過半数を持っていれば、株主総会での通常決議を可決することはできますが、特別決議まで可決したいのであれば、3分の2以上必要になります。

(3) 会社の機関構成

第4条 (本会社の機関)

  • 甲及び乙は1株につき、1議決権を有する。
  • 合弁会社は、取締役会設置会社とし、取締役の員数は〇名とし、甲は〇名、乙は〇名を指名することができるものとする。甲及び乙は、相手方が指名した取締役候補者について、株主総会において選任賛成の議決権を行使するものとする。
  • 代表取締役は、甲が指名して乙が承認することによって選定する。乙は合理的な理由がない限り、甲の指名を承認しなければならない。
  • その他の合弁会社の設立手続の詳細及び合弁会社の定款は、甲乙協議のうえ別途定める。

第4条は、新会社の機関構成について定める条文です。取締役を何名とするのか、どちらの会社が何名の候補者を選任することができるのか、取締役会、監査役は設置するのか等、事前に決めておくべき事項は、この時点で確定してしまう方が望ましいです。

(4) 株式保有率

第5条 (株式保有率)

  • 第3条の手続の結果、合弁会社の発行済み株式の株式保有率は、下記のとおりである。
    • (1) 甲:49%(49株)
    • (2) 乙:51%(51株)
  • 甲及び乙は、別途当事者間で協議が整わない限り、前項の出資比率を保持するものとする。

第5条は、合弁契約中、基本的には、本条で定めた持ち株比率を保持する旨を定めた規定です。合弁契約によっては、増資の際もこの割合を保持するために、まずは、参加者に増資を引き受けるか否か決定する権利がある旨を定めるものもあります。

(5) オプション

第6条 (甲のオプション)

  • 甲は乙に対して、合弁会社設立後3年が経過して以降、乙に対して書面で通知することにより、甲の保有する合弁会社株式の全部又は一部を売却することができる。
  • 前項の場合、甲及び乙は、甲の保有する合弁会社株式の売却価額について協議するものとする。
  • 甲が乙に対して第1項の通知をしてから1か月以内に、甲乙間において、売却価額について合意できなかった場合には、甲の指定する公認会計士の算定する売却価額に基づいて、甲は乙に対し、甲の希望する合弁会社株式を売却できるものとする。
  • 前項の規定にかかわらず、乙が、甲の提示した売却価額での買取りを拒んだ場合には、甲は、乙ではなく第三者に対して、合弁会社株式を売却することができる。
  • 前項の場合、乙は、甲の決定に反する株主総会決議等を行うことができない。

第6条は、甲が乙に対して、株式を買い取らせることができるとのプット・オプションに関する規定です。このように、合弁契約には、一定の事由が生じた場合に、特定の当事者に株式を買い取る権利を発生させるコール・オプションや、特定の当事者に株式を買い取らせることのできるプット・オプションが規定されることが多いです。一定の事由としてよく挙げられるのは、一方当事者の合弁契約上の債務不履行です。

(6) 重要事項の決定

第8条 (重要事項の決定)

合弁会社が、以下の事項を決定するにあたっては、甲の承認を得なければならないものとする。

  • (1) 合併、株式交換、株式移転、会社分割に関する事項
  • (2) 事業譲渡、事業譲受に関する事項
  • (3) 新株、新株予約権又は社債の発行
  • (4) 資本金の変更
  • (5) 定款の変更
  • (6) 重要な契約の締結
  • (7) 金〇億円を超える投融資
  • (8) 代表取締役の交代
  • (9) その他合弁会社に特に重大な影響を与える事項

第8条は、マイノリティー出資者も含め、両者合意の上でなければできない事項を定めた規定です。このように、合弁契約では、会社法に基づく決議よりも、要件を加重する規定を設けることが多いです。この点については、種類株式にて、会社法に根拠を持たせる形で行うことも可能です。

(7) 契約解除事由

第10条 (本契約の解除)

  • 甲は、以下の事由が発生した場合、本契約を解除することができる。
    • (1) 合弁会社の経常損益が、設立後〇年内に正の値にならなかったとき
    • (2) 乙の支払停止または乙についての破産等法的倒産手続開始の申立て
    • (3) 乙の債務不履行による本事業関連契約の終了
    • (4) 乙が、本契約上の義務に反する行為を行ったとき
    • (5) その他、甲乙間の信頼関係が破壊されたと甲が判断したとき
  • 甲が本契約を解除した場合において、甲が合弁会社の株式を有する場合には、甲は、乙に対して、自らが保有する合弁会社株式の全部を買い取らせることができる。
  • 前項の場合において、甲の売却する合弁会社株式の売却価額及び手続については、第6条に準じて決定するものとする。

第10条は、合弁契約の解除について定める規定です。合弁事業もビジネスですので、常にうまく行くとは限りません。また、参加当事者間の関係も、常に良好とは限りませんので、解除事由を定めて、万が一の場合には、合弁関係から離脱できるようにしておくべきです。

(8) デッドロック

第11条 (デッドロック)

  • 本契約第8条の重要事項の決定に関し、甲乙間に見解の相違が生じ、かつ、協議開始から〇〇日経過してもかかる状態が解消されない場合、甲及び乙は、他方当事者に対し、合弁会社の解散を請求することができる。
  • 前項の場合において、相手方当事者が合弁会社の解散を望まない場合、当該当事者は、解散請求をした当事者が保有する合弁会社株式を自ら買い取るか、第三者をして買い取らせることができる。
  • 前項の場合、合弁会社株式の買取り価格は、第6条に準じて決定するものとする。

第11条は、デッドロックについて規定した条文です。第8条のように、重要事項について両者の承認が必要であるとの建付けとした場合、両者の関係が良好であれば問題ありませんが、見解が対立したときに、重要事項の決定ができず、合弁会社の事業が停止してしまう恐れがあります。本条項は、そのようなデッドロック状態となった際の対処法について規定した条文です。これも合弁契約書にはよく見る条文です。

以上が、合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)の各条項の解説及び留意点になります。

以上

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著者プロフィール

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金子 朝彦

柏木総合法律事務所 弁護士

2010年弁護士登録(第一東京弁護士会)、公益財団法人日本動物愛護協会監事(2016~)
長谷川俊明法律事務所を経て、現在、柏木総合法律事務所。主な担当事件は、国内民商事訴訟、国内及び国際商取引、国内外企業法務、人事・労務法務等。
著書に、『最新 債権法の実務』(共著・新日本法規出版株式会社)、『最新モデル 会社契約 作成マニュアルCD付』(共著・新日本法規出版株式会社)等がある。

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