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自社ウェブサイト上への写真掲載の注意点

自社ウェブサイト上への写真掲載の注意点

この記事の著者
永世綜合法律事務所  弁護士 

もしもし、ツカサ商事株式会社でアプリ開発・宣伝担当をしている町田と申します。はじめまして。ちょっと顧問弁護士の熊谷先生にお尋ねしたいことがあって本日は電話をしました。お時間よろしいでしょうか。

もちろんです。どんなご用件でしょうか。

当社はアプリ開発もしており、画像加工アプリをリリースしたいと思っています。現在、そのアプリの説明用ウェブサイトを作成しているのですが、説明の中で、インターネット上で拾ってきた画像を載せて、それを加工する方法を載せようと思っています。社内で検討したところ、そんなことしていいのかね、という話になったので教えていただきたいと思いまして。

それは著作権の問題ですね。

著作権という言葉はよく聞くので知っていますが、有名な音楽とか絵画の権利ではないのでしょうか。個人の撮影したような写真なので、著作権は大丈夫ではないかという意見も社内では出たのですが、間違っているのでしょうか。

難しい話をすると、著作権が発生する著作物とは、次のように著作権法に規定されています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

この定義から、著作物とは、

  1. 思想又は感情
  2. 創作的に
  3. 表現したもの
  4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲

であることが要件となっています。

そうすると、この写真1などは、単なる風景写真ですから、思想や感情もないですし、そこにある風景ですから創作的でもないですね。でも、写真なので表現したものには当たると思いますし、美術にも該当するでしょうが、結論としては、著作物ではない、ということになりましょうか。

kigyo-houmu-column59_03.png

1 著作者(Ryo Tanaka氏、http://r-y-o-tanaka.com/)より許可を得て転載しています。

そうではないのです。思想又は感情というのは、単なるデータは除かれますよという意味合いなのです。例えば、ワインのアルコール度数や、セパージュ(ぶどう品種)の割合などを表現しても、それは思想又は感情ではないということです。ですから、この写真はデータではありませんから思想又は感情にあたるとしてよいと思います。

むむ。たしかに著名な写真家の撮影した写真であれば著作物だと私も考えたかもしれません。先入観を持ってはいけませんね。では、「創作的に」という点はどうでしょうか。写真を撮っただけですし、目新しいところもなく、創作的とはいえないように感じるのですが。

創作的というのは、目新しい必要もなく、芸術性の高いものである必要も求められていません。その著作者の知的活動の結果であればよいのです。風景写真であっても、切り取る時間や、撮影する角度、シャッター速度や、絞りなど撮影者の知的活動の結果として作成されるわけなので、創作的ということができます。

そうするとやはりこの写真は著作物になるということですね。だとすると、やはり無断で使用するのは問題ですよね。

基本的には著作権者の許可を得る必要があります。ただ、毎回必ず著作権者の許諾を得る必要があると、文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ、かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねません。そこで、著作物を著作権者の許可なく利用できる場合が定められています。代表的な場合として、私的使用のための複製(著作権法30条)、引用(著作権法32条)があります。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
・・・以下略・・・

私的利用というのはどういった場合を指すのでしょうか。少なくとも今回は企業の開発したアプリの説明書として使おうというものですので、私的利用にはあたらないというのは察しがつきますが。

この写真を例に取れば、コピー(複製)して、自宅に飾っておくような場合を指します。いくら気に入ったからといって、たくさんコピーして友人に配布するようになると、それは私的使用の範囲を超えてくることになります。念の為ですが、社内の従業員に配るだけといっても私的用の範囲を超えてくるので注意してくださいね。 

わかりました。次の、引用というのは、なんとなくわかります。よく雑誌などで、カギカッコ付で他の書物の文章が引用されているあれですよね。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

引用というのは、他人の著作物を自分の著作物に取り込むことを言います。引用が許されるのは次のような要件を満たす場合です。

①他人の著作物を引用する必然性があること。
②かぎ括弧をつけるなど、自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
③自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
④出所の明示がなされていること。(著作権法48条)

(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
・・・省略・・・・
2 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
・・・省略・・・・

この要件で検討すると、必然性はないかなぁ、写真が必要であれば当社で撮影すればいいわけですし、写真がなくても説明はできますからねぇ。

そうでしょうね。説明書の中の写真なのでアプリの説明が主で写真が従という主従関係は明確でしょうし、引用部分の区別も十分できるでしょう。出所の明示もすればいいわけですから、結局は、他人の著作物を引用する必性があるのか、引用しなければ説明できないのかという点に帰着するのだと思います。

ちなみに、仮に引用がOKだとしても、この説明書にはもう1点気をつけるべき問題があります。

え?なんでしょうか。

写真を加工するアプリなので、引用した写真を加工した後の写真も乗せることになりますよね。つまり、引用する際に写真を改変して載せることと同じになるので、著作者人格権を侵害するという問題があります。

著作者人格権ですか。

実は、著作権と言っているのは狭義の著作権のことであって、著作者の権利としては、財産権としての著作権と人格的な利益を保護する著作者人格権の2面があるのです。そして、著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権が含まれています。

kigyo-houmu-column59_04.png

元の写真を加工して引用することは、この著作者人格権の内の同一性保持権を侵害することになるので、そのような引用をすることはできないということになります。

わかりました。では社内に戻って自社製のイラストや写真を使用するのか、著作者に許諾を得るのか改めて検討してみることとします。本日はありがとうございました。

頑張って下さいね!

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著者プロフィール

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早乙女 宜宏

永世綜合法律事務所 弁護士

早稲田大学法学部卒業後、日本大学大学院法務研究科卒業。
顧問先等の企業法務に関する相談を多く受ける一方で、日本大学大学院法務研究科にて、刑事系科目(刑法・刑事訴訟法)の教鞭をとる。その他、警察大学校等の公的機関で講義をするなど教育業務も多い。また、スマートフォン向け六法アプリ、And六法の開発も行う。

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