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給与計算ってどうやるの? 入退社時の社会保険

給与計算ってどうやるの? 入退社時の社会保険

労働者を採用したとき、あるいは労働者が退職したときには、雇用保険や健康保険・厚生年金に関する手続きが必要です。

各保険制度の内容を把握し、手続き漏れがないよう、適用要件や提出書類を確認しておきましょう。

今回は、入退社時の社会保険について解説します。


入社時の雇用保険

労働者であれば誰でも雇用保険に加入するわけではありません。加入要件は下記の通り定められています。通常の正社員であれば要件を満たすと思われますが、パートやアルバイトであっても、要件を満たせば雇用保険に加入します(昼間部の学生は除く)。

【雇用保険の加入要件】

① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上の雇用見込みがあること

※ 所定労働時間とは、会社との雇用契約で定めた労働時間です(残業時間は含みません)

加入要件を満たす労働者を採用したときは「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。提出期限は、雇い入れた日の属する月の翌月10日までです。転職者や再就職者など、前の会社で雇用保険に加入していた場合には雇用保険被保険者番号がありますから、雇用保険被保険者証などを提出してもらい番号を確認しましょう。


退職時の雇用保険

労働者が退職したときは「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出します。退職者が「離職票」を希望するときは「雇用保険被保険者離職証明書」も作成して提出します。提出期限は、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内です。「離職票」が不要な場合は添付資料はいりませんが、「離職票」が必要な場合は、労働者名簿、タイムカード、賃金台帳、退職理由が確認できる書類などを添付します。

「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」

をハローワークに提出する

 ↓

ハローワークから「離職票」が発行される

退職者へ「離職票」を交付する

なお、「雇用保険被保険者離職証明書」の「離職理由」に関してはトラブルが起こりやすいです。退職前に退職理由の確認をしっかりと行いましょう。自己都合退職であれば退職届を提出してもらうことが重要です。


雇用保険マルチジョブホルダー制度

令和4年1月から、雇用保険マルチジョブホルダー制度が始まります。諸手続きは労働者本人が行いますが、内容を確認しておきましょう。

A社の所定労働時間が週10時間、B社の所定労働時間が週15時間など、複数の事業所の所定労働時間を合計して週20時間以上となっても、現行法上、雇用保険には加入しません。しかし、令和4年1月以降、下記の要件を満たす方は雇用保険への加入が認められます。これが雇用保険マルチジョブホルダー制度です。

【雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件】

① 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること

② 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間
  未
満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること

③ 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

※ 2つの事業所は異なる事業主であることが必要です

要件を満たす労働者が雇用保険への加入を希望する場合には、労働者本人が住所地を管轄するハローワークに申出を行います。本人からの依頼に基づき、事業主は手続に必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)を行う必要がありますので、求められたら速やかに応じましょう。離職した際の手続きも本人が行いますが、事業主が準備する確認資料等がありますので、不明な点はハローワークに確認しながら対応しましょう。


入社時の健康保険と厚生年金

企業に常時使用される70歳未満の方は健康保険と厚生年金の被保険者となりますから、労働者を採用した際は健康保険と厚生年金の資格取得手続きも行います。70歳以上の方は、原則として健康保険のみに加入します。「常時使用される」とは、企業で働き、労務の対償として給与を受けるという使用関係が常用的であることをいいます。通常の正社員であれば要件を満たすので資格取得手続きが必要です。パートやアルバイトであっても下記の場合には被保険者となりますので、本人の希望の有無に関係なく加入手続きを行わなければなりません。

【パートやアルバイトの加入要件】

1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者(正社員)の4分の3以上である方

また、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満、1か月の所定労働日数が正社員の4分の3未満、またはその両方の場合であっても、次の5つの要件を全て満たす方は健康保険と厚生年金の被保険者になります。

① 週の所定労働時間が20時間以上

② 勤務期間が1年以上見込まれること

③ 月額賃金が8.8万円以上

④ 学生以外

⑤ 従業員501人以上の企業に勤務していること

なお、⑤従業員501人以上の企業に勤務していることに関しては、令和4年10月に規模が101人以上の企業、令和6年10月には規模が51人以上の企業へと変更されます。

【適用範囲の拡大】(一定の要件)

手続きとしては、「健康保険 厚生年金保険 被保険者資格取得届」を採用した日から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出します。マイナンバー(あるいは基礎年金番号)を記入する欄がありますから、新規採用者には速やかに番号を確認できる書類を提出してもらいましょう。


被扶養者の有無に注意

新たに労働者を採用するに際し、特に注意したいのが被扶養者の有無です。まずは、その範囲を確認しておきましょう。

【被扶養者の範囲】

① 被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主とし
  て被保険者に生計を維持されている人
  ※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。

② 被保険者と同一の世帯(同居して家計を共にしている状態)で主として被保険者
  の収入により生計を維持されている次の人

 ・①以外の三親等以内の親族
 ・内縁関係にある配偶者の父母および子 など

次に、年収要件です。被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。認定については、以下の基準により判断します。

新たに採用した労働者に被扶養者がいる場合は「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出します。


退職時の健康保険と厚生年金

労働者が退職すると被保険者資格は失われますから、「健康保険 厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を退職日の翌日から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出します。健康保険証を添付する必要があるので、忘れずに回収しましょう。回収できなかった場合は「健康保険 被保険者証回収不能届」を添付します。

退職後の健康保険については特によく聞かれる項目です。退職すると医療保険の切り替えが必要ですから、退職後の案内を行ってください。

その他、介護保険は基本的に健康保険とセットですから特に手続きは必要ありませんが、保険料控除に気を付けましょう。会社の給与から介護保険料を控除するのは労働者が40歳になったときから65歳になるまでです。65歳になると年金からの天引きになりますので、会社の給与からは控除しません。また、労災保険に関しては、入退社時に各労働者の手続きは不要です。



以上、基本的な内容をご説明してきましたが、実際にはイレギュラーなケースが多々発生します。判断に迷うケースは管轄の役所に確認を取りながら、手続きを進めていただければと思います。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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