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コロナ禍により、進化が求められるBCP

データシリーズ4

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

コロナ禍により、進化が求められるBCP

前回に引き続いて、『月刊総務』のBCPアンケートから、今後どのようにBCPを進化させていけばいいかをデータで見てみることにする。


BCP策定済み企業の9割以上が新型コロナで「自社のBCP対策を見直す必要性がある」

新型コロナウイルス感染症拡大において、自社のBCP対策をどう評価するか尋ねたところ、「見直す必要性を感じた」が91.7%と、ほとんどの企業が自社のBCP対策について改善点を見出していることがわかった。(n=84)

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・見直す必要性を感じた:91.7%
・十分だった:8.3%

そもそもBCPにおいて、パンデミックを織り込んでいる企業は半数程度(前回のコラム)。

パンデミックを追加してBCPを策定しなければならない企業とともに、今回、初めてと言っていいパンデミックの実体験。それにより、未経験時で策定したBCPに大きな欠陥、不足点を見出している、というのが実態であろう。そもそも、パンデミックを想定していれば、多くの企業でテレワークがすんなりと実施されていたはず。多くの企業が慌てふためいたのは、パンデミックによる影響が読み切れなかった事実があったからと言ってよい。このコロナ禍という実体験を貴重な体験として、反省も含めてBCPをどこまで進化させることができるか、大変重要な課題である。


BCP対策ができていない理由1位は「策定するノウハウやスキルがない」

一方で、BCP対策ができていない企業にその理由を尋ねたところ、「策定するノウハウやスキルがない」が62.7%で最多、「策定する時間が取れない」が59.7%、「策定する人材がいない」が46.3%と続いている。(n=67)

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・策定するノウハウやスキルがない:62.7%
・策定する時間が取れない:59.7%
・策定する人材がいない:46.3%
・策定に必要な情報を得る術がわからない:26.9%
・策定する費用が取れない:20.9%
・必要性を感じていない:4.5%
・わからない:3.0%
・その他:6.0%

防災対策やBCPにおける初期対応は消防署から要請される消防計画等で、どこの企業も策定されているはず。

また、この部分は、イメージがつきやすい。その先、初期対応が終わってから、自社の状況を把握しながら、どの事業から復旧させていくかを考える。この点については、煩雑な、そして多くのポイントを想像しながら、かつ事業の協力と理解を得ながら進めなければならず、相当な手間と調整力が必要となる。過去に経験していないと、そもそも何から進めていけばよいか途方に暮れる。したがって、大半がコンサル会社とともに策定することになる。策定するノウハウやスキルがない、というのは無理からぬところである。

六番目の「必要性を感じていない」という回答には、違和感がある。何が起こるかわからないVUCA時代において、企業が何も影響を受けずに、安全に継続することはほとんど考えられない。


BCP未策定企業の8割以上が新型コロナで「BCPを策定しておけばよかった」

新型コロナウイルス感染症拡大を受け、BCPを策定しておけばよかったと感じたか尋ねたところ、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」が82.6%と、BCP未策定企業のほとんどが新型コロナでBCP対策の必要性を感じたことがわかった。(n=132)

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・とてもそう思う:30.3%
・まあまあそう思う:52.3%
・あまりそう思わない:14.4%
・全くそう思わない:3.0%

今回のコロナ禍では、感染対策、特に三密対策でのテレワークができたかどうかがポイントである。

テレワークには、生産性向上だけでなく、多様な人が働ける環境整備の一面があるが、コロナ禍においては、パンデミック対策として効果を上げた。それを含めてBCPを策定できていればよかったのだろうが、どこまでテレワークを織り込んでいたか。BCPを策定しておけば、という嘆きは、むしろ、パンデミック対策としてテレワークを想定しておけばよかった、と言い換えてもよいかもしれない。つまり、リスク管理の要諦は、どこまで想定しきれるか、ということに尽きるのである。


新型コロナでやっておけばよかったBCP対策は1位「テレワーク制度の整備」

新型コロナウイルス感染症拡大において、やっておけばよかったと思うBCP対策について尋ねたところ、「テレワーク制度の整備」が66.4%で最多、「情報の電子化(ペーパーレス化等)」が57.8%、「業務システムのクラウド化」が43.8%と続いた。(n=128)

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・テレワーク制度の整備:66.4%
・情報の電子化(ペーパーレス化等):57.8%
・業務システムのクラウド化:43.8%
・緊急時初動対応の社内周知(社員向けマニュアル作成、研修等):39.1%
・緊急時の指揮命令系統の確立:36.7%
・事業所の安全性確保:36.7%
・従業員の安否確認手段の確立:21.9%
・事業中断時の資金計画:17.2%
・事業所・生産・物流拠点の分散:14.8%
・予備在庫の確保:13.3%
・代替生産先・仕入れ先・業務委託先・販売場所の確保:12.5%
・自社サーバーのバックアップ:10.9%
・業務の復旧訓練:6.3%
・災害保険への加入:3.1%
・やっておけばよかったことはない:1.6%
・その他:3.9%

コロナ禍で痛切に実感したのが、テレワークをするための環境整備である。

テレワークの必要性は、東京オリンピックが決定してから、東京都の掛け声のもと言われ続けてきたが、多くの企業で進まなかった。欧米では、働き方の多様化のもと、特に米国ではテレワークをやり切って、逆に原則出社に戻す動きもあったくらいだ。周回遅れの日本において、今回のコロナ禍は強力な黒船、外圧として日本を大きく変えたのだ。今後は、起こってから対応する前に、先回りして備える対応にシフトしたいものだ。


今後BCP対策が必要だと思うリスクは「パンデミック」が最多

今後、どんなリスクに対してBCP対策が必要だと思うか尋ねたところ、「パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等)」が87.0%で最多、「自然災害(地震、水害等)」が86.6%と続いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、パンデミックに対する危機意識が高まっていると考えられる。(n=216)

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・パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等):87.0%
・自然災害(地震、水害等):86.6%
・情報漏えいやセキュリティのトラブル:53.2%
・オフィスや自社施設の火災:51.9%
・経営者の不測の事態:41.2%
・コンプライアンス違反:40.7%
・自社製品の事故やトラブル:28.7%
・テロ:23.1%
・あてはまるものはない:0.5%
・その他:0.9%

パンデミック対策の追加もさることながら、ぜひ考えて欲しいのが複合災害対応。つまり、パンデミック下における震災対策、水害対策という、「パンデミック×自然災害」の対処方法を考えて欲しいものだ。在宅勤務下でどのように緊急対策本部が機能するのか、屋内消火栓が使える総務部員全員が在宅勤務の場合だれが屋内の消火を指揮するのか。これも想定すればいろいろと課題が出てくるはず。いずれにせよ、起きてから次回のために準備するのではなく、いかに想像力を発揮して想定しきれるか。今回のコロナ禍を受けて、まず学ぶべきことかもしれない。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

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