給与計算ってどうやるの? 年末調整
~年末調整の仕組みとやり方~
年末調整とは
給与の支払者がその年最後に給与の支払をする際、給与の支払を各人別に、それまでその年中に給与を支払う都度源泉徴収をした所得税の合計額と、その年中の給与の支給総額について納付すべき税額(年税額)とを比較して過不足額の精算を行うことを「年末調整」といいます。
年末調整時には、保険料控除申告書と配偶者控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書を記載して控除証明書を添付して、会社へ提出することにより過不足額を算定して、年の最後の給与で調整するか又は翌月の給与で調整するか又は単独で調整分を返却されていると思います。
2,000万円を超える給与の支払を受ける人は、年末調整の対象になりません。
年末調整ができない控除
所得税の計算上、年末調整ができない所得控除又は税額控除は次のものがあり確定申告を行うことになります。
(1)初年度の住宅ローン控除
(2)医療費控除
(3)寄付金控除(ふるさと納税で年間5自治体へのワンストップ申告を選択している場合を除く)又は寄付金の税額控除
(4)雑損控除
また、副業や副収入があるような場合で、年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の場合には、確定申告は不要になります。
注意が必要な控除
年末調整において、保険料控除申告書や配偶者控除申告書に記載できる控除で注意が必要なものを検討いたします。
(1)社会保険料控除
社会保険料控除とは、納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額の全額になります。
社会保険料控除は、自己と生計を一にする配偶者又はその他の親族の負担すべき社会保険料を支払ったものが含まれているため、例えば大学生の子供が国民年金や国民年金基金を負担している場合は社会保険料控除の対象となります。
(2)小規模企業共済等掛金控除
小規模帰京等掛金控除とは、納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合には、その支払った金額について所得控除が受けられるものです。
対象になるものは、
①小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
②確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金
③地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金(この共済制度とは、地方公共団体の条例で精神又は身体に障害がある者を扶養する者を加入者として、その加入者が地方公共団体に掛金を納付し、当該地方公共団体が心身障害者の扶養のための給付金を定期に支給することを定めている制度のうち一定の要件を備えているものをいいます)
年末調整が必要な会社員で小規模企業共済等掛金控除を使用できるものとしては、②が該当すると思われます。具体例としましては、日本版401KとかiDeCoといわれているものです。限度額があるにしても支払った額を所得控除できます。
(3)生命保険料控除
生命保険料控除とは、納税者が生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができるものです。
生命保険料控除は、平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る保険料と平成23年12月31日までに締結した保険契約等に係る保険料では取り扱いが異なります。
【新契約による控除額】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 |
支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 |
一律40,000円 |
【旧契約による控除額】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 |
支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 |
支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 |
一律50,000円 |
各控除額の合計額が生命保険料控除の控除額となります。ただし、最高額が12万円となります。
年末調整において最高額を適用されておらず将来を考えて保険の加入を考えるときは使用していない生命保険料、介護医療保険料又は個人年金保険料に係る保険契約に加入することによって控除額が増えることになります。
(4)地震保険料控除
地震保険料控除は、納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができるものです。
平成18年の税制改正で廃止された損害保険料控除が廃止されましたが、経過措置として以下の要件を満たす一定の長期損害保険契約等に係る損害保険料については、地震保険料控除の対象とすることができます。
①平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間又は共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)
②満期返戻金等のあるもので保険期間又は共済期間が10年以上の契約
③平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
地震保険料控除は、地震保険料は全額と旧長期損害保険料は一定の計算をして15,000円との合計額(最高額50,000)を控除することになります。
(5)配偶者控除・配偶者特別控除
控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、生計を一にしている配偶者(内縁の妻は除かれます)がいる場合には、一定の額の配偶者控除・配偶者特別控除を受けることができます。
配偶者控除は、年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得控除前の収入金額で103万円)であること。配偶者特別控除は、年間の合計所得金額が48万円以上133万円以下(給与租特控除前の収入金額で103万円以上201.6万円以下)であることが要件となります。
配偶者特別控除を最高額受ける場合は年間給与所得控除前の収入金額が150万円までしたら38万円の配偶者特別控除が受けられます。ただし、社会保険の扶養の範囲である13万円を超えるので所得税だけではなく社会保険にも注意をして下さい。
(6)所得調整控除
その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、①本人が特別障害者に該当する者、②の年齢23歳未満の扶養親族を有する者、③特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者のいずれかに該当する給与所得者の総所得金額を計算する場合に、下記の所得金額調整控除額を給与所得から控除します。
給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%=控除額※
※ 1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。
所得調整控除は令和2年に給与所得控除額の改正が行われ、給与所得控除の限度額が少なくなったため、子を扶養する親や障害者への配慮から追加された控除です。
公的年金と同時に給与所得を得ているような場合は所得調整控除一定の調整が入ります。
(7)基礎控除
確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の一つに基礎控除があります。
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
基礎控除に関しても令和2年より税制改正が入り、高額の所得を得ている納税者に関しては控除に制限を加えました。年末調整を行える場合は条件的に48万円の控除は使用できることになります。
上記の説明の他に、
(8)扶養控除
(9)障害者控除
(10)寡婦控除
(11)ひとり親控除
(12)勤労学生控除
の所得控除があります。