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総務のあり方。「戦略総務の本質的思考」

総務から会社を変えるシリーズ

総務のあり方。「戦略総務の本質的思考」

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

貢献のために必要な努力とは

戦略総務の定義「戦略総務とは、総務が自ら考え、自ら会社を変えること。そのために、まず、総務自身が変わること」。今回から数回にわたり、「総務自身が変わること」について紹介していきましょう。総務パーソンが自社に貢献するために必要な努力とは何なのか?

図は『月刊総務』で行った全国総務部門アンケートの結果です。設問は、「自社に貢献するために必要な努力には何がありますか?」というものです。この図ではクロス集計をしています。青の棒グラフが合計の回答数で、オレンジの棒グラフが戦略総務を意識している方の回答です。

どちらの回答でも第一位となっているのが、「本質的な課題を見抜く」というものでした。このことは何を意味しているのでしょうか?例えば、「〇〇が欲しい」といった現場従業員からの依頼があった場合、その通りに購入の手配をして届けるのが、一般的な対応としては正解かと思います。依頼の通りに対応するので、間違うこともなく、現場の期待通りの仕事をしたことになります。

しかし、該当するモノを購入することが、本当に正解なのでしょうか? 確かに、誰が考えてもそれが必要である、という場合もあります。しかし、総務パーソンとしては、もう少し踏み込んで聞いてみたい。

「そもそも、何がしたくて、それが欲しいのですか?」。モノでの依頼を「コト」に変換するのです。

「ドリルを買うのは、穴が欲しいから買うのである」という言葉があります。何かを実現するために、モノを購入することを意味しています。その「コト」を探り当てることが、「本質的な課題を見抜く」ことになるのです。

よくあるケースが、どこかの部門から依頼された「モノ」。それを「コト」に変換したところ、実は全社的な課題が見つかった、というケースです。そして、その「コト」を探り当てたら、現場から依頼された「モノ」ではなく、違う「モノ」の方が解決に適していた。もしかしたら、皆さんも経験があるかもしれません。

総務としては、常にこの「コト」思考、「そもそも何がしたいのか、何を実現したいのか」という思考で、本質的な課題を探り当てたいものです。


優秀な総務パーソンは外を見る

必要な努力として二番目に挙げられた「情報収集のための外部とのコンタクト」。これは今後ますます重要性を増していくと考えられます。既に再三再四記していますVUCA時代。何が起こるか分からない変化の激しい時代においては、変化を待っていては、その波に飲まれてしまいます。かのドラッカーも言っています。「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことだけである」。総務パーソンとしては、変化をいち早く察知して、その波に乗り、総務部門として社内に変化を起こしていく。変化の先頭に立つのです。

VUCA時代で起こりえる変化。今回のコロナ禍によるパンデミックのように、過去に経験していないものが多く生じることでしょう。そうすると過去の経験値が通用せず、対応方法としては、専門家を頼る、少し先を行く企業をベンチマークするくらいしか方法はありません。

過去に経験していませんから、先輩も未経験、解決策のヒントは社内より社外にあるものです。特に専門家の知見を活用することが必須です。すると、日ごろから専門家とのコミュニケーションを取っておく、さらにはその前段階として、専門家とのネットワークを構築しておくことが必要となります。あるいは、先端を行く他社の総務パーソンとコミュニケーションをしておく。

いずれにせよ、外を見る、外に出向くという努力が必要となります。自らの手持ちのカードをいかに増やしておくか。レパートリーを増やしておくか。この努力なくして、変化への対応はできません。変化に対応できなければ、自社に貢献することもできないでしょう。


総務は会社で一番自社を知っている

三番目に多い回答が「社内事情を常に把握」となっています。先ほどは外部とのネットワークの必要性を記しました。一方で、総務部門としては、社内事情に精通しておくことも重要なのです。特に変化への対応の場合は、外部環境で生じる変化が、社内のどの部分に影響を与えるかを見極める必要があるからです。影響がなければその変化はスルーしてしまえばいいので、どの情報をその後も注視していくかは、この社内に対する影響度合いがフィルターとなるのです。

ですから、環境適応を任される総務部門としては、社外情報の収集をしつつ、その情報がどの部分に影響があるかを見極め、そしてさらに専門家の意見を参考にしながら、今後の対応策を考えていくことになります。ですので、自社の事情をしっかりと把握しておかないと、無駄な努力をしてしまうケースや、逆に、対応せずにその後甚大なリスクを背負うことにもなりかねないのです。つまり、総務部門はある意味で、情報取扱業という側面があるのです。

グラフの四番目の項目、「他部門の問題の把握」。こちらも同様に社内の把握です。この問題を常に頭に入れながら社外の情報に接しておけば、ソリューションや解決方法に辿りつけたり、さらに大きなリスクに気づいたりすることもあるでしょう。とにもかくにも、社内のことを頭に置きながら、外部との接点を持つことが非常に重要なことであることが分かると思います。

五番目の項目は、「業界全体、社会全体を把握」することとなっています。まさにVUCA時代の変化の予兆を見つける努力です。先ほどのドラッカーの言葉も、この努力があって初めて実現できるのではないでしょうか。新聞や業界紙、業界団体の会合や広報誌などさまざまなメディアに触れながら、アンテナに引っかかる情報はないかと注意しておく。ネットで検索するだけでは、自分が知らない言葉、動きは検索できません。便利だとしてもネットだけに頼ることはせずに、他のメディアにも目を向けることが重要です。

今回は、自社に貢献するために必要な努力を紹介しました。目の前の仕事だけを見ておく時代ではありません。幅広い情報に触れながら、その本質はどこにあるのか、現場からの依頼事項のみならず、常に本質を見極める思考で物事を見ていくことが、何より重要なことなのです。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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