遅刻・早退・欠勤時の給与計算ってどうやる? 控除額を正確に計算する方法を詳しく解説!
給与計算で遅刻や早退、欠勤があった場合、どのように控除を行うのか悩んだことはありませんか?
また、途中入社や退職、休職復職などのケースにも対応しなければならず、計算方法に迷うことも多いでしょう。
法的な基準や、企業ごとの計算ルールの違いも気になるポイントです。本記事では、月給制における遅刻・早退の控除計算方法について、具体的な例を用いて詳しく解説します。
さまざまな計算パターンを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
給与の原則と就業規則等による定め
給与の原則として「ノーワークノーペイ」の考え方があります。働いた分だけ給与が支払われる、つまり遅刻や早退、欠勤等があって働かなかった時間がある場合には、その分の賃金を控除するというものです。
しかし、労働基準法ではこの控除の計算方法や日割り計算について特に定めはありません。それぞれの会社において就業規則等において定めて適用していくことになります。会社ごとに定めるのですから、働かなかった時間があってもその分の賃金を控除しないと定めることも可能です。
控除する場合には、当該控除の計算方法も定めます。使わなければならない計算式があるわけではないのです。ただし、いずれの控除計算であっても、給与の全額払いの原則から端数処理は切り捨てとなります。
なお、時給など働いた時間分の給与を支払う方法の場合には控除は発生しませんから、控除は月給や年俸制の場合の遅刻・早退、欠勤、日給の場合の遅刻・早退において発生する可能性があるものとなります。
次に月給制における具体的な欠勤、遅刻・早退の控除計算式例についてみていきましょう。
【パターン別】給与計算例
(1)欠勤の場合
欠勤控除をする計算式の例を挙げます。
欠勤、遅刻・総体早退の控除計算式例
- ① 月額給与額 ÷ 月平均所定労働日数 × 欠勤日数
- ② 月額給与額 ÷ 該当月の所定労働日数 × 欠勤日数
- ③ 月額給与額 ÷ 暦日数 × 欠勤日数
- ④ 月額給与額 ÷ 月平均所定労働時間 × 欠勤日数 × 1日の所定労働時間数
= 欠勤控除額
①から③は「日数」を用いて計算しているのに対し、④は「時間」単価から1日の労働時間の額を算出しています。①から③は「日数」を用いますが、その日数をどうするかが違っています。
①は年間の所定労働日数を12で割って求めた日数を基準とするものです。
②は一賃金計算期間の所定労働日数から求める方法です。この方法では、所定労働日数の多い少ないで1日当たりの金額が違ってくるものとなります。
③は所定労働日数ではなくて暦日数ですので、大の月小の月等で変わることとなります。
上記算式に「月額給与額」とありますが、これが何を指すのかは、それぞれの会社の定め次第になります。例えば、諸手当を含めてすべての月額給与額とする、あるいは基本給だけが該当し、他の諸手当は含めないとする、または特定の手当のみ対象外とし基本給と対象の手当で計算するなどです。
対象外とする手当に挙げられるものとして、家族手当など職務とは関係ないものとする例もあります。
(2)遅刻・早退の場合
遅刻・早退の場合にも就業規則の定めに従って、月額賃金からその時間分の額を控除することができます。
しかし働かなかった時間以上分の賃金控除をしてはいけません。例えば、遅刻は3分だったのに15分として控除するなどです。労基法にいう全額払いの原則に違反することとなってしまいますので、このようなことがないように1分単位で計算するようにしましょう。
具体的には、1時間あたりの基礎賃金を算出し、その金額に遅刻・早退による働かなかった時間数をかけて控除金額を求めます。この算式は(1)の欠勤控除の計算の④と同じ単価が用いられるものになります。
遅刻・早退による控除額
=月額給与額 ÷ 月平均所定労働時間数 × 遅刻・早退の時間
月平均所定労働時間数は、次の算式により求められます。
月平均所定労働時間数
=(年間暦日数 – 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12
ここにいう「月額給与額」も欠勤控除同様、どの手当を対象とするのかはそれぞれの会社において就業規則等で定めることが可能です。
(3)途中入社・退社等の場合
一賃金計算期間の途中で入社したり退職したり、休職に入ったり復職したりということがあります。その時にも就業規則等でどのようにするかを定めます。
日割計算をすることが多いかと思いますが、途中であっても日割せず1か月分の給与の全額を支給すると定めることも可能です。具体的計算方法の例としては、以下のようなものが考えられます。
日割支給額の具体的計算例
- ①月額給与額 ÷ 月平均所定労働日数 × 実労働日数
- ②月額給与額 ÷ 該当月の所定労働日数 × 実労働日数
- ③月額給与額 ÷ 暦日数 × 実労働日数
= 日割支給額
ここでも欠勤控除の時にお伝えしたように、月額給与の中に入れる手当をどうするのかなども検討の余地があります。すべての手当とするのか、基本給のみ日割とするのかなどです。
まとめ
欠勤控除や日割り計算の場合に、月平均所定労働日数、該当月の所定労働日数、暦日数などが出てきます。
月平均の所定労働日数を用いる場合には、どの月においても同様ですから、計算をする人にとっては間違うリスクが少なくなります。当該月の所定労働日数や暦日数を採用する場合には、月によって変える必要があるのはもちろんですが、月によって1日の単価が変わることになります。
どの月に欠勤したか、入社・退職するのかで単価が変わることを不公平と考える向きもあるかもしれません。ただし、月平均であっても月の所定労働日数が少ない場合には、従業員に不利になりますので、どのように考えるか次第なのではないかと思われます。
いずれにしても、トラブルにならないように就業規則等において定めて運用していきましょう。