就業規則の作り方 無期転換への対応ポイント
有期雇用労働者の申込みにより、雇用期間の定めがある契約から定めがない契約へと転換される、無期転換制度が始まっています。
有期雇用契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的としたもので、すでに多くの企業で無期転換制度が適用される有期雇用労働者が働いていると思われます。
今回は、無期転換への対応ポイントについて説明します。
無期転換ルールとは
無期転換ルールとは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた時は、労働者が企業に申込むことで、労働契約期間が無期になるという制度です。有期雇用労働者が無期転換の申込みをすると、無期転換を認めるかどうかを検討するまでもなく企業が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。
【無期転換の例】
無期転換後の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。定年など、有期雇用される労働者には通常定められていない労働条件を適用する必要がある場合には、就業規則等に定めを置き、あらかじめ明確にしておきましょう。
【就業規則の規定例】
第〇条(無期労働契約への転換)
- 期間の定めのある労働契約で雇用する労働者のうち、通算契約期間が5年を超える者は、別に定める様式で申込むことにより、現に締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、期間の定めのない労働契約での雇用に転換することができる。
- 前項の通算契約期間は、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約の契約期間を通算した期間とする。ただし、契約期間満了に伴う退職等により、労働契約が締結されていない期間が連続して6か月以上ある労働者については、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。
- この規則に定める労働条件は、第1項の規定により期間の定めのない労働契約での雇用に転換した後も引き続き適用する。ただし、無期労働契約へ転換した労働者の定年は満〇歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
- 無期労働契約への転換を申込む者は、現に締結している有期労働契約の契約期間満了日の1か月前までに無期労働契約転換申込書を会社へ提出しなければならない。
- 前項の申込みがあった場合、会社は無期労働契約転換申込受理通知書を速やかに申込み者に通知する。
2は「クーリング期間」についての定めです。有期労働契約とその次の有期労働契約の間が6か月以上ある時は、その空白期間より前の契約期間は通算されません。
書面でのやり取りを
有期労働契約を締結する際、無期転換ルールについては、労働条件通知書等で労働者に周知することが望まれます。
【労働条件通知書の例】
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その他 |
有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、当該契約の契約期間満了日の1か月前までに申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。 |
無期転換の申込みは口頭でも可能ですが、トラブル防止のため書面の提出を求めます。また、申込みがあった労働者に対しては速やかに受理通知書を渡します。
【書面例】
無期労働契約転換申込書 株式会社○○ 代表取締役 ○○○○殿
申出日:令和 年 月 日 部門: 部 課 氏名: ㊞
私は、現在の有期労働契約の契約期間の末日までに通算契約期間が5年を超えるため、労働契約法第18条の規定に基づき、期間の定めのない労働契約への転換を申込みます。 |
無期労働契約転換申込受理通知書 ○○○○殿 令和 年 月 日
株式会社○○○○ あなたから令和 年 月 日に提出された無期労働契約転換申込書について、受理しましたので、その旨通知します。 |
無期転換申込権が発生しない特例
定年後の再雇用や嘱託など、定年後に引き続き雇用している有期契約労働者についても無期転換ルールは適用されます。ただし、適切な雇用管理に関する計画を作成し都道府県労働局長の認定を受けた場合には、特例として、その事業主に定年後引き続き雇用される期間は、無期転換申込権が発生しないという制度が設けられています。なお、特例を使う場合には、有期労働契約の締結や更新の際に、無期転換ルールに関する特例が適用されていることを労働条件通知書等で対象労働者に明示する必要があります。
【労働条件通知書の例】
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・・・ |
その他 |
有期雇用特別措置法による特例対象者に該当するので、定年後引き続いて雇用されている期間は無期転換申込権が発生しません。 |
その他、「5年を超える一定期間内に完了することが予定されている業務」に従事する高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者についても、無期転換申込権が発生しない特例があります。
無期転換後のキャリアパス
無期転換後の労働条件は、契約期間を除き、原則として直前の有期労働契約と同様になります。しかしながら、無期転換した労働者は、5年を超えて継続勤務しているわけですから、企業にとっても有益な存在であるはずです。転勤をしたくない、フルタイムでは働けないなど、何らかの事情があってパートやアルバイト、契約社員という働き方を選択していることもありますから、無期転換後に目指すことができる短時間正社員や勤務地限定正社員などの制度を考えてみてはいかがでしょうか。
【限定正社員】
職務の限定 |
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勤務時間の限定 |
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勤務地の限定 |
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職務や勤務時間、勤務場所に限定がないという従来の正社員像に捉われない多様な働き方が注目されています。労働者がその能力を発揮できる様々な働き方のパターンを設けることが企業の発展にもつながると思います。
【就業規則の規定例】
第〇条(限定正社員への転換)
- 無期転換社員として〇年以上継続勤務し、その後限定正社員への転換を希望する者について所属長の推薦がある場合には、会社は転換試験を行い、合格した者については限定正社員に転換する。
- 限定正社員とは、業務上基幹的役割を担い、職種・職務、勤務時間や勤務場所などに関して一定の限定がある社員をいう。
- 第1項に定める転換試験は、原則として毎年〇月と〇月に行う。
もちろん、限定正社員への転換は無期転換後でなくても構いません。
【就業規則の規定例】
第〇条(限定正社員への転換)
複数回の雇用契約により有期労働契約の通算期間が3年以上となり、限定正社員への転換を希望する者について所属長の推薦がある場合には、会社は転換試験を行い、合格した者については限定正社員に転換する。
【労働条件通知書の例】
雇用形態 |
限定正社員 |
契約期間 |
期間の定めなし |
従事すべき業務の内容 |
事務職に限定する |
勤務地 |
本社内に限定する |
勤務時間 |
午前9時から午後4時まで(休憩時間:12時から13時まで) ※業務の都合により始業・終業時刻を変更する場合があるが、勤務時間は6時間とする。 |
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無期転換への対応は、自社における雇用体系と処遇を考え直す良い機会となります。納得性の高い制度の構築により、社員がより働き甲斐をもてる職場づくりを進めていただければと思います。